勇者にだって勝てない相手はいる
(???視点)
「…全く、話しが違うではないか。」
我が軍の精鋭達の悲鳴や断末魔の声が、そこかしこから響く。 人間共なんぞ我がわざわざ出ていかなくとも、余裕で殲滅できると思っていたのに…。
このままでは此方が一人残らず殲滅させられる…。
どうしてこうなった?
昨日までは、勇者を一匹仕留めて、既に戦闘に勝利したかのような空気だったのに。
こうなったら我が時間を稼ぎ、一人でも多くの同胞達を逃がすしかない。
部下にそのことを伝えると、逆に我が逃げるように言われてしまう。
…どんどん近づいてくる
そう考えていると我の目の前に
―――――――――――
(第三者視点)
元勇者悠人はどうしてこんなことになってしまったか考えていた。
胡座をかいて座る悠人の膝の間には茶髪の幼女が座り
「はるちゃん えほんよんでっ!」
「あ、うん。」
と手にもった絵本を差し出してくる。
「ふえーん…とーか もそこにすわりたいよー…」
「ちょっと待ってね…。」
と、悠人の横にいた黒髪の幼女が悠人の肩を揺らしている。
「だめだぞ とーか じゅんばんだからな!」
黒髪幼女を宥めるポニテ幼女、三人の幼女に囲まれた悠人は、こうなってしまった経緯を思い出していた。
今日から世間は三連休、悠人と茜の両親はそれぞれ夫婦で旅行に出掛けるので、茜が悠人の家に泊まりで面倒を見に来てくれる予定だった。
茜が泊まりに来てくれることを楽しみにしていた悠人だが、あることを悩んでいた。
実は数日前に
悠人は居間のソファに座りながら薬の入った小瓶を眺める。
茜の記憶には戻ってほしいが、薬が怪しすぎるし、ティセニエラも「ご使用は自己責任でお願いします。」なんて無責任なことを言うので使うつもりは無かったのだ。
その時、悠人のスマホに茜からメッセージが届く。『今日はお昼前に桜花ちゃんと更科さんと一緒にお邪魔するね。』
(久々に茜と二人で居られると思ったのに…)
悠人がそんなことを考えていると、続けてメッセージが届く。
『ハル君、最近成績落ちたよね?だから今日は夕方まで勉強会。』
(う…そんなこと言われたら断れない。それに桜花も更科も夕方には帰るだろ…)
後一時間もしないうちに、この考えが甘かったことを悠人は思い知ることになる。
ピンポーン
チャイムが鳴ったので、インターホン越しに鍵が開いてることを告げると、茜達が入ってくる。
「えと…お、お邪魔します。」
「お邪魔するわね。」
「いらっしゃ………二人共随分荷物多くないか?」
桜花も更科も何故か、大きい手提げを両手に持っていた。どれだけ勉強するつもりなんだ…? と、何となく茜達の意図を察してしまった悠人は現実逃避をはじめた。
「あ、今日は桜花ちゃんと更科さんにも泊まってもらおうと思うんだけど…もし駄目なら二人には、わたしの家に…」
「いや、大丈夫…。」
「飲み物を入れてくる、麦茶でいいか?」
「あ、ならハル君 わたしも…」
「大丈夫、茜は二人に風呂やトイレの場所を教えて、居間で待ってて。」
「うん、わかった。」
「相変わらずの夫婦みたいね、コイツら。」
「ああ、ずっと見ていられるな。」
「えぇ……。」
悠人は忘れていた、例の怪しい薬が居間に置きっぱなしだったことを。 そして悠人は知らない、今日が勉強どころではない程大変な日になることに…。
――――一体
――――何がどうなって
――――こんなことに…?
―――――――――――
らぶこめするとかうそついてごめんなさい
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます