姫とメイドのお茶会②(エルフレア視点)


(エルフレア視点)


「ティセ、貴女はそれでよいのですか?。」


 主人ティセの言葉を遮って答える、本来なら私のようなメイドが王族の言葉を遮ることは重罪…なんだけど姫様ティセは、周りに人が居なければ咎めることすらない。


 ま、私は本当はメイドではないんだけど。


「ハルトを諦めて帝国の第三王子クソバカとの婚約を受け入れるつもりですか?」


「それは……。」


「あんな魔王討伐の最終戦に参戦するのを拒否して、後方に下がった臆病者チキン野郎を『勇者』として祭り上げる国に嫁ぎたいのですか?」


 しかも姫様ティセとの婚約話を超上から目線で申し込んでくるし…。


「そうですね、やっぱりあの第三王子モヤシは無いです、あり得ないです。」


「ハルトがその気になってくれないなら、茜に会えた時にお願いすればいいのです『ハルトを貸して』と…。」


 ついでに私も借ります。あくまでついでに、ええ。


「断られる未来しか見えませんが?!」


「じゃあ…他にどう言えば?」


「ごめんなさい、エルには難しい話しでしたね…。」


「なあ?! じゃあ姫様ティセには何か 上手い言い方があるんですか?」


「う…そ、それは勿論…。」


「では聞かせて下さい。」


「………。」


「さぁ早く、さぁ!」


「『ハルトを貸して』…。」


「一字一句同じゃない!」




 それから暫く姫様ティセと下らない言い争いをして落ち着いたので、冷めてしまった紅茶をいれなおして会話を再開する。


「それで何の話しでしたっけ?」


「旅をしてる時のハルトの女性遍歴について、ですよ。」


「…嘘ですよね。」


「いやー…流石に騙されませんか。」


「さっきまでの真面目な空気は一体どこに。」


「でも旅してる時のハルトはモテてましたからね、それはもう宿に帰れば毎日毎日…」


「うぇ?! そんな…ハルトに限って。で、でも英雄色を好むって……でもあれだけ茜一筋だったのに…。しかもそれならなんでわたくしを受け入れてくれないのでしょうか…?」


「毎日毎日ちゃんと男女で部屋割りをして、女性はハルトの部屋に一人では入れてももらえませんでした。」


「………。」


 おっと、流石にからかい過ぎましたか。

 姫様ティセに睨まれてしまった。


「ハルトはモテてはいたんですが…無駄に貞操固くて、どうにもなりませんでした。」


「やっぱりエルもハルトを狙ってたんじゃないですかー?!」


 おっと口を滑らせてしまいました。


「私はハルトの体にしか興味ありません。」


「最低の発言ですよ?!」


「強い子供がほしいだけですよ。」


 勇者ハルトと私の子供ならきっと…。


「…因みに他にハルトを狙ってたのって…。」


「一番露骨だったのがレーネとセラですかね。」


「聖女と剣聖の…?」


「そうです、あの二人の勢いといったら。」


「二人共どこかの小さな村出身でしたよね?」


「でしたっけ?」


「ええ、でも確かレーネもセラも故郷の村に将来を……あれ、え?」


 姫様ティセが困惑してるけど一体どうしたんだろ?


 そうやって姫様ティセを眺めながら紅茶を飲んでいると、遠くで待機していたメイドがこちらに近寄ってくる。その雰囲気からただごとではないことが伺える。


「どうしました、何か問題でも?」




 ――――――――――


(エルフレア仕事モード)



 メイドの話しを聞いた私と姫様は急いで城の中の修練場に向かう、何の予告もなくやってくるなんて一体何を考えてるのでしょうか。


 修練場が近づいてくると、通路に居た沢山の野次馬に対して姫様が口を開きました。


「何をしているのですか、各々自分の持ち場に戻りなさい。」


 それを聞いた野次馬達が慌てて散っていきます。 そして修練場の中を覗くと、そこにはハルトの連れてきたゴロツキ達が血まみれで倒れていた…一応息はあるみたいですね。


 姫様が倒れているゴロツキ達の側に居た男に向かって話しかける。


「これは一体どういうことか説明して頂けますかオルファン様」


「おや…これはこれはティセニエラ姫、いや何、余りにもこの国の兵士のレベルが低かったので少し教育をして差し上げたのです。ああ、お礼は結構ですよ、ええ。」


 姫様の質問に対し糞みたいな答えを返してきた黒い鎧の男、オルファン・シュレー。


 聖剣に認められしエルドニア帝国の勇者の一人…とかいってますがコイツこそ最終決戦で体調不良を理由に参戦すらしなかった臆病者チキン野郎


「その者達はまだ兵士になって日も浅い新兵です、オルファン様は新人イビりが御趣味なのですか?」


 姫様の言葉を聞きチキンが舌打ちをして、険しい表情を見せる。


「…ふん、まあいいでしょう。 今日はハリエル王子の護衛で来ただけですし、どうです? ご自分の婚約者に会いにいかれては。今はフィーリア国王とお話しをなされてるはずですよ。」


「結構です、婚約については後日正式にお断りするつもりですし。 それで今日は一体何のご用でしょうか? 何の報告も受けていませんが。」


「さてね、先程言った通り私はハリエル王子の付き添いでしかないので。」


 この臆病者チキン野郎ぶっ飛ばしてもよろしいでしょうか? おっと…


「おおー!そこにいるのは我が愛しのティセニエラ姫ではありませんか!」


 姫様とチキンが無言になったタイミングで、ナヨナヨした声が聞こえてきました。


 声のした方に目を向けるとモヤシというか、針金というか…サナダムシのようなヒョロっとした男が、向こうからノロノロとしたスピードで走ってきました。


 その姿を見た姫様が一瞬顔反らして舌打ちをしました、正しい反応ですね流石です。


「ええ、ご機嫌ようモヤ…ハリエル王子。」


「モヤ……?」


「なんでもありません、それで今日は一体どのようなご用件で?」


「そんな水くさい…我々は近いうちに夫婦になるのですから、夫が妻の 親に挨拶にくる…ええ、普通のことですとも。」


「まだ婚約はお受けしておりませんし、そのつもりもありません。」


「ふふふ、ティセニエラ姫…そんなに照れなくても良いのですよ、ちゃんとわかっておりますからな!」


 駄目だコイツ早く処分なんとかしないと…ここまでストレートに拒否されても、全く堪えないのってある意味では凄いですが。


「さて…名残惜しいですがこのあたりで失礼します、ではティセニエラ姫、次は二人きりでお話しでもしましょう。」


 姫様は張り付いた笑顔のままモヤシの言葉を聞き流しました。

 そしてモヤシ達が帰ったのを窓から確認してから姫様に、このことはハルトには言わないようにと釘をさされました。


 ええ…まだ言いませんとも、『まだ』…ね。



 ――――――――――


 悠人が最初に連れてきた不良達は今は5人とも丸坊主にされて、意外と真面目に訓練を受けています。


次から少しだけラブコメさせて下さい。







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