姫とメイドのお茶会①(ティセニエラ視点)


「旅をしていた時の 話しですか?」


 お城の中庭でのティータイム中に、向かいの席で堂々とお菓子を摘まむ専属護衛兼偽メイドのエルフレアに、気になっていたことを尋ねました。

 最近はと忙しくてこんな時間は久しぶりです。


「はい、今日はハルトやエルが旅をしていた時の様子を教えて下さい。」


「と、言っても……うーん……。」


 エルフレア…エルが顎に手を当てて考え込みます、今は他の目が無いので口調は普段の堅苦しいものではなく、少し砕けた口調です。


「旅を始めてまだ間もない時は、ハルトはずっと茜と二人で居ましたね。あの頃は他のパーティメンバーも、余りハルトに良い感情を持ってなかった気がします。」


「え、そうだったんですか?」


 意外です…ハルトの居たパーティの人達はこの間の夕食にも何人かいましたけど、皆ハルトと親しそうに見えましたが…。


 何人かハルトへ気になる視線を向けてる方もいましたが。


「ああ、流石に皆がどのタイミングでハルトに対して信頼を寄せるようになったかは、わかりませんよ。」


 エルがわたくしが不思議そうにしてるのを見て答える、まあ、皆の心の中なんてわからないですよね。


「タイミングまではわかりませんが…皆がハルトの強さに惹かれたのは確かですかね、私もそうでしたし。」


「うぇっ?! …エ、エルもハルトが好きだったんですか?」


 は、初耳です…まさか羅刹姫の異名をとるエルフレアまで…。


「んー…他の奴等はどうだか知りませんが、私がハルト自身が好きかと言われると…なんとも。」


「あれ、 今惹かれたって…?」


「ああ、『強さ』には惹かれましたね、でもアイツ性格はアレですし。」


 …ハルトの性格がどうしたのでしょう?

 不思議そうなわたくしの顔を見たエルがため息をつく。


「ハルトと茜と桜花が仲良くなる頃には、他のパーティメンバーともよく話すようになってました。 戦いでは殆ど勇者頼りの作戦ばかりで、多少不満を持つものも居ましたね。 不満に思う理由は途中で変わりましたが。」


 エルが紅茶を一口飲んで話しを続けます。


「勇者パーティには名誉や功名心、手柄を求めて参加した者も当然いました。 しかしいざ旅にでてみれば、求められるのは勇者達のサポートばかり…最初はそんな不満でした。」


 なるほど…勇者パーティの魔王討伐の旅は、参加できるだけでも大変な名誉ではありますが、更なる手柄を求めるのは別におかしなことではありませんしね。


「……茜が居なくなってからのハルトは、人々の理想の勇者様に。 敵の大軍に少数で突っ込み敵指揮官を討ち取り、友軍の撤退時間を稼ぐために殿を務める、討伐した魔王軍の幹部の半分位はハルトが一対一で仕留めました。

 強く、勇敢で、無欲な…そんな都合の良い、実に理想の勇者に…。 我々ではそんなアイツの力にはなれない、アイツは私達を頼ってはくれない…私達は仲間のはずなのに……ああ、私もそこはとても不満でしたよ。」


 世間で知られる『勇者ハルト』…沢山の武勇が吟遊詩人により伝えられます、ですがそこには彼の人となりや彼自身の想いが語られることはありません。


 だって皆に興味はないのだから。


「ひたすらに続く戦いの日々、そんな時アイツを同じ勇者として、友人として献身的に支えてきた桜花…彼女が居なければハルトは何処かで壊れていたかもしれません。」


 やはり桜花は…それに今は茜も…。


「…エル。」


「はい。」


わたくしは…」




 ――――――――――


 ちょっと長いので分割します…すいませんすいません、金髪ピアスの現在は次の話しで…。


あ、次は軽い話題です(多分)

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