日常回は突然に
知らない人から手紙で屋上に呼び出されたうえに、何もしてないのに怯えられて逃げられた元勇者です、こんにちわ。…こんにちわ。
こう…自分の行いから考えると、怖がられるのは分かるのだけど…でもあの人が何か知ってるとは思えないし。
こうしてその場で5分程考えこんでいると。
「ハル君、一緒に帰ろ。」
茜達に声をかけられた、どうしてここへ?
三人共なんだかやり遂げた顔をしてるし…ま、いいか。
「ああ、わかった。」
最近、俺と茜が居て桜花が居ることが当たり前に思えてきた。 …このまま更科が居ることも当たり前に思う日が来るのだろうか…?。
「ねぇ、ハル君。 わたしは今 とても怒っています…理由はわかりますね?」
「え…ゴメンわからない…。」
「地堂ってマジで唐突よね…。」
四人で一緒に帰ってると、茜に怒ってる宣言をされる。 理由に心あたりはないが、俺にはその行動をできる限り尊重し、歩み寄っていかなければならない。
ほら、『寂しかった』とか『小さなサインに気づいてもらえなかった』とか『○○さんからのアドバイスで、浮気してる振りをして嫉妬させる』とか『彼氏とのことを相談して』とか…寝取られ物の定番だろ?
まあ、前回の反省を踏まえ、何かあったら一番最初にお互いに話すようにはしてる。
だから今の茜の悩みもちゃんと相談してほしい、あんま言わないようなら抱き締めて何時間でも問い詰める。
しかし茜は何故怒ってるのだろうか……あれか?最近 茜にオススメした幼馴染み物のネット小説が、始めの方はイチャラブ展開だったのに唐突に出てきたチャラ男とヒロインが急接近しはじめたことか?
まるで 人気を出すために、突然バトル物に舵を切る少年漫画の如く。
いやしかし、それとこれとは全然違う話しなのはわかってる…そもそも一つの作品に互いに…――
うーん…考えが纏まらない、こんなときは。
「ハル君…わかっ…あ…」
茜の肩を抱き寄せ腕を絡ませる
これが天川流108の奥義が一つ『茜チャージ』である!
さっきまで自称お怒り状態だった茜が、嬉しそうに体を密着させてくる。 そんな茜を全身で堪能してると二つの視線が突き刺さる。
――――――――
(更科視点)
「信じられないわ…地堂の唐突な振りを受けて暫く考え込んでたと思ったら、今度はいきなりイチャつき始めたわよ…。」
この二人の距離感って独特よね、ちょっと羨ましいわ。
「何、こんなのは日常茶飯事だ、この二人は隙あらばイチャイチャしてるからな。…私も二人と出会ったばかりの頃は爆弾が爆発すればいいと思っていた。」
え?爆弾?突然何かしら…名前の横に爆弾でも置くの?
「……? よくわからないけど、アンタも苦労してたのね…。」
「まあな…(遠い目)」
人蔵が住宅街なのに地平線の向こうを見るような目をする。
「人蔵って二人と出会ってどれくらいたつの?」
「え、 あー…それはだな…。」
あら、言いたくないことだったのかしら?
「何よ歯切れが悪いわね。 ま、いいわ、言いづらいことだってあるんだろうし。」
「ああ、すまないな…。」
「なんでこっちの不躾な質問に答えられないぐらいで謝んのよ。 別にいいのよ、答えづらい質問をしたアタシが悪いんだから。」
「いや、そんなことは…「あるのよ」」
「そこら辺の線引きは大切よ。 どこまでなら踏み込んでも大丈夫だろうか、この人はどこまで近寄ってくるだろうか、お互いが手探りで距離を探って…それが終わってから初めてその人との関係が始まるの。」
気づいたら
「…更科。」
「なにかしら?」
「お前は茜や悠人ともう普通に会話している。まだ出会って間もないのに…。私があの二人とちゃんと会話ができるようになるのに1年以上かかったのに…だ。」
人蔵が小さくため息をついた。
「正直、私は更科のことは好きではない、理由は……今 言ったことも理由の一つだろうか、嫉妬…なのだろうな。」
三人がアタシのことが好きじゃないのなんて知ってる、心当たりは充分にあるし…でも。
「そ、…ありがと、話してくれて。」
アタシは少しだけ人蔵の本音が聞けて嬉しかった。
――――――――――――
『帝国の勇者』編は少しお待ち下さい。
次回はティセニエラとエルフレアのティータイム中の会話。エルフレアから見る勇者時代の悠人。
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