乙女達の怒り④ (茜・悠人視点)
(茜視点)
あれがハル君にラブレターを出した里見さん…ハル君のことが本気で好きでラブレターを出したんなら別にいい、その想いをどうするかはハル君次第だから。
嘘
本当は全然よくないけど、ハル君のこと信じてるから…。
でもこの人は駄目、一目でわかる、この人はハル君のことを馬鹿にして見下してる。
わたしの席に集まってきてた人達と同じ、わたしとハル君を引き離そうとしてる。
そんなこと絶対に…
「え…えと、地堂さん? …私に何か用?」
わたしを見た里見さんは一瞬動揺したが、直ぐに余裕そうな態度になった。
「ハル君にラブレターを出したのは貴女ですよね?」
「ハル君……ああ、天川君? そうですね、確かに私が彼の下駄箱にラブレターを入れました、それが何か?」
「何故ですか?」
「…え?」
わたしの質問に対して呆けた顔をする里見さん。察しが悪いなぁ。
「何故、好きでもない人にラブレターを出したんですか?」
「そ、そんなこと…私は天川君のことを…。」
「嘘。」
そんな目で嘘でもハル君のことを『好き』だなんて言わせない。
「な…何を根拠にそんな。」
「目を見ればわかりますよ。貴女はハル君のことが好きなんかじゃ…ううん、貴女はハル君のことを見下して馬鹿にしてる…そんな貴女がハル君にラブレターを出す理由なんてありませんよね?」
「…何が言いたいのよ?」
本当に察しが悪い……あ、違うか これはわざとかな?
折角自分から言うように気を使ってあげてるのに。
「嘘告…っていうのをやってるんですよね?」
「私はそんなことしたこと…」
「しらばっくれてもムダよ?」
里見さんが否定しようとするのを、物陰から出てきた更科さんが止める。
「往生際が悪いわよ、さっさと地堂に謝ることをオススメするわ、いやマジで。」
「更科…! あんたには関係ないでしょ?!」
「そうでもないのよねぇ…。」
更科さんが小さい声で答えた。
「そもそも一体何なのよ! 私は天川を呼び出したのに何で地堂と更科がここにくんのよ!? 何? わたしの彼氏に手を出さないでー、とでも言う訳?」
突然 里見さんの口調が荒くなる、こっちが素なのかな?
「いや、ふつーそうでしょ…。 恋人がちゃんといる奴をターゲットにしようとか、アンタだって彼氏にちょっかいかけられたら黙ってないでしょ?」
「あーもう、はいはい、止めればいいんでしょ、止めれば! 何よ、こんなのただの遊びじゃない!大体あんな暗くて何考えてんのかよくわかんない奴の何処が良いのよ…て、何で更科が私の彼氏のことを…?」
…今、何て言ったの?
「アンタの彼氏ってココの近くにある大学の学生でしょう? 柴村 翔真(しばむら しょうま)って人よ…っひ?! 地堂待って、ちょっと待って! 少しだけ、もうちょっとだから! 」
「な、何で名前まで…それ知ってるのって…。」
「あー、アンタ随分恨まれてるみたいじゃない? アンタは仲が良いつもりだったのかもしれないけど、相手の方は…ねぇ?」
里見さんの顔色が悪くなる、信じてた人に裏切られたっぽい。 それにしても更科さんは凄い…、たった数時間でここまで調べれるなんて…。
今回、更科さんは里見さんと一緒に嘘告をしてる人達の名前、里見さんの彼氏の情報を手にいれて今…
「それに…ほら、アンタの愛しの彼氏に電話が繋がってるわ、何か話してあげたら?…あら?」
「な?! う、嘘よそんなこと…だ、大体 電話番号なんてどうやって…?!」
「こっちは切られたから、そっちに着信きてたりしない?」
更科さんが 通話終了、と表示されたスマホの画面を里見さんに見せる、青い顔をした里見さんが恐る恐る自分のスマホを確認すると、更に顔色が悪くなり「な…んで」と呟いた。
「早くでてあげたら? あまり彼氏を待たせるものじゃないわよ。」
更科さんを睨んだ後、里見さんはビクビクしながらスマホの通話ボタンを押して電話を始めた。
里見さんの様子から大分焦っているのがわかる、暫く話した後に里見さんが「ちょっと待って、まだ…」と言って地面に座り込んだ、電話は終わったのかな?
「電話終わった?話しの続きしていい?」
「……ふざけんなっ! なんで私が振られなきゃなんないのよ! 私が何したってのよ?!」
「ハル君に嘘告しようとしたんだよね?しかも恋人がいるのに…。」
「それで付き合うことになったら直ぐに振るつもりだったんでしょ? 完全に自業自得じゃ…って着信?ちょっと待って。」
そう言って今度は更科さんが電話をし始めた。 その間も里見さんはずっと何だかよくわからないことを言ってた。
面倒そうに電話をしてた更科さんが、ため息をつきながら電話を切る。
「誰からだったの?」
「あー…
「おい、何で翔真君があんたに電話なんかするのよ?!」
「今回の情報のお礼に一緒に食事でも行かないか? …ってさ。 彼女を振ってから秒で他の女をデートに誘うとか、素敵な元カレさんねぇ?」
「お前が翔真君を誑かしたんだろ?! このビッチが!」
「行くの?」
「行く訳ないでしょ、全く興味ないわ。」
「は、何? 更科、まさかあんたも天川のことが好きな訳? 趣味わっる、あんなのの何処が良いのよ、全然理解できないんだけど。」
また言った また言った また言った…
「何あんた自殺願望でもあるの? もう流石に止めらんないわ…。取り敢えず後ろを見なさい。」
「は?何言って……はひっ?!」
里見さんが振り返ると、そこには無表情でよく知らない男子生徒を引きずってる桜花ちゃんが立っていた。
「そそ、そいつに何したのよ?! 他の四人は?!」
「…黙れ、お前もアイツ等みたいになりたくなければ。」
「っひ?!」
里見さんは涙目になりながらガタガタと震えていた。
でも
まだ
これからだから…
「ああ、そうそう…アンタ達の今までやったこと各クラスのグループチャットに流しといたから、明日から楽しみにしてなさい?」
わたしは里見さんの顔に手を伸ばした…―
―――――――――――
(悠人視点)
学校の階段を上がり屋上へ向かう、授業が終わり手紙の返事に行こうとすると茜に止められた。
『ハル君、ステイ』
『わかった、メッセージが来るまで教室で待機しとく。』
『え、嘘でしょ…今ので成立してるの?』
『余裕だな、これはまだ初心者向けだぞ。』
『うん、悠人と茜の友達ならこれくらいはな。』
『ウッソだろお前?! 人蔵…幾らなんでも拗らせすぎよ? 普通に怖いわよ。』
こんな感じで放課後は、指示があるまで教室にて待機するように言われて、ついさっき茜から『お掃除終わったから、もういいよハル君』 とメッセージが届いたので移動をしている最中である。
どうでもいいけど待ってる間、暇だろうからと茜にオススメされた一人TRPGをやってみたけど、虚無すぎてサイコロを振る前に止めた。
屋上についた、さっさと「ごめんなさい」して帰ろうっと。
ギイィ…と、音をたて扉が開く。
そこにはショートボブの女生徒が立っていた。一応、相手の話しは聞いた方がいいのかな…なんて考えながら近づくとその女生徒は突然、俺に深々と頭を下げて「ごめんなさい!」と勢いよく言った。
女生徒は明らかに怯えており、頭を上げると、そのままどこかへ走り去って行った。
…え?あれ、何で俺が振られてるかのような展開に…?
俺は少しの間、屋上で立ち尽くしていた。
――――――――
前回のタグ云々にコメントをくれた方々、ありがとうございます。
実はこの後に
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