乙女達の怒り③(更科・里見 視点)

(更科視点)


 前回までのあらすじ


 里見が地雷を踏んだ。完。


 はい、ただいま現実に帰ってきた更科よ…何とか怒れるJKと化した地堂と人蔵を宥めることができて、ようやく本題に入れるわ…誰か誉めて…。


「里見はアタシ達と同じ一年で何時も5、6人位で嘘告をして”遊んで”るみたいよ。」


 アタシの知ってる里見についての情報を二人に話すと、二人共険しい顔をして聞いていた、余程 里見のことが気にくわないようだ。


「因みにアタシ達のクラスの人間はいないわ。」


「それは別にどうでもいいかな…。」


 …こうして見ると地堂って本当に、あの周りに居た連中のことに興味は無いのね。


「しかし詳しいな、知り合いなのか?」


「知り合いって程でもないわ、何度か大勢で遊びに行った時に見かけたけど、直接話したことはないし。あの時はこんなことをする奴だとは思わなかったけど。」


 嘘告なんて何が楽しいのか全然理解できないわ。他人の不幸を笑う奴は、何時か自分が不幸になった時に、誰にも手をさしのべてもらえなくなるのよ。


「それで…どうするの?」


 アタシとしては、普通に天川が断ってしまえば里見のチンケなプライドも砕けるし、それでいいんじゃないかと思うけど…。


 地堂と人蔵はそんなもので許すつもりはないんだろうけど。


 特に地堂にとっては自分の彼氏にちょっかいを出そうとしてるワケだし…。ただ、これはアタシの感なのだけど、地堂が怒ってるのはどちらかと言えば、二人を引き離そうとしてることなんじゃないかと思うのよね。


 むしろ天川にちょっかいを出されて、怒ってるのは人蔵の方のような…。


 根拠?女の勘よ、充分でしょ?


「わたしは少し許せない…かな、ハル君に関わってほしくないし。」


「そうだな、その女の友人共々 二度とこんな下らぬことをしようなんて思えなくしてやろう。」


 …人蔵は具体的に何をするつもりなのかしら…怖くて聞けないんだけど。


「ま、まぁ取り敢えず、呼び出されたのは今日の放課後なんでしょ?」


「うん、そう言ってた。」


「なら地堂は放課後は天川を少し教室に待機させてて、全部終わったら屋上へ行くように伝えてくれる?」


「う、うん…でもハル君に怪しまれないかな…?」


 それなら全く心配ないわね、地堂が言えば天川は間違いなく二つ返事で了承するだろうし。


 今思えば、天川が地堂に冷たかった期間って、一生に一度レベルのレアイベントだったのかも…。


 その後、二人は天川の所へ戻ってうとうとしてた天川を甘やかし始めたので、アタシは里見と繋がりのありそうな知り合いに電話をかけた。


 ………アタシもあっちが良かったわ。





 ――――――――――


(里見視点)



 友達とゲームをして、負けたら罰ゲームとして好きでもない人に告白をする、それでタイミングを見つけて振る。

 別に今時珍しくもないただの『遊び』、こんなことで傷ついて立ち直れなくなる人も居るなんて大袈裟だし、むしろ私みたいな美少女とちょっとの間だけでも、付き合えてる気分が味わえるのだから感謝してほしいくらいだ。


 始めて相手を振った時はちょっとだけ罪悪感を感じたけど、2回目からは全然そんなのは無くなった。


 普段、私達がターゲットにするのは、冴えなくて異性に全く免疫の無さそうな陰キャ達である。


 しかし今回はちょっと趣向を変えて、最近ちょくちょく話題に上がる天川って男子をターゲットにした。 その天川は見た目は完全な陰キャオタクだが、同じクラスに地堂って彼女がいるらしい。

 廊下とかでたまにみかけるけど私程じゃないが かなりの美少女だ、なんであんなのと付き合ってるのか全然わからない、友達も地堂なら嘘じゃなくて本当に付き合いたいとか。

 そこで私が天川に告白して私を選ばせれば、地堂と天川はめでたく別れることになり、傷ついた地堂をその友達が慰めれば接点も持てるし、友達もなかなかのイケメンだしうまくいけばそのまま堕とせるんじゃ?


 天川には悪いけどそうなったら速攻で振らせてもらおう、私と天川じゃ釣り合いが取れないし。


 そもそも私には大学生でお金持ちで超カッコいい彼氏が居るし、同年代の男子は恋愛対象外だ。


 こんなことしてるのが彼氏にバレたら不味いんじゃないかって? 私がその彼氏と付き合ってるのなんて、かなり親しい人間しか知らないし、バレる訳ないわ。



 さて、そろそろ天川の来る時間ね、友達も物陰に隠れてもらったし、私に告白されたらどんな面白い顔をすんだろ。

 想像するだけで思わず口元が緩んでしまう。


 屋上への扉が開く音がした。私は表情を引き締めて振り返りながら何時ものように「あの、突然呼び出してゴメンね…」と、言おうとしたが、後ろを振り返ってそこにいた人物を見て止まってしまった。


 そこに居たのはサラサラの茶髪の美少女だった、見覚えのあるその美少女はハイライトのない目でこっちをじーーっと見つめながら




「あなたが里見さん………………だよね?」




――――――――



思ってたより長くなってしまった…


要望があったので次の幕間は『そーちゃん』の話しを書こうかなと思っています。


………それでNTRタグ入れようか悩んだけど、なんか初めて読む人に勘違いされそう…。









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る