乙女達の怒り② (更科視点)

(更科視点)


「不味いわね…。」


 アタシはとある問題に直面していた。

 それは…


 今アタシが手にしてる男物の制服の上着から、が薄れつつあるとゆうこと。


 どう考えても大問題だわ、だってこれが無いと寝れないし…。


 アタシは天川ヒーローに助けられたあの日から、夜に寝ようとすると襲われそうになったことを思い出してしまって眠れなくなったのだ。


 だから仕方なく…そう、あくまでも仕方なく天川ヒーローの上着の匂いを嗅ぎながら寝ることにした。

 これがまた効果が抜群で、最初は興奮するけど徐々に眠くなっていって朝までぐっすりと眠れるのだ。


 しかし連日アタシが抱きしめて寝たせいで、天川ヒーローの匂いが薄れていって…なんとかしないと。


 いっそ天川の上着全部くれないかしら…全部新品にして、それで暫くしたらまた上着全部もらって新品に……は?!

 これなかなか良くない? 天川は自分で買わなくても定期的に上着が新品になるし、アタシは定期的に天川の匂いのついた上着が手に入る…まさに Win-Win じゃない?

 完璧ね、非の打ち所の全く無い完璧な計画だわ、惜しむらくはまず間違いなく 地堂にバレてしまう点。


 いや駄目じゃない無理ね終了、解散。


 こうしてアタシの休日は過ぎていった、何をやってんのからね…。





「はぁ?!天川がラブレターを貰った?!」


「おい更科、周りに人も居るのだ、少し声を抑えろ。」


「う…ごめん。」


 アタシは天川達と中庭でお昼を食べてる最中に思わず叫んでしまった。周りからの視線が痛い…天川はため息をつきながら、やっぱり屋上が…とかぶつぶつ言ってた。


「それで、相手はわかるの?」


「更科さん、あんまりそうゆうのは聞かない方が…。」


「地堂だって…いや、地堂が一番気になってるんでしょ?なんたってアンタの彼氏に届いたのよ?」


「それは…そうなんだけど。」


「大体、今の天川と地堂が付き合ってるのって結構有名よ、それを知ってラブレターを出してくるって…つまり、そういうことよ?」


 アタシのこの言葉に人蔵が苦い顔をする。


「それで、改めて聞くけど相手は?」


「 里見 凪沙 (さとみ なぎさ)って名前、知ってる人だったりするのか?」


 は?里見 凪沙?アイツ…!


「地堂、 人蔵も話しがあるわ、少しあっちで話しをしましょう。」


「え? え?」


「な、なんだ藪から棒に?」


 アタシの言葉に地堂と人蔵が困惑してるけど、今はそれどころじゃないわ。


「今言ってた 里見 凪沙って、冴えない男子に告白して付き合ってから、こっぴどく振るってのを繰り返してるのよ。嘘告ってやつね。」


 アタシが二人に小声で伝えると、二人の顔が急に険しいものに変わる。


「…何?」


「それ…本当?」


「ええ、うちのクラスにも被害にあった男子が居るわ。」


 天川から少し離れて二人に近づく。天川は向こうの方で空を見上げてぼーっとしてた、ちょっと可愛い…じゃなくて。


 取り敢えずアタシの知ってる情報を共有しようとすると、人蔵が小さく手を上げた。


「一つ…いいだろうか?」


「ええ、どうぞ。」


「嘘告…というのは…やはりあれか、好きでも無い人に告白して相手の気持ちを踏みにじる…と。」


「そう、罰ゲームとかでやる奴もいるけ……ど…。」


 無表情の人蔵は激しい怒りを感じさせるオーラを放っていた…正直怖いんだけど。


「その人、ハル君の…心を傷つけようとしてるの?」


 っひ?!…目のハイライトの消えた地堂が、無表情で首を可愛く傾げて、アタシをじっと見つめてくる。怖い怖い怖い…里見の奴何考えてんのよマジで!


 ちょっと天川!そんなとこで欠伸してないで場所変わりなさいよ!…と、取り敢えず落ち着かせないと…。


 あー!もう!知らないわよアタシ!


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