望まなくても日常は変わる



 あれから数日が経った、大量の行方不明者がでたはずだが騒がれてたのは獅童だけだった。相良は全く話しを聞かないので分からないが…もしかして捜索願いをだされていない?


 金髪ピアス達については、居なくなる直前に俺と接触しているために警察に話しを聞かれたが、脅されて彼女と別れるように言われた、その後すぐ別れたからその後のことは分からないと答えた。


 更科にはあの日あったことは誰にも言わないように、もし誰かに言えば…と、脅してでも黙らせるつもりだったが。


「わかってるわよ、アタシはアンタのことは絶対裏切らないから…。」


 と、なんか尋常じゃない目で言われた。俺は何かとんでもないミスを犯した気がする…。


 因みに更科に貸した上着は、失くしたと言われ、代わりに新品を買って返された。…何でかサイズピッタリなのが気になる…。


 そして、本来は茜と桜花と三人でのお弁当タイムの筈なんだが…


「何で居るんだよ…。」


「べ、別にいいじゃない!ちゃんと地堂には許可もらってるわよ。」



 更科はあの後、茜に今までのことを謝罪し、その時一緒に居た俺にも頭を下げた為に許されてしまったのだ…。

 更科が俺に頭を下げてる時に、茜から不穏な空気を感じた様な気もするがきっと気のせいなのでセーフ。 セーフだから!!


 そして茜は「ちょっと更科さんと二人で話しをしてくるね。大丈夫。心配しないで。」 そう言って更科を連れて教室を出て行った。10分程してげっそりした更科と、いつも通りの茜が帰ってきた。


 …一体何の話しをしていたんだ?


 その後、更科は図々しくもお昼を一緒に食べたいと茜に申し入れ受理されてしまった、何故なんだ茜ぇ!


 何故か桜花はちょっと不機嫌だし…事情は一応全部説明したんだが…どうしたんだろう。


 こうして出来上がったのが


『同じ学年の美少女三人に囲まれて中庭で手作り弁当を食べる陰メガネ』


 まるでラブコメみたいだな!…おかしい、俺はこんなこと望んでないぞ。


 そして茜と二人の時は全く気にしてなかったけど、今は周りからの視線が物凄く気になる…明日から屋上行ってみようかな。


「天川の弁当って地堂が作ったんでしょ?…めちゃくちゃ美味しそうね。」


「やらんぞ。」


「何よケチね…アタシの作った卵焼きと、そっちのおかず交換ならどう?」


 更科の申し出を断ろうとしたら茜が動いた。


「じゃあ、はい ハル君のお弁当を作ったのはわたしだからこれでいいんだよね?」



 茜は自分の弁当箱の中から、卵焼きを一つ更科に渡した。


「あ、はい。」


 更科は何か言いたげだったが、大人しく従っていた。


「わ…私も茜とおかずの交換がしたいんだが…。」


「うん、勿論良いよ! どれがいい?」


 茜と桜花のやり取りを見て癒されてたら、更科が俺の弁当箱に自分の卵焼きをのせてきた。更科の方を見ると明後日の方向を見て、何も知らない振りをしていた。


「そういえば。」


 茜の台詞に更科がビクリと反応する。


「ハル君はどうして今日の上着新品なの?」


 今度は俺がビクリと反応した…。



 ―――――――



 更科に、獅童があの後どうなったか気になるか? と聞いたら。


「あんな屑でもそれなりに長い付き合いだから気にならないってワケじゃないわ。」


 更科は次の言葉を探してるようだったが。


「…止めておくわ。大体アンタ興味ないでしょ?」


「ああ、全くない。」


「アンタは…ま、いいわ。 アタシはそんなことより天川、アンタが何者なのかが気になるけどね。」


「余計な…」


「わかってるわよ、詮索はしないわ…そっちが話してくれるならちゃんと聞くけど?」


 そう言って更科はサラサラの金髪をかきあげながら、コチラをチラリと横目で見た。


「いやそんなことより。」


「そんなこと?!いやどんだけ興味ないのよ!」


「…俺の上着って本当に無くしたんだよな?」


「ほ…ほ、ほほ本当よ?な、な何で疑ってるのかしら?」


 どもりすぎだし、茜には疑われるし…やっぱりコイツに上着なんて貸すんじゃなかった…。




 ―――――――



 次の休日に茜と髪を切りにいく途中、まだ予約した時間には大分余裕があったので、二人で街中を適当に歩いてると偶然あの時助けた『そーちゃん』とエンカウントした。


「あ、貴方は…。」


「ええ、あの時ぶりですね。」


「…ハル君、知り合い?」


「ああ…ちょっとね。茜、悪いんだけど少しこの人と二人で話してきていい?」


 茜は俺と『そーちゃん』を交互に視て


「うん、わかった。 あっちのベンチで待ってるね。」


 茜が離れたのを確認すると『そーちゃん』が先に話しかけてきた。


「彼女さんですか?」


「ええ、世界一可愛い彼女です。」


 俺の返答に『そーちゃん』は苦笑した。


「あの後、外にいた女の人とは会えたんですか?」


 普段の俺なら気にもしないことのはずなのに、あの女の人と『そーちゃん』がどうなったかが妙に気になっていた。


「ええ…加奈にはちゃんと会えました。…俺達の事情は知ってるんですよね?」


 質問に無言で肯定する、なんて答えればいいかとか全然わからないし。


「あの後、加奈と話しあって別れることになりました…。」


 …やっぱりか、今日『そーちゃん』が一人でいたから、何となく予想はしていたが…。


「それは…。」


 何か言おうとしたが言葉が見つからない、いや そもそも何か言うべきかどうかすら分からない。


「加奈に言われたんです、どんな理由があっても、俺を裏切った自分は俺の側に居るべきじゃないって。俺が加奈を守るべきだったのに…妹のことだって…。」


「貴方だけのせいじゃないと思いますけどね。」


 相良に脅された時に『そーちゃん』に相談しなかった、三川さんにだって責任はある。


 勿論一番悪いのは相良糞野郎だが。


 俺の言葉を聞いて少し考えこんでいた『そーちゃん』が口を開く。


「来週……加奈の誕生日なんです。だから今日はその誕生日プレゼントを探しにきました。」


 彼と目があった、『そーちゃん』の目はまだ何も諦めていなかった。


「その時に…もう一度 加奈に告白をするつもりです、俺はまだ彼女のことが好きで、諦め

るなんてできない。」


 それを聞いた俺は、柄にもなく三川さんと『そーちゃん』がうまくいけばいいな…なんてことを考えた。




『そーちゃん』と別れて茜の所に戻ると、なんかチャラそうな二人組の男が茜に話しかけていた。チッ…


「おまたせ茜。」


「あ、ハル君!」


「んだよ男連れかよ…。」


 そう言って舌打ちしながらチャラ男達は立ち去った、その際に二人のズボンのベルトをそっと切っておいた。


 向こうの方が少し騒がしくなってきた、俺は茜の手を握って


「行こう。」


 そう茜に言うと


「うん!」


 茜が俺の手を握り返して嬉しそうに答えた。



―――――――


取り敢えず一区切り…

❤️や☆、コメントありがとうございます。とても励みになります。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る