自覚のある悪意と自覚のない悪意


 部屋の中を見渡すと、ソファの上に緑髪のチンピラに押し倒されてる更科が居た、服は…まだちゃんと着てるなセーフセーフ。


 掴んだままのモヒカンとプリンを、それぞれ適当なチンピラに向かって投げる、ぶつかったチンピラが変な声をあげながら倒れた。

 ちゃんと受け止めてやれよ薄情な奴等だな。


 他のチンピラは、まだ何が起こったのか解らず呆然としている。これじゃ兵士にしても直ぐ死んでしまうな…。


「あ…な、なんだテメェ!俺たちが誰か 知っ 「知らん。」ぼげぇっ?! 」


 更科の居るソファへ近寄ると、我に返った緑髪が喋り始めたので平手打ちした、ソフ

ァから転げ落ちて顔を押さえて蹲っている。


「お前調子のんなよ!」


「おい、コイツ逃げれないように囲め!」


 他のチンピラもやっと我に返り俺を取り囲む、中には金属バットや鉄パイプを持ってる奴もいる。


「テメェ絶対許さねぇ、お前をボコボコにするだけじゃ済まさねぇ…テメェの家族にも地獄を見せてやる!」


 金属バットを持ったチンピラがそう言いながら、バットを振り下ろしてきたので、バットを掴んで止めた。


「なっ?!おいっ、離せ!」


 俺に掴まれたバットが動かせないことに焦るチンピラが叫ぶ。


「ボサッとすんな!おっ がっ?!」


 バットを持ってたチンピラを引き寄せて、後ろから鉄パイプで襲い掛かってきたチンピラの盾にした。


 鉄パイプが盾にしたチンピラの頭に当たる、 ゴッ と鈍い音がしてチンピラは頭を押さえて倒れた。


「聞きたいことがあるんだけど。」


 俺の突然の質問にまだ無事なチンピラ達は戸惑いを見せる、ちゃんと答えやすいように手に持ってた金属バットに力を込めて くの字に曲げるパフォーマンスを見せた。


 驚愕の表情を浮かべて、さっき蹴破った扉と曲がった金属バットを見て、完全に戦意を喪失したチンピラ達。


「相良 斗真はどこだ?」






 結局質問には「知らない」の一点張りで、腕や脚をあらぬ方向に曲げられて泣き叫ぶことはあっても、相良の居場所を喋る奴はいなかった。なかなか根性かあったな、本当に知らなかっただけかもしれないけど。



 更科の方を見ると、目を見開いて此方を見つめていた。着ていたブラウスのボタンが幾つかとれて、前が大きく開いている。


 こういう場合はどうするんだ?……あ、そうだ。


 俺は直ぐ横で蹲っていた、緑髪の髪を掴んで立たせる、さっき平手打ちした方の顔は大きく腫れあがっていた。


「おい、脱げ。」


「は…へ?なん」


「早くしろ。」


 もう一度平手打ちした、口から折れた歯が何本も出てきて、臭かったのでもう一度平手打ちした。


「ほら、これを着ろ。」


 原型を留めないほど大きく腫れ上がった顔になった、緑髪のチンピラの着てた上着を更科に渡す。


「いや流石に要らないわよ?!どうせならアンタの上着を貸してよ…。」


 やっぱり駄目か…俺は緑髪に上着を返してついでに平手打ちしといた。


 更科が手を出してきた。え、マジで俺の上着を貸さないといけないのか? …普通に嫌だったが俺は制服の上着を更科に渡した、それを着た更科が


「…その…助けてくれてありがとう。」


 と言った、素直にお礼を言われるとは思わなかったので少し驚いた。


「別に、ついでだから。」


「そ、そう……。」


 しかし思わず助けてしまったが、この後はどうしようか…いっそコイツも異世界グレセアに送るか?


 そう思い部屋を見渡すと、コソコソと逃げようとしてた獅童を見つけた。完全に忘れてたぞ…。


「どこ行こうとしてるんだ?。」


 獅童の前に回り込んで止めると、慌てた様子で。


「ち、違う!オレはアイツ等の仲間じゃない、信じてくれ! と、桃花も一緒に説明してくれ、な?」


 そういって獅童が更科に助けを求める、更科の方をみると俺の上着の匂いを嗅いでた更科が、急に怒りに染まった表情になり獅童を睨んだ。



 ………ん?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る