アタシのヒーロー(更科視点)
「な…何よこれ?!」
「桃花ってさ、した後は何時もくっついて寝るよね。」
スマホに写ってたのは、直哉とした後で無防備に裸のまま寝てるアタシの画像。好きな人と抱き合って寝るのはあんなに幸せな気分だったのに…。
今は最低最悪の気分だ。
「改めて言うよ、茜と付き合えるように手伝ってくれないか?」
何で…こんな…貴方はあたしにとってのヒーローだったのに…直哉君…。
はっきり言って直哉が地堂と付き合うのは無理だ、あれだけしつこくアピールしてるのに、愛想笑いと適当な相槌でながされてるのが分からないのだろうか?
脈無しなんてレベルじゃない…そもそも名前で呼ばれるのすら嫌がってるのに…直哉を含めた周りの連中は地堂が恥ずかしがってるだけとか言ってるし…。
地堂は異常に身持ちが堅い、遊びに誘っても男子が一人でも居れば断られるし、途中で偶然を装って男子が合流したら即帰る。
アイツ実は彼氏いるんじゃない? そう考えると色々納得できる。
アタシは地堂と同じ中学に通ってた連中に色々聞いて回る、すると直ぐに怪しい奴が見つかった。付き合ってるかどうかはわからないけど、同じクラスの 天川 悠人 …アタシは地堂と天川が喋ってるのを見たことがないけど二人は幼馴染みで、中学の時は結構仲が良かったらしい。
幼馴染み…か……。
そんな下らないこと…まさか、ね。
一向に地堂との仲が進展しないことに(する訳がないけど)焦ったのか直哉に、何とか学校外で二人きりで会えるよにしてほしいと言われた。
地堂が男子と遊ぶんだったらこんな苦労しないわよ…しかもアタシも地堂に嫌われてるっぽいし、アタシが誘っても受けてはくれないだろうし…。
アタシは地堂の中学時代の友人である 白戸 夏 と 高見 栞 の二人に、地堂をカラオケに誘うように頼んだ。
最初は断られたが直哉に頼んでもらうとあっさりと了承した、どんな風に頼んだのやら…。
結局、地堂をカラオケに誘いだして直哉と二人きりにしたが、秒で振られてて少しスッキリした。
しかもこれが原因で、直哉とアタシは今まで以上に地堂と距離を置かれてしまった。それと、これの次の日ぐらいから地堂が天川に話しかけるようになった、やっぱあの二人は付き合ってるのかしら?
天川の対応が冷たいのは気になるけど…直哉はそれを見てずっと不機嫌だし、あーもう面倒臭い…。
さらにこの数日後、何があったか知らないが天川と地堂が手を繋いで登校してきた。地堂は嬉しそうに笑っていた。
アイツあんな顔をするのね…。天川は…なんか雰囲気変わったような…気のせい?
でも …これでもう詰んだわね、アタシどうなるのかしら……何でアタシがこんな目にあわなきゃいけないのかしら?
何で
地堂が何も悪くないなんてわかってる、悪いのはクソ野郎の直哉とあんなのに惚れてたアタシ自身。
この日の内に直哉もアタシも、いつも地堂の席に集まってた連中も皆して地堂に拒絶された。ま、当たり前よね…今の状態で天川を悪し様に言うなんて、只でさえ嫌われてるのに…。直哉の馬鹿何が『二人で何処かに出掛けないか?』 よ、行くわけないじゃない見たらわかるだろ!?
そんな警戒しなくてもアンタを睨んでんじゃないわよ…。
そこから何日かは平和だった、何時ものように学校に行って、バイトして、家に帰る。遊びに行く気にはなれなかったけど、
なんて希望は休みの日に
今日呼び出された目的も分からないし不気味だ…相良先輩は普通に世間話しをふってきてそれに答えてるだけ。でも、絶対それだけじゃない。
アタシは途中トイレにいく振りをして近くの席の陰で、二人の話しを盗み聞きをした。
「あれがあの画像の娘?かなり見た目が変わってるね。」
「ええ、オレと別れてからイメチェンしたみたいです。」
……画像?…画像?!まさか…
「ま、いいや。僕はああいうギャルっぽいのは好みじゃないしね。…で、亮太達への報酬はあまり出せないから、その分を彼女で補填したいと?」
「はい、あの画像もありますから…。」
「お前も大概屑だよね。」
「このやり方を教えてくれたのは斗真さんじゃないですか。」
「んー?そうだっけ? 覚えてないや。…で、だ。茜ちゃんは僕が最初に貰うからその後で…になるけどいいんだよね?」
「そこはまぁ嫌ですけど…オレとしては天川が痛い目にあって、茜がオレの彼女になってくれたらそれで…。」
気持ち悪い、頭が痛い…何で……。
その後、席に戻ってからのことはあまり覚えていない。
ただ、
喫茶店から出ると腕を組んで楽しそうにデートをしてる天川達に会った。
「獅童達こそデート中か?なんだお前達付き合ってたのか?」
そんな天川の一言に怒りが湧いてくる。
「うるっさいわね!アンタ達には関係ないでしょ?」
…こんな奴と付き合って浮かれてた自分を殴りたい気分だ。
もう、つかれた…。
逃げ出したいけどあの画像があるし、パパやママに迷惑もかけたくない…どうしよう。
天川達にも悪いことしてしまった…このままじゃあの二人も…。
今更こんなことをしても意味がないってわかってる、だけど
「天川、アンタに話があるわ。」
この次の日に学校から帰る最中に後ろから羽交締めにされて、口を塞がれて車に連れ込まれた。
「んー!んー!!」
「うるせぇな、静かにしろや。」
「…っ…。」
見たことない男に凄まれる、怖い…ただそう思った。
車は少し走ったあと、ある廃ビルの前で停まってビルの中に連れ込まれた、広い部屋に入れられると中にはチンピラみたいなのが10人以上居た、そのなかに一人だけ見覚えのある…
「わりーなぁ、桃花ちゃんだっけ?」
髪を緑に染めて口の臭いチンピラが話しかけてきた。
「コイツに仕事を頼まれた連中が昨日から連絡がつかねーんだわ。お前何か知らない?」
アタシは黙って首を横にふる。
チンピラは
「君の彼氏君も同じ反応なんだけどさ…知らない、じゃすまねーんだよ。どうしてくれんの?」
「彼氏じゃ…ない。」
「あ、そ…取り敢えずさぁ、亮太達と連絡がつかないし。あの…茜…だっけ?あのこの所へ行った連中は全員意識がまだ戻らねーし…オレ等めっちゃイライラしてるんだわ。だから…」
そう言ってアタシはボロボロのソファに押し倒される。
「ちょっと皆のストレス解消に付き合ってくれや!」
「やめ…触んな!ちょっと!嫌!止めて!助けて直哉!」
助けを求めて直哉の方を見ると顔を背けられた。
…はは…何が格好良くてだ、何が優しくてだ、何がヒーローだ……あんな写真で脅迫して自分の為ににアタシを売り飛ばすような奴に…全部…捧げたなんて…。
今まで我慢してきたのに涙が溢れてくる。
無抵抗になったアタシに覆い被さってるチンピラが、何か下卑たことを言いながら服に手をかけてきた。周りのチンピラの不愉快な笑い声も耳に入らない。
もうどうでもいい…
あんな奴はヒーローじゃない…
でも…もし何処かにヒーローが居るなら助けてほしい、この理不尽な状況も…周りのクズも吹っ飛ばして…なんて、そんなこと…
その時、大きな音がして部屋の扉が飛んできて近くに居たチンピラの一人にぶつかって血を流しながら倒れた。
チンピラも、
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前の話と合わせると一番長かった更科回
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