こんな奴の為に(更科視点)


 アタシ、更科 桃花と獅童 直哉は所謂幼馴染みというやつだ、幼稚園の頃から


『桃花のことはオレが何時でも助けてやるからな!』


 直哉はアタシにとってヒーローだった。


 格好良くて、優しくて、何時でも自信に溢れてて…アタシがイジメられてた時も颯爽と助けてくれる、あたしはそんな彼のことが好きだった。


 彼は運動は得意だったが勉強はちょっと苦手だった、だからあたしは彼の役にたてるように勉強を頑張った。


 テスト前に彼と二人で勉強する時間が好きだった、宿題を代わりにやるのはちょっと違うかな?と、思ったけど彼が喜んでくれるので別に嫌ではなかった。


「桃花、オレと付き合って欲しい。」


 中学二年の時に彼から告白をされた。


 信じられなかった…その頃はお洒落なんてまるで興味はなく、眼鏡に目が隠れる位まで伸びた前髪、化粧なんてしないし服だって着れればよかったし…。


「直哉君…本当にあたしなんかで良いの?」


「もちろんさ、桃花はオレと付き合うのは嫌?」


「い、嫌なワケ無い!あたしは直哉君のことずっと好きだったから……その…宜しくお願いします。」


 恋は盲目、なんてよく言ったものだ…この頃のあたしは周りの事が全く見えていなかった。コイツの本性にも全然気づかない程に。


 付き合ってる時は凄く楽しかった…デートしたりあたしの部屋で彼に勉強したり、一緒に登校したり。キスもしたしその先のことだってした。


 でも彼は恥ずかしいから学校では付き合ってることを内緒にしようと言った。


 とても残念だったけど、自分みたいな地味な子が彼女なんてバレたら直哉に迷惑がかかるから仕方ないかな…なんて、を考えていた。


 彼とはアタシの部屋でよく勉強をした、といってもあたしが彼に一方的に教えてるだけだったし、彼は直ぐに勉強に飽きてあたしを求めてきた。


 そんなある日、あたしは直哉君に次のテストで使うカンニングペーパーを用意して欲しい、と言われたが流石にそれは断った。


 そんなことをしてもしバレたらタダじゃすまないし、何より直哉君はあたしにとってのヒーローだったから、そんな卑怯なことをしてほしくなかった。


 初めて彼の頼みを断った。


 断られるとは思ってなかったのだろう、彼はムスっとした顔つきになり「ならいい」と、言ってそのまま帰ってしまった。


 それ以降、彼はあたしの部屋に勉強に来なくなった。


 それでも彼の成績が落ちることはなく、彼もきっと頑張ってるんだ…とその時は嬉しかった。


 直哉は学校でも人気者でモテるため彼の周りには沢山の女の子がいた。学校ではあたし達が付き合ってることは、内緒だったので止めることなんて出来なかったけど、やっぱりモヤモヤする…。


 ある日、あたしは放課後に教室に忘れ物を取りに戻ると、教室にはまだ二人の生徒が残っていた。直哉と同じクラスの女の子…こっそり覗いて見ると、密着するように体を寄せて何か話していた。


 あたしはその光景にショックを受けたことと、覗いてしまった後ろめたさでその場から逃げ出してしまった、気づいたら自分の部屋で泣いていた。


 一頻り泣いた後で 、こんなんじゃ駄目だと思い次の日の学校が終わった後で彼を部屋に呼んだ。


 別に昨日のことを咎めるつもりなんかなくて、このままじゃ彼が他の誰かのものになってしまう…そんなのは嫌だったので、彼とゆっくり話しをしようとした。


 けど、彼は部屋に入ってくるなりあたしを押し倒してキスをしてきた、そんな気分じゃなかったしその時の彼は興奮してて怖かったので「嫌!止めて!」と、強く拒否をした。


 そういうことはちゃんと話しあった後にしてほしかっただけなのに、彼は立ち上がり。


「もういい、別れよう。」


 彼のその言葉に目の前が真っ暗になった。


「なん…で…。」


 そう言ったあたしに直哉は何も言わず出ていった。



 後になって知ったが彼は既にあの時点で別の女の子と付き合っていたらしい。しかもあの教室にいた女の子とは別の…彼の成績が下がらなかったのも…。


 それから暫くはショックで何も手がつかなかったが、なんとか立ち直ってからは生まれ変わろうと、それまで勉強してた時間でバイトをしてそのお金でオシャレをするようになった。


 髪を染めて、眼鏡をコンタクトに変えて、今まで着たこともない派手な格好をして、話し方も変えた。


 成績は下がってしまったが別にどうでもよかった、最低限の成績があれば取り敢えず高校は卒業できるし。


 高校に進学してから同じクラスに獅童 直哉がいて「げ…。」と、思ったが、もうその頃にはそれほど気にしてなかった。


 …嘘だ、直哉に未練はあった。


 高校で同じクラスになった地堂 茜 という女の周りにはそれなりに人がいて、地堂 本人は余り進んで会話に参加せず、黙って話しを聞いて愛想笑いを浮かべるだけでとても『扱い易そう』だったので地堂 の居たグループに入った。そこに直哉まで来たのは予想外だった…しかも直哉は明らかに地堂に気があるのが丸わかりだった…。


 気にくわない…


 ある日、直哉から校舎裏に呼び出された。この時は少し期待をしていた、もしかしたらやり直せるかもしれないと…しかしそこで彼に言われたのは


「茜と付き合いたいから手伝ってくれないか?」


 信じられない…コイツは本気で言ってるのだろうか…普通自分から振った元カノに、新しい女と付き合う手伝いとか頼む?


「嫌よ、自分でなんとかしなさいよ。」


「頼むよ、俺達の仲だろ?」


 何が俺達の仲よ、あんな一方的に振ったくせに…。


「嫌って言ってるでしょ?」


「…どうでも駄目か?」


「しつこいわよ。」


「本当はこんなことはしたくなかったんだが…仕方ないよな。」


 そう言って直哉はスマホであたしが裸で寝てる画像を見せてきた。



 ────────────


 ちょっとまとまらなかったので続きます。








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