理不尽には理不尽がかえってきたりする

 ※少し不愉快な描写があります。


 はっきり言えば更科のことは嫌いだ。


 獅童と組んで茜を騙した、これだけで俺にとっては嫌いになるのに充分な理由だ。更に茜の席に群がる連中の一人で、俺のことを馬鹿にしてたし、ついでに陽キャだし。


 ただ今回の更科の忠告に関して言えば、好き嫌いに関係無く信用していいだろう。

『茜から離れないこと』『人気の少ない場所には行かないこと』なんて当たり前すぎて普通ならやらないレベルの忠告だし。


 俺の信頼を得て油断させたいなら人選的に無い上に、アイツ等から言わせればただの陰キャである俺を油断させる意味もない。


 だからこそマジで今の更科の行動は理解出来ない、獅童の足でも引っ張りたいのか?…痴話喧嘩でもしてるんだろうか?


「天川ってお前かぁ?」


 教室を出て人気の少ない方へ歩いてると声をかけられる。各々がいかにも不良ですって見た目の5人組で、金髪ピアスに着崩した制服の大男がこっちに近寄ってくる。うちの学校って、偏差値はそこそこ高いんだけどこんなのも居るんだな…。


「なぁ…ちょっと面貸せよ、拒否権はねぇぞ分かってるよなぁ?」


 周りはまだ結構人が居るんだが…人が折角やりやすいように、アシストしてるのに無駄にするなよ。


 周りの奴等は巻き込まれたくないのか完全に見てみぬ振りを決めている。中にはクラスの人間も居たが、そいつ等に至っては俺が絡まれてるのを嗤いながら見ている。


 …え、俺マジで何もしてないのにこんなに嫌われてるんだろう? お前達に ざまぁ される謂れは無いぞ。


「え?あ、あの…が何かしましたか?」


「いいから黙ってついてこいや。」


 できる限り気弱そうに対応し連れていかれるように見せる。


 校舎裏まで付いて行くのと不良達は俺の周りを取り囲む。


「え…と…。」


 …怯えるのってこんな感じでいいのだろうか? 面倒臭くなってきたのでそろそろ用件を言ってほしい。


「お前さぁ、なかなか可愛い彼女といつも一緒にいるよなぁ?」


 大体予想通りか。


「そ…それが何か?」


「別に?ただ俺等にちょっと貸してくれねーかなって。まー選択肢はないんだけどな?ギャハハハ!」


 ピキリ…


 下品に笑う奴等に殺意が漏れそうになる、まだ我慢だ…。


「そんな!勘弁してください!」


 俺がそう言った瞬間、金髪ピアスの鈍いパンチが繰り出されたので、当たる直前に完璧なタイミングで後ろに吹っ飛ぶ。


「………?」


 俺を殴ろうとした男は自分の拳を不思議そうに見ていた。


「オイ亮太、

 顔は止めとけって、後が面倒だろーが。」


「え?…あ、ああ。わーってるよ。」


「うう…な、なんで…。」


「選択肢はねーつったろ?あとお前をボコるようにも言われてるからなぁ。」


 やっぱり誰かに頼まれたか命令されたか。


「なあ、さっさと終わらせようぜ。早くヤリてーんだけど。」


「コイツの彼女はしばらく駄目なんだろ?」


「飽きたら俺等にくれるって言ってるし、それまであの一年の金髪ちゃんで我慢しようぜ?」


 一年、金髪?…ああ、成る程。


 なんとなく察した、だから更科は俺に忠告したのか。更科を売ったのは獅童かそれか他の奴か。


 まだ後ろにいる奴の名前を知りたかったがもういいか、いい加減不愉快だし。


 立ち上がり不良達をみる、何事もなかったように立った俺を驚いた顔で見ている。


 俺は右手を軽く挙げ魔力を練ると辺りを白い光が包んだ。



 光が収まり視界がもとに戻ると、先程まで居た場所とは全く違う場所にいた。


「は?な…なんだこれ?オイ一体何がどうなってんだ?」


 そこは辺り一面に広がる草原の中だった、ここは一体どの辺りだろうか?



 の何処かだとは思うけど…あとで迎えに来てもらうか。









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