読めないのはギャルの行動だけではない
その日は休み時間や昼食時に、桜花がこちらの様子を見に来てくれるので、安心して一人で行動できる。
中庭で俺、茜、桜花の三人でお昼を食べて雑談中にちょっとトイレへと告げて別行動を始める。
朝の反省を踏まえ勇者特性をできる限り弱めに発動して、周りの様子を伺いながら廊下を歩いてると向こうの方から更科が歩いてくる。
「……。」
更科は俺の目の前まで歩いてくると、無言のままこちらを見ていた。微妙に様子が変だ、目には隈があるし若干疲れてるようにも見える。
何か言いたそうだったので黙って待っていたが、一向に話始める気配がない。これ以上茜達を待たせる訳にもいかないので立ち去ろうとすると、更科が漸く話し始めた。
「天川、アンタに話があるわ。───」
────────────
「悪い、待たせた。」
「おかえりハル君。」
「おかえりだ天川。」
俺が戻ると、茜と桜花が楽しそうに話をしていた。
「何の話をしてたんだ?」
「ああ、地堂に天川のことを色々と聞いていた。」
「俺のこと?」
嫌な予感が…。
「うん、ハル君のことを色々教えてたの!」
この茜の満面の笑み…ま、まずい!
「例えば…。」
桜花が人の悪い笑顔を浮かべる。
「『俺みたいな陰キャと…』「わかった止めろストップフリーズ!」」
一体いつまでこの話を引っ張るんだ…。茜もそろそろ彼氏の黒歴史を拡散するのは止めて欲しいお願いします。
文芸部の顧問の先生に廊下で会うと、なんとも言えない表情で目を反らされる俺の気持ちを簡潔に述べよ。
なお、ただ気持ち悪いから目を反らしただけならまだ(精神的に)大丈夫なものとする。
いや大丈夫じゃなかったわ、それはそれでショックだよ。
しかもここ数日は同じクラスの委員長まで、その先生と同じ反応をするんだ。…するんだ…茜…。
あ…胃が…
「どうしたのハル君?!胸を押さえて…大丈夫?苦しいの?」
ええとても……あ、桜花めニヤニヤしやがって…。
そんなやり取りをして楽しい昼休みだった。…更科のこと以外な。
そして午後の授業も終わり放課後になると、茜達がケーキ屋に行くのを見送る。
さて、この後はどうようか…人気の少ない場所に移動した方がいいかな?
そう思い、移動しようとするとまだ教室に残っていた更科が一瞬こっちを見てから顔を反らした。
あの廊下での更科との会話を思い出す。
『天川、アンタに話があるわ。』
『俺はお前と話すことはないぞ。』
『いいから聞きなさいよ。アンタ、地堂の彼氏なんでしょ?』
『そうだって何度も言ってるだろう? なんだ、まだ釣り合いがどうのと言うつもり?』
『別に…そんな下らないことはどうでもいいわ。ただ、アンタが自分の彼女が大切なら地堂を一人にしないことね。人気の少ない場所も避けなさい。 言いたいことはそれだけよ。』
更科の考えが読めない、一体何がしたいのだろう。
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