気を張りすぎるとただの被害妄想にも見える


 異世界グレセアで四年間を過ごして、帰ってきても月曜日ってダルいなって思う。


 日曜日が素晴らしければ素晴らしいほど、月曜日が辛く感じるんだよな…。


 日課になった茜との登下校中。


「眼鏡をコンタクトに変えようかと思うんだけど…。」


「駄目だよハル君。」


 茜って否定するときは容赦ないよね。


「えと…一応理由を聞いても?」


「眼鏡をかけたハル君の目を、横から見れなくなるから。」


「いや…よくわからないんだけど?」


「兎に角駄目ってこと。」


「わ、わかった…。 」


 全くわからないけど、わかったことにした。


 茜が今のままでいいと言うなら、俺としても異論はない。そもそもイメチェンしようと思ったのも、相良や獅童みたいなのに絡まれるのが面倒だからってだけだしな。


 デートの時のこともあり暫くの間、学校では勇者特性を使用して感覚を強化して過ごすことにした。




 学校に着くと下駄箱の側でふと視線を感じる。まさか昨日の今日で…?


 誰かが後ろから近づいてくる。


「ハル君どうしたの?」


 茜が不思議そうに聞いてくる。


「いや…。」


 視線は複数だが足音は一つ…でもこの足音は…。


「どうした?そんな場所で突っ立って。」


「あ、人蔵さんおはよう。」


 …なんだ桜花か。


「おはよう地堂に天川。」


「あ…あぁ、おはよう人蔵。」


 少し気が抜けてしまい遅れて挨拶をする。


「何だ天川、気の抜けた顔をして。」


「なんでもないよ。」


 勇者特性を使って勝手に警戒してたとか言えない…。


「あ、そういえば人蔵さん、昨日の話しなんだけど…。」


 茜が桜花に話しかける。ん?昨日?


「ああ、あの美味しいケーキ屋さんだな。」


 ケーキ?何の話しだろうか。


 俺が不思議そうな顔をしてるのを見た桜花が説明し始めた。


「昨日の夜に地堂とメッセージアプリでやり取りをしてな、何処かオススメの菓子店は無いかと聞いたら色々教えてくれたんだ。」


「うん、それで美味しいケーキ屋さんがあるから今度一緒に食べに行こうって。」


 何だとコイツ…茜と遊びにいこうだと?……なんてな。他の奴なら許さないかもだが茜と桜花は異世界グレセアで戦いが終わって平和になったら、一緒に遊びに行こうって約束してたみたいだからな。



 この二人の約束が叶って良かったと思う、例えその約束を片方が覚えてなかったとしても…。


「それなら今日の放課後にでも早速行ってきたらどうだ?」


「え?ハル君は?」


「ごめん、今日は少し用事があるんだ。」


「なら別に他の日でも…。」


「今度の休みに髪をカットした後で行こう、俺にオススメのケーキを探しといてくれ、茜なら俺の好みがわかるだろ?」


「でも今日いきなりなんて…人蔵さんは大丈夫?」


「私なら大丈夫だ、寧ろ今日は部活が休みだから今日がいいな。」


 桜花は察したのか話しに乗ってきた。


「うーん…わかった、それならハル君の舌を唸らせるようなケーキを沢山見つけておくね。」


 一体何個食べるつもりなんだ…?


「そういえば定休日はいつだったかな?」


「今日は大丈夫だったと思うけど、ちょっと待ってて、すぐ調べるから。」


 そう言って茜はスマホでHPを調べ始めた、その隙に桜花が小声で話しかけてくる。


「悠人、勇者特性をあまり全開で使うな、こっちは異世界グレセアと違い耐性のある奴は殆どいない、逆に今のお前から放たれる力を違和感として感じて注目を集めてしまう。」


 う…そうだったのか、だから視線が多かったのか。


「何か気になることがあるのだろう? 今日の放課後は、私が茜の側にいるからできる限り早めに片付けることだ。」


「…ありがとう桜花、それとは別に茜のことで気になることが…。」


「それも分かっている。のことだろう? もし何かあったら私が責任を持って止めるから心配するな。」


 全く…頭が上がらないな…。


「すまない頼む。」


「違うだろう?」


「……任せる、桜花。」


「ああ、承知した。」


 俺が気になっていたもう一つのこと、それは茜が記憶を失っていても、勇者特性を持っているかもしれないということ、下手したら力を暴走させる可能性も大いにある。もしそんなことになれば大きな被害が起こるだろう。だから今の茜は一人にしときたくなかった。



 俺が一緒に居たいだけだろって?まあ、それもある(むしろそれが一番の理由)な!








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