デートにはハプニングがつきもの(限度はある)


「二人とも奇遇だな。」


「人蔵さんこんにちわ。」


「ああ、人蔵…ってそのスマホ新しいやつじゃないか?」


 桜花が手に持ってたスマホは確かまだ発売されたばかりの新機種だ。


「その通りだ、ふふ…これでお前達とメッセージアプリというやつが出来るな。」


「ん…?お前メッセージアプリやりたかったのか?」


「うん、まぁ…話には聞いてたから気になってたんだ。」


「メッセージアプリ入れるの?」


 茜が会話に参加してくる。


「ああ、今までは携帯電話はこう…折り畳めるやつだったから出来なかったんだ。」


「あ、ガラケーだったんだ?」


「皆そう呼んでいたな。…なんでガラケーと呼んでたんだ?」


「ガラパゴス携帯の略称らしいよ。」


「ほう…茜は物知りなんだな。」


「いや、皆知ってることだよ…。」


 おお!茜と桜花が普通に会話している…!


 茜が俺以外に自分から話しかけるのはかなり珍しい、向こうで出会ったばっかりの時は俺と茜ばっかり会話してて、桜花は蚊帳の外だったからな…何ヵ月も旅をして四六時中一緒にいてようやく日常会話ができるようになったぐらいだしな。


 それから更に1年近くたって、ようやくお互い名前で呼びあえるようになったんだ。


 茜と桜花が仲良くなるのを、嬉しいような寂しいような感じで見てたら、茜に気を使われて話題を振られるんだよな。


 また何時か、あの時のように三人で笑いあえたら…なんてこれ以上の奇跡を望むのは流石に欲張りだろうか。


「そういえば二人はデート中だろう? これ以上邪魔はできないからな、そろそろ失礼する。」


「あ…あのっ…お昼まだだったら人蔵さんも一緒にどう…かな?」


「いやしかし…。」


 茜の申し出に桜花はチラチラと俺の方を見る。


「良いんじゃないか? なんだったら俺が代わりにメッセージアプリを登録しようか?」


 桜花が「本当か?!」と食い気味に聞いてきたので「勿論だ。」と返す。


「ついでにIDを交換しないか? 茜はどうする?」


「わたしも良いよ。」


 桜花は嬉しそうに微笑みながら「ありがとう。」と、言った。




 それから近くのカフェで昼食を食べることに。注文したものがくるまで桜花は分厚いスマホの説明書を茜と話しながら真剣な顔で読んでいた。


 あれってちゃんと読む人いたんだ…。



 昼食を終えて桜花とはそこで別れることに。


「邪魔をしたな。また、学校でな。」


 別れる時に桜花は俺と茜を真っ直ぐ見つめながらそう言った。


「あの…ごめんねハル君。」


「え、何が?」


「折角ハル君とのデート中だったのに、 お昼に人蔵さんも誘っちゃって。」


 ああ、そんなことか。


「全然大丈夫だよ。それよりさ…。」


 茜と桜花は結構普通に喋ってた。


「茜は人蔵さんのことどう思う?」


「えとね…何だか不思議と話し易いの。友達になれたら良いなって。」


 うん。


「そうだな…。」


 俺の返事は素っ気なく聞こえてしまっただろうか? でも今の俺に、それ以上の言葉は見つからなかった。



 その後、茜が気になってたという雑貨屋に行くことに。


「何か欲しい物でもあるのか?」


「ううん、ただ雑貨屋さんって見てるだけでも楽しいし、気に入った物があれば買うかもだけど。…ハル君はそういうのは嫌?」


 買い物なんて行く前に欲しい物を決めて、後はそれを買いに店に行くだけだったからな…でも。


「全然嫌じゃないよ。茜と一緒だしな。」


 そう言って歩きながら茜の手を握る。


「…ハル君て最近凄く積極的だよね。」


「あれ…そうか?」


「そうだよ! ちょっと前までは手だってあんまり繋いでくれなかったし。」


 あー…まぁ、あの時は恥ずかしかったしな。今だって本当は恥ずかしくない訳じゃないけど。


「茜は嫌?」


「嫌な訳ないよ!でもそれ分かってて聞いてるよね?」


「うん。」


「意地悪…じゃあ罰として…。」


 そう言った茜が腕を絡ませてくる。


「悪かった、謝るから…。」


「駄目、許さない。だから今日は帰るまでこのままね?」


「はい…。」


 俺の反応を見て満足そうに笑った後、茜が前を向いて固まる。


 なんだろう?と思い俺もそっちを向くと。


「げ…。」


「…あか…地堂に天川…。」


 そこにいたのは同じクラスの獅童と更科だった。





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