心を折りにくるのは幼馴染みだけではない
『はるちゃん!はるちゃん!』
これは……小学校に上がる前か。
『 はるくん!あのね?』
小学校低学年の時…茜からの呼び方が変わったんだ。
『はるとくん!…うーん、やっぱり変かな?』
小学校高学年の時にほんの少しの間だけ使ってた呼び方だ、一週間も持たなかったけど。
『ハル君、一緒に帰ろ?』
中学校に上がってからはこの呼び方に落ち着いたんだよな。
『ねぇ、どう?似合ってる?……もう、ちゃんと答えてよハル君…』
『置いて行くなんて酷いよハル君!』
『もー!ハル君なんてキ…キ……きら……し、知らない!何でもない!』
『うん!エヘヘ…わたしこそゴメンねハル君。」
『わたし、ハル君のことが好き異性として…』
茜との沢山の大切な思い出。
二人で一緒に過ごしてきた記憶。
『悠君?どうしたの?』
でも
『悠君!大丈夫?!待ってて、すぐ治すから!』
これは
『ねぇ悠君もし…この戦いが終わったら何処か静かな場所で暮らさない?…あ、でも桜花ちゃんはどうするんだろう?』
この記憶は…
『わたしね、
茜の知らない
『戦うことはまだ怖いけど…でも、悠君と一緒にいれるからそれも我慢できる。…これから先もずっと一緒にいてね?』
茜との記憶
『ハル君!』
あ…
ゆっくり目を開くと心配そうに覗き込んでる茜と目が合った。
夢…か。
「ハル君、大丈夫? どこか痛いの?」
「別にどこも痛くはないよ…なんで?」
「だって起こしにきたらハル君、泣いてるから…。」
自分の頬に触ってわかった、確かに泣いていた。
「じゃあ怖い夢でもみた?」
怖い夢…そうかもしれない、だってあの後
茜は…。
でも俺は首を横に振る。
「大丈夫。」
学校に行く準備をしないと…。
「嘘。」
ベッドから降りようとしたら茜に抱きしめられた。
「そんな顔で 『大丈夫』なんて説得力ないよ。」
「ごめん…。」
茜の背中に手を回す。
「少しだけこのままで…。」
「うん……えへへ…。」
「茜?」
「あ…ゴメンね、こうやってハル君が甘えてくれたり頼ってくれるのが嬉しくて…。 わたし、いつも助けてもらってばかりだから。」
そんなことない。
「俺はいつも茜に助けられてばかりだよ。」
「じゃあ、おあいこだね。」
そっか…そうだな。
「ありがとう、茜。」
「うん…。」
それはそれとして、だ。
「茜。」
「そうだねハル君。」
俺が部屋のドアを開けるとやはり正座をした両親がそこにいた。
「いや…あのですね悠人さん、これには深い事情がですね…。」
「他の二人は?」
「え?」
「さっきまで茜の両親もいたよね?」
「さっきまでというか…今もここに…。」
茜の両親はドアの死角となってる所で正座していた。
目のハイライトの消えた茜が二人の前まで歩いていって圧を放っている。
「それでいつから?」
「え?」
俺の質問に間抜けな声をだす親父。
「どの部分から見てた?」
正直どの部分からでも恥ずかしいが…
しかし俺のこの質問に正座してる4人ではなく茜がビクッと反応した。
ん?茜?
「ああ、それはだな「だめっ!」『うへへ…ハル君の寝顔可愛い……あ、そうだ写真に写して、と。ハル君コレクションが捗るなぁ……じゅるり。 いけない涎が…昨日は折角久しぶりにハル君とキスできそうだったのを邪魔されちゃったし、いっそ今ここで…。あ、やば起きそう。ハル君!』って所からだ。」
……………………。
親父の気持ち悪い茜のモノマネが終わってから、30秒ぐらい頭が思考を拒否してた。
茜さん?
茜は顔を真っ赤にして涙目になりながら「ち、ち、ちがっ…違うの!ご…ごかっ、誤解なの!」
と、
結局親父達は仕事に遅刻して俺と茜は学校に遅刻した。この勝利者のいない…と、いうか俺という敗北者を生んだだけの痛ましい事件は幕を閉じた。
俺の心に決して癒えない傷を残して。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます