的確に心を折りにくる系 幼馴染み


「ねぇハル君。」


 学校からの帰り道。


「ん、どうした?」


 茜と手を繋ぐタイミングを見計らってた俺に茜が話しかけてきた。


「今日のお昼、戻ってくるのが遅かったけど何してたの?」


 う…やっぱり聞いてくるよな…うーん、変に誤魔化しても怪しまれるだけだし、ここは素直に答えるべきか。


「人蔵さんと話してたんだ。」


「人蔵さんて…朝助けてくれた人だよね? ハル君の知り合いだったの?」


「顔見知り程度のね。」


 茜は ふーん… と言って何か考えてるようだった。


 因みにここで 友達なんだ、 などと答えると余計に疑われることになる、なんといっても茜は俺の交遊関係を全て把握している。


 そもそも高校に入ってから友人なんて一人もできてないからな。…いや別に寂しくはないからな?


「茜? 」


 さっきからずっと考え込んでる茜に話しかける。


「ハル君に新しい友達が…でも女の子か…しかもあんな可愛い…でも折角の…。」


 茜は何やら真剣な顔でブツブツと呟いている。


 あれ? これもしかして茜に交遊関係で心配されてる?


 自分の彼女に ぼっちであることを心配されるのって何か辛いんですが…。いや待てよ? (こんなに可愛い)彼女がいても『ぼっち』は適応されるものなんだろうか?


 ……いやまぁ、どうでもいいか。


 重要なのは俺の横に茜がいるという事実。


 こういうクサイの恥ずかしくないのかって? 恥なんて異世界グレセアに捨ててきたさ。



 あ、そういえば俺も気になってたことが。


「今日の昼に文芸部の顧問に呼ばれてたのって、どんな用事だったんだ?」


「え?!あー…そのぅ……ええと…。」


 茜は言い辛いのか、少しの間こっちをチラチラ見ながら恥ずかしそうにしていたが。


「えーと…ね。」


 諦めたのかぽつぽつと語り始めた。


「文芸部で今度、部誌を作るんだけど…。」


 部誌って文芸部が不定期で発行してるあれか。


「それに載せる小説をチェックのために先週 提出したの。」


「それって茜が書いたやつ?」


「うん。」


 ほほう、これはチェックしなければ…。


「でも、今日呼ばれた時に、これはちょっと載せられない って言われちゃって、代わりに何か書くかどうか聞かれたの。」


 なんだと…茜の小説を載せないとは一体どういうことだ。


「成る程…因みにどういう内容だったの?」


「家が隣同士の幼馴染みの恋愛小説を…。」


 ふむふむ、親近感のわく設定だな。


「二人はずっと想い合ってたんだけど、お互いなかなか素直になれなくて…。」


 うんうん、それで?


「けど中学三年の時に、男の子の部屋でとうとう女の子の方から告白をするの。」


 うん……うn?


「男の子はその告白を受け入れて、めでたく二人は付き合うことになるんだけど。」


 おかしいな…何故だかわからないけどその先が分かってしまうのだけど。


「男の子はラノベなんかの影響で自分のことを『陰キャ』だとか『ぼっち』とか言い張って。」


 何処かで聞いたことある設定だなー。

 気のせいかなー。


「で、男の子はこんな自分と付き合ってるなんてバレたら女の子に迷惑が掛かるからって、付き合ってることは学校では内緒にしようって女の子に言うの。」


 全然気のせいじゃなかったわ。


「その小説にでてくる二人の名前は…?」


「え?『アカネ』と『ハルト』だけど?」


 茜ぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?


「頑張って書いたんだけど…やっぱり情熱と勢いで書いてたから読み辛かったのかな?

 ちょっと恥ずかしいな…。」


 恥ずかしがるポイントはそこじゃないよ?!


 そそそれっ…文芸部のせっ……先生に見られたのかぁ?!


 俺は膝を地面についた、魔王相手にも膝をつかなかったのに…。


 うちの幼馴染みが魔王より強いんですが…


 この日は結局家に着くまで、茜と手を繋げなかった。なんだか悔しかったので夜に茜が俺の部屋に遊びに来ることになった。

 今日は思いっきりイチャイチャしてやる…。

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