戦場での信頼関係は日常では表現し辛い
桜花が召喚されたのは剣の国とも呼ばれるアガレス王国、数多くの名のある剣豪を生み出し、世界唯一の剣術学校のあることでも有名だった。
召喚されてから旅立つ一年の間に、アガレス王国の騎士団の団長を試合で倒した桜花の人気は凄いもので、数多くの有力な貴族や豪商に求婚され、一度街を歩けば沢山の市民が桜花を一目見ようと集まってきていた。
「で、結局なんでこんな場所に呼び出したんだ?」
「あぁ、一応お互いの連絡先を交換しておこうと思ってな。」
確かに、桜花とは何時でも連絡できるようにしといた方が良いか。
仕方ないとはいえ、三年以上一緒にいた相手の電話番号やメルアドを改めて交換するのって少し違和感があるな。
「そうだな、それじゃあアドレスを交換しようか。」
スマホを取り出して、画面に自分のアドレスを表示させる。
「そういえばメッセージアプリは入れてるか? 入れてるならIDも教えてくれ。」
メールするよりあっちの方が簡単だし、なにより 俺、茜、桜花 でグループチャットができたら嬉しいし。
(しかし今の茜に桜花のことをどう説明しようか…。)
「そのメッセージアプリ…? というのはどうやって入れるんだ?」
「やってないのか。 何なら俺が登録しようか?」
「あ…ああ!頼めるか?」
「………。」
俺達は魔王を倒すため長い間、一緒に旅をしてきた。
互いに背中を預け幾つもの死線を潜ってきた、信頼し信用もできる相手だ。
俺にとって桜花は共に命を懸けて魔王軍と戦った戦友だ、だから何かあれば助けたいと思っている。
しかし桜花は他人に頼るのが苦手だ。
だから桜花が困っていたら、此方からちゃんと助力を申し出るようにしてる。
だが
俺も流石にガラケーにメッセージアプリを入れることは出来ない。
少し嬉しそうにガラケーを俺に差し出してきた桜花に何故か罪悪感を感じた…。
(それにはメッセージアプリは入れれないと言えば、ガッカリするんだろうな…言いづらいわ……。)
俺は教室でため息をついた。
あの後 桜花に説明すると
「そ…そうか…。」
と、俺が考えてた以上にガッカリした桜花の顔に俺は心を痛めた。
安易にメッセージアプリなんて言った俺が愚かだったんだ…。
それでも俺の電話番号とメルアドを桜花の携帯に登録すると、桜花はそれを嬉しそうに眺めていたのが救いだった。
茜と桜花にはまた仲良くなって欲しいけど、無理に引き合わせるようなことはしない方がいいだろうな。
これは俺のエゴでしかないのだから。
そういえば茜は何で呼び出されたんだろう? 俺が教室に戻ってきたのは昼休みが終わる直前くらいで既に茜は教室で午後の授業の準備をしていた。茜より教室に戻るのが遅れた理由もどう説明しようか……。
午後の授業は全く頭にはいってこなかった。
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