つい昨日まで異世界にいたのに既に懐かしんでいる

「事情は知らないが、こんな公衆の面前でやりあうような 内容でもないだろう。」


 その黒髪の美少女はこちらに歩いてきながらそう言った。


 彼女は人蔵 桜花(ひとくら おうか)俺達とクラスは違うが同じ一年で剣道部期待のホープ、見た目の美しさに凛とした雰囲気に加え文武両道で男女問わず人気がある。


 途中こちらに視線をむけ、俺と茜が並んで(というか手を繋いだままだった)いるのを確認すると一瞬だけ優しげに微笑んだ。


 すぐ視線を正面に戻すと相良先輩が口を開く。


「ああ、桜花ちゃん 違うんだこれ「相良先輩何度も言ったでしょう、親しくもないのに下の名で呼ばないで下さいと。」」


 人蔵が相良の言い訳に被せるように言った。


 というか相良アイツ、人蔵にも馴れ馴れしくしてたのか…。


「そこにいる あか……地堂さんも同じなのでは?」


「いやそん「はい、わたしは貴方に名前で呼ばれたくはありません。」」


 今度は茜が被せるように拒絶した。


 おい相良アイツ凄い顔してるぞ…。


「…っ!…。 ふぅ…ああ、悪かったね二人とも。今度から気をつけるよ。」


 そう言って相良は去っていった。

 去り際に俺を睨み付けて…。


「あの…えっと、人蔵さんありがとうございます。助かりました。」


 茜が人蔵にお礼を言っていた。


 さて、どうしよう…俺も何も言わない訳にはいかないよな。


「人蔵さん、ありがとう助かりました。」


 その言葉を聞いた人蔵は


「ああ…。」


 不満そうに去って行った、そして去り際に俺の耳元で昼休みに体育館裏に来るように言った。昼休みはずっと茜と一緒に居ようと思ってたのに…。


 人蔵が登場して完全に空気だった俺に茜が


「ハル君もありがとう、嬉しかった。」


 でも、と続ける。


「心配だからあまり危ないことしないでね?」


「わかってるよ。」


 これ以上 茜を不安にさせたくないしな。


 しかし俺がこういう見た目だとまた変なのに絡まれそうだな…思いきってイメチェンするべきかな…?




 茜と教室に入ると(流石に手は離した)クラス中の注目を浴びる。多少居心地が悪いが、異世界の勇者お披露目パレードで王都中の注目を召喚初日に浴びせられた時に比べれば余裕よ。

 でもマジであれはないわ…皆良い人達だったけど、俺を永住させようとやたらグイグイくるんだよな…。



 茜も俺もお互い席につくと茜はあっというまにクラスの連中に取り囲まれる。


 何であんな奴と一緒に?

 脅されてるの?

 手を掴まれたって本当?


 質問攻めにあってる。しかもなんか俺の扱いここまで酷かったっけ?


 そんな時後ろの席の人間に話しかけられた。


「なあ、質問して良いか?」


「答えれることならいいよ」


「んじゃあ天川って地堂さんとどんな関係なんだ? まさか付き合ってるとか?…いやそれはないか」


 質問しといて答える前に勝手に結論付けるなよ。

 俺が茜と付き合ってると告げると後ろの席の角刈り(名前覚えてない)がやたらとオーバーに驚いて、そのことをグループメッセージで皆に流したらしく教室内(特に茜の席に集まってる奴等)が騒がしくなった。


 が、すぐにチャイムがなりHRが始まる前に皆それぞれの席へ戻っていった。


 まだ授業すら始まってないのにこれとは…。


 ……あ、どうでもいいけど後ろの席の角刈りは村崎って名前だった。(本当にどうでもよかった)



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