『暑苦しい男』

@sabamizuni-

『暑苦しい男』

頭がくらくらして、どうもまっすぐ歩けない。

額に汗を浮かべながら歩くが、厚着が体に重くのしかかり、進みは遅い。

暑苦しい。指がやけてくる。

誰かにぶつからないように気をつけて歩こうとしているが、膝の力が抜けて崩れそうになり、道路の脇の壁にもたれた。

仕事を休むために、携帯を取り出した。

手に汗をにじませ、体を揺らしながら電話をかけ、会社に休む旨を伝えた。

家に帰ろうと片手で頭を抱えながら歩く。

帰りの途中、広場で何かを浮かべて遊ぶ人影や近所で子供と老人が楽しく会話している。

カップルがなにやらイチャイチャしている。

学生達が叫びながら戯れている。

周りが浮ついている中自分だけが沈んでいるように思えてくる。

暑苦しい。胸がやけてくる。

帰って早々ため息をつき、服を投げ捨てて床に寝転ぶ。

惰性でテレビを流し、酒を用意する。

テレビから流れてくるのは、いつもとは違う番組が流れ途中では。

家族みんなで、美味しいカニ鍋!銀山温泉!美しい景色を見ることができます。

家族旅行のCMが間に挟まる。

足を伸ばし空き缶を蹴飛ばしながら、番組を変え歌合戦が流れた所で画面を切り替えた。

その後、ゾンビ映画のDVDを流し、車でゾンビの群れを蹴散らすシーンを見ながら酒をすすり、一服していた。

時間が流れ携帯を一瞥し、ハッとなり、酒を何杯か分からないが飲みに飲んだ。

眠気が襲い、ここからは永く眠れた。

あつ苦しい。喉が焼けてくる。

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