DQNに絡まれる
「こいつ誰?」とリーダーらしき男がイロハに声をかける。
「やばっ! こいつメッチャ陰キャじゃん」
「え? こういう奴がタイプとかヤバいでしょ」と取り巻きの連中が独り言のように口々に俺の悪口を言う。
「行こうか」俺はイロハに声をかけ立つように言う。ガタッっと椅子を引いて立ち上がる俺たち。
「ちょっとどこに行くんだよ!」とイロハの腕を掴むDQNリーダー。
「あ……あ……!」と声にならず戦慄した表情を浮かべるイロハ。
「おい! なにやってんだよ! やめろ!」俺は言う。
「お前には関係ないだろ! 俺はこいつに用事があるんだよ!」とリーダーは言う。こいつの名前は知ってる。成宮龍二……ナルミヤリュウジだ。
良くない噂ばかりの男だった。学食で働いているおばちゃんたちが俺達を見てまごまごしている。
「すいません! 絡まれてます! 人を呼んでください!」俺はその食堂のおばちゃんに言う。
おばちゃんは事情が分かったようで教員を呼びに行った。
「絡まれてますってお前」リュウジが俺の言葉に爆笑したように笑う。
「マジで陰キャだな。絡まれてますぅ。って」
クスクスと龍二の取り巻きが笑う。
これだけ囲まれてたらなにか出来るわけねーだろ。アホかこいつら。
「いい加減気持ち悪いなお前。いい加減嫌われてること察しろよ」
カチンときた俺は言葉に出して龍二に言う。
「あぁ? なんだお前!」龍二は俺の胸ぐらをつかむ。
「オイッ!」龍二が俺に詰め寄る。
「ちょっとなにやってんのアンタ!」食堂のおばちゃんが俺たちのところに来て叫んだ。
「あぁもうクソッ!」と言いながら龍二たちはゾロゾロと俺たちから離れる。
「大丈夫? あんたたち?」と食堂のおばちゃんが俺に声をかける。
「ありがとうございます。助かりました」俺は食堂のおばあちゃんに言った。イロハをよく見るとブルブル震えている。
すると龍二が食堂から出ていくのを待ってたかのようなタイミングで教師が食堂に入ってくる。
「どうした? トラブルか?」と体育教師が俺たちに言う。
「成宮龍二のグループが急に俺らに絡んで来たんです。いきなり囲まれて一色さんの腕を掴んだりで……もうメチャクチャですよ」俺は言った。
「そっかでも成宮はどこかに行ったんだろ? じゃあ解決だな」と教師は言った。
「は? 何言ってるんですか? なんにも解決してないですよ。メチャクチャ怯えてるじゃないですか。一色さん。いきなり不良グループに囲まれて怒鳴られる恐怖分かります? あんな奴らに怯えながら学校生活送るなんて恐怖ですよ!」俺は言った。
すると教師はクスッっと笑った。
「不安になりすぎだって。仕返しなんてないよ。あいつら見た目はアレだけど良いやつだから」と教師は言った。
「いや悪いやつでしょ。悪い奴だからあんな格好をして怒鳴ってビビらせて人を言いなりにさせようとしてるんでしょ! なんで加害者側の肩持ってるんすか!」俺は言った。
「いやでも、トラブルになったのはお前らの方にも原因があったんじゃないのか?」教師は苦しそうに言う。
「原因ってなんですか? 飯食ってただけですけど」俺は言う。
「ま、そのなんだ……」教師は苦しそうだ。
「なんですか? 原因って」俺は聞いた。
「いや……普通にしてたら絡まれることはないハズだろ。なにかお前らにも原因があったんじゃないか?」教師は言う。
「いや違うよ! 私見てたけどこの子らはご飯を食べてただけだよ! それを不良達がイキナリ取り囲んで大声で怒鳴って……震えてるじゃない。この子。可哀想に……」と食堂のおばちゃんが会話に割って入った。
「あぁ……」苦しそうに教師がうめく。
「先生あの……被害者をうまいこと丸め込んで事件をウヤムヤにしようとするのやめてもらっていいですか? それ本当に傷つきますよ」俺は言う。
食堂のおばちゃんがウンウンとうなずいた。
「いや……そんなつもりはない。誤解だ」教師が言う。なにが誤解だよ。駄目教師。
「あいつらを退学にしてくださいよ。マジで迷惑ですよ」俺は教師に言う。
「退学までは……ただちゃんと教頭には報告するから」と体育教師が言う。
「私らも本当迷惑してるんだよ! あいつらがいるおかけで他の生徒が怯えちゃって食堂に入ってこれないんだよ。食堂を自分たちのものだと思ってるんだよ!」食堂のおばちゃんは言った。
「あ….はい、分かりました」と苦しそうに教師は言う。
話が終わって教師は元気が無くなったように教員室に帰っていった。
「しっかしあんた勇気あるねぇ! あんな不良達に絡まれても物怖じしなかったもんね! 女の子守ってふざけんな! って感じだったもね。本当にカッコ良かったよ!」と食堂のおばちゃんが言う。
いや、褒めすぎだろ。俺は思わず照れ笑いする。
「ありがとうございます。おばちゃんも結構イケメンでしたよ」俺は言った。するとおばちゃんが笑った。
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