新垣との別れ

「ごめん。私人から距離感がおかしいってよく言われるから……悪い癖なんだ。一ノ瀬くん。ごめんね」

なんだか申し訳無さそうに新垣が言う。なんだか傷つけてしまったみたいだ。


俺達は無言になる。そして改札を通り駅のホームに再び戻った。ホームのベンチで少し距離を置いて俺たちは座った。正直俺は新垣に引いていた。新垣の性癖に……正直初対面がこれならもし付き合ったらなにをされるか……ただ新垣って結構可愛いんだよな。普段はよくうつむいていたが……なんだかその……俺を見つめてキャッキャッしてるのが……


「その……新垣は俺のことが好きなの?」俺は聞いた。

「うん……」新垣はこっちを見ずにうなずいた。


「ごめん。俺……正直引いちゃってさ……新垣って大人しい奴だと思ってたから、新しい一面を俺に見せてくれて……正直ビックリしたよ。でも魅力的だったよ。新垣の笑ってる顔。正直可愛いと思った」俺は落ち着きを取り戻し笑いながら言った。新垣もクスッっと笑った。


「でも俺好きな人がいて……」俺たちの間に流れている空気が明らかに違う空気になる。


「うん……」新垣は黙り込む。


「だからごめん。新垣。新垣とは付き合えない」俺は言った。

「うん……そっか……」新垣は伸びをする。


「しょうがないよね。好きになるのって止められないから」新垣はなんだか声が震えている。


「ありがとう」と言ってまた新垣は顔を隠しながら笑顔で言った。

「お互い無かったことにしよ。今日のことは。二人だけの秘密でデータも消して。10年後ぐらいなら人に喋っていいよ。高校生の時にこんな体験したって」新垣はそう言って笑う。


「あぁ」俺もその笑顔につられて笑う。


「只今参ります電車は〇〇方面〇〇行き。お乗りのお客様は1番口乗り場でお待ちください」アナウンスが流れる。


「じゃあ私こっちだから」新垣は笑顔で言う。

「え? そっち学校と真逆の方向だけど……」俺は言う。

「うん。今日は疲れちゃったから学校は休む。一ノ瀬くんは学校に行って」笑顔で新垣が言う。


「あぁ……そっかじゃあ」

ガタンゴトン……プシューと電車が到着して扉が開いた。


「バイバイ」と新垣は俺に手を振って俺と別れた。ガタンゴトン……電車が動き出す。

俺は時計を見た。いつの間にか時間は午前10時半になっていた。

「やれやれ遅刻だな」俺は一人呟いた。


「あっ……あっ……」電車内で声を殺して泣き出す新垣。だがその光景を主人公である一ノ瀬は知らなかった。


俺は遅れながら学校に向かった。そしてガラッ! 俺は教室に入る。俺はどうせ遅刻ならと昼休みまで時間を潰して教室に入った。

「おう! 純!」クラスメートのシシオが俺に声をかける。こいつの名前は東雲獅子雄。シシオと俺は呼んでいる。

「遅刻したなお前。どうせ夜遅くまでオナニーしてたんだろ!」と俺にシシオが言う。するとシシオたちのグループが笑った。


「ちげーわ。お前だろ。それは」俺はシシオに言う。おいおい教室に女子もいるんだぞ。話題考えろよこいつ。


「純ってそんなことしないよね」クラスメートの莉子……リコがそう言う。リコは女だが俺たちとよく遊んでいた。気心を知れる仲間ってやつだ。


「そんなことってなんだよ」俺は言う。

「だからそれは……あのっ……」リコは言葉に詰まって赤面する。


「お前っ! やるな。ジュン。自然な流れでセクハラしたな」シシオは笑う。

「えーーヤダーー」朱莉……アカリとリコはハモりながら言った。

「いまハモった!」と笑いながらアカリとリコは顔を見合わせてキャハハと笑った。


「あの……セクハラなんてしてないからな。変な言い方するなよ。シシオ」俺は言った。

「ジュンくんが好きなのは二次元の女の子だもんね」とアカリが言う。


「違うって。あれは親戚のスマホがたまたま手元にあったんだって」俺は言い訳をする。するとシシオたちはさらに爆笑した。


「なんだよその親戚。ま、そういうことにしといてやるか」とシシオは笑いながら言う。


「で、ジュンって三次元の女の子なら誰が好きなの?」と突然猫丸……ネコマルが聞いてきた。急に話題を変えられたので一瞬静かになる。こいつイキナリなに言ってるんだ?

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