多目的トイレ
「全然知らないところだね」新垣は改札から見える景色を見て言った。
「あーーこのスイーーツのお店行ってみたかったんだ。この駅の近くにあったんだ。二人で行こうか」と駅に貼られた広告を見ながら俺に聞いてきた。
「新垣……」俺は言う。
「あ……でも10時からだって。しょうがないからそこらへんで時間潰して……」新垣は興奮気味でまるで俺の聞いていなかった。
「新垣!」俺は言った。新垣はビクンとしたように驚いて俺を見た。
「どうしたの? 一ノ瀬くん」新垣は言った。
「どういうつもりだよ。なにがやりたいんだよ」俺は言った。
「あっ! 一ノ瀬くん。ズボン破けてるよ。膝のあたり。コケたときに破いたんだよきっと」
新垣が言う。
「話をそらすなって! 俺はなんでこんなことをするんだよ! もう無茶苦茶だよ!」俺は言った。
「嫌だ」新垣は言った。
「え?」俺は言う。
「嫌だ。ここじゃ話せない。一緒にトイレに行こうよ」と新垣が言う。え? どういうことだよ。パニックになっていた俺は新垣に促されるまま、歩いていく。
そして、俺たち二人は駅の近くの多目的トイレに一緒に入った。
「ほらズボンここで直してあげる」と新垣は言う。
「え?」俺は言った。
「だからズボンごめんね。私のせいだから。だからここで糸と針で直してあげる」新垣は言った。
「え? あ……」もうなにがなんだか……俺は振り回されっぱなしだった。もうどうにでもなれ。俺は靴を脱ぎズルリと新垣の前でパンツ一丁になった。
「うん。男らしい。私便座に座って縫い物するからそこで立ってて」そう言うと新垣は便座に座りカバンから縫い物セットを取り出した。そして黒いあて布を取り出して器用に縫い物を始めた。俺はそれを立ちながらボクサーブリーフ一丁で見ていた。
「どういうつもりなんだよ」不機嫌な様子で俺は聞いた。縫い物をしながら新垣は答える。
「えっなにが?」新垣は縫い物に集中しながら言う。
「だからなんであんなことをしたんだよ」俺は言った。
「……一ノ瀬くんも私と一緒だと思って」新垣が言う。
「え?」
「ほら、一ノ瀬くん。スマホの中身、学校中のみんなに見られたじゃん。あれ私も見てたんだよね。一ノ瀬くんと私って趣味が合うなって思って。私もあのエロ同人誌好きなんだ。なかなか趣味が合う人がいなくて、やっと見つけたって思って」新垣が言う。
なんなんだその理由は……俺は思った。
「え? エロいことの趣味が合ったからってこと?」俺は言った。
「うん」恥ずかしそうに新垣が言う。
「私昔からエロいことに興味があって。でも男の人ってガツガツして怖いじゃん。一ノ瀬くんっていい感じに陰キャ入ってるんで安心だなって思って」新垣は悪びれもせずに言う。いやどういうことだよ。
「エロいことって……」俺は言う。
「うん昔からエロいこと……いたっ!」新垣が叫ぶ。どうやら指を針で指したようだ。新垣が俺に血がぷっくりと出た人差し指を見せつけてくる。
「一ノ瀬くん。舐めて」新垣はからかうように言う。
「え?」俺は驚く。一体どういうことだよ。新垣……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます