人生終わりですよ?
「でもっ」俺は言う。
「でもその女の子の攻略に失敗したら」俺は言った。
「バットエンドです」老婆は言う。
「えっ?」俺は驚く。
「一生分のモテ期がドーーンとくるのでこの機会を逃したら一生彼女が出来ません。結婚も出来ず一生独り身です」老婆は言う。
「いやでも今のご時世独身は当たり前だし、それがバットエンドなんて言い過ぎですよ」俺は苦笑いしながら言う。
「それだけじゃないです。殺されます」老婆は言う。
「えっ?」俺は聞く。
「そりゃそうでしょう。多くの女の子があなたのことを好きになる。それを無碍に扱ったら殺されるのは当たり前じゃないですか」老婆は言う。
「えっ?……どういうことなの」俺は青ざめながら言う。
「じゃあ途中で気が変わって神楽坂意外の女の子が好きになったら?」俺は聞いた。
「殺されます」老婆は言った。
「え?」俺は聞く。
「そりゃそうでしょ。多くの女の子の中から一人を選んだら嫉妬で他の女の子に殺されるでしょう。あなたにはハーレムエンドしか未来はないんです」老婆は言う。
「なんだよそれ……」俺は聞く。
「それでは死なないように頑張って下さい! それでは!」と老婆が言う。
「えぇちょっとちょっと!!」このままじゃ現世に戻される。あれ?
「すいません。現世へもどる道はあっちなんで歩いて戻ってもらってもいいですか?」老婆は言う。
「自分で歩いて帰るのかよ! 気がついたら現世に戻ってるんじゃねぇのかよ!」俺は言う。俺はしぶしぶ老婆の指さした方に歩いていく。俺は振り返り言った。
「てかお前誰なんだよ! なんでお前が予言するんだよ!」と俺が老婆に言うと老婆は気まずそうにニヤニヤ笑っていた。
◇
ガタンガタン……ハッ! 俺は意識を取り戻した。ここは女性専用車両の中……俺の右手は新垣沙耶の胸を触っていた。周囲からヒソヒソ声がする。
えっ? 痴漢してる?
胸を……
女性陣がこっちを見ながらヒソヒソ会話をしている。
バッ! 俺は新垣の胸から自分の手を離した。
「なにするんだよ!」俺は言う。
「だって一ノ瀬くんってみんなからセックスビーストって呼ばれてるんだよ。だからいいじゃん」新垣は笑いながら言う。
セックスビーストってなんなんだよ。そのあだ名。妙にカッコイイじゃねぇか……いやいや、最悪だろ。名誉毀損もいいところだろ。
ヒソヒソ周りの女性から声が聞こえる。
「付き合ってるのかな……」
「いやでも駅員さんに言ったほうが……」
口々に俺のことを話してるんだろうと思われる声が聞こえる。新垣が俺の胸の近くに顔を寄せて見上げながら言う。
「一ノ瀬くんヤバいですよ。早く僕たち彼氏彼女ですって言わないと人生破滅しちゃいますよ」と新垣がおかしそうに笑う。
え? なに? これは……どういう状況なの?
ヒソヒソ女性たちの声が聞こえる。まるでさざ波のように聞こえるか聞こえないかくらいの声で話している。俺は頭が真っ白になる。
俺はどうすべきか……周囲に新垣が痴女だとアピールすべきか……
「この人が俺の手を勝手に胸に持っていったんです! 僕は被害者です!」その通りだ。悪いのはこんなことをする新垣だ。
こんなお遊びには付き合ってられない。
「いい加減にしろよ。新垣。痴女はお前だろう。被害者ヅラするのはやめろ」俺は新垣に聞こえるくらいの声で言う。
「そんなことしたら私死ぬから」
と俺の胸を見ながらボソッと新垣は言う。本気でなんなんだこいつは。
「あの……大丈夫ですか? なにか困ってますか?」
若い女性が新垣の方を見て声をかけてくる。その若い女性は全くといっていいほど俺の方を見ずに無視していた。
「えっ? あの……」新垣は困ったようにうつむく。
「いや……違うんで……」
「なにかされてるの?」若い女性は俺の言葉を無視するように遮って新垣に話しかける。は? なんだこいつ。無視しやがって。どうすりゃいいんだよ! 俺は!
◇
面白かったら★ブクマハート!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます