女性専用車両
周囲からまるで銃口のように女性たちの視線が突きつけられる。冷や汗が滴り落ちる。
「一ノ瀬くんの股間を他の人が見たらやばいことになるね」と笑いながら新垣は言った。たしかに、俺はスマホで見た新垣のあられもない姿を見てギンギンになっていた。外から見ても分かるくらいまぁ……その……それの形が浮き出ていた。
それが見つかったら俺は完全に変質者扱いだろう。俺は両手で股間を隠そうとする。
「ダメっ!」っと新垣は股間の膨らみ隠そうとする俺の手を遮る。しばらく俺は新垣と俺は股間を隠すか隠さないかの攻防でバタついていた。
むにゅん。
そして俺の手にマシュマロみたいに柔らかい感触が伝わった。あ……終わった。
なんと! 俺の右手は新垣の左胸を触っていた。新垣は俺の手を自分の胸に持っていったのだ。俺の手が新垣の右胸を揉むような格好になっている。女性専用車両で!
傍から見たら女子高生に痴漢している男子高生だ。しかも女性専用車両で!
俺は頭が真っ白になる。一瞬意識を失う俺。気がついたら俺は三途の川にいた。
「純や……純……」老婆のような声が聞こえる。聞き覚えるこの声。これはっ!
「おばあちゃん!」俺は声の主の方を見た。
そこにはピカーー! っと光り輝くおばあちゃんがいた。
「大きくなったなぁ。ついこの前までは小さな子供だったのに。こんな大きくなって」涙ぐみながらおばあちゃんの霊は言う。
俺は泣き出した。
「ごめんなさい! おばあちゃん! ごめんなさい! 僕痴漢しちゃいました! クラスメートの胸を揉んじゃったんです!」俺は言う。
「済んでしまったことは仕方ない。なんとか示談金を払って被害届を取り下げてもらいなさい」なんだか生々しい内容のことをおばあちゃんは言った。
「なんだか生々しいな」俺は言う。
俺は涙を拭っておばあちゃんを見た……え? 誰この人おばあちゃんじゃない!
「あんた誰だよ! おばあちゃんじゃないじゃないか!」俺はおばあちゃんだと思っていた見知らぬ老婆に言う。
「おや覚えてないのかい。私は坊やが小さいときによく遊んでいた……ところをジョギングの通りすがりに見ていた人だよ」とその老婆は言う。
「いや、全然関係ないじゃん! ただの通りすがりの人だろ! それとババアなんだからジョギングなんて無理するなよ!」俺は言う。
「いや、ジョギングは健康維持のためで、ちなみに死んだ原因は走ったあとの疲労骨折でそのまま……」老婆が言う。
「ジョギングで死んでんじゃねーか! 死亡原因ジョギングだろ! 適度な運動にしとけよ! もう死んでるけど」俺は突っ込みを入れる。
「お前に伝えたいことがあってのう。お前の未来に悪いことが起きるんじゃ」老婆がそう言う。
「え? 悪いこと?」俺は聞いた。
「あぁ。実はな。2020年の東京オリンピックなんじゃが、謎のウイルスによって延期……」
「いや! 全員知ってる! 全員知ってる! 東京オリンピック延期全員知ってるから! 知らない奴いないから! 全世界の人間に周知の事実だから!」俺は怒る。
「じゃあ謎のウイルスの正体も……」老婆が俺に聞く。
「あぁ新型コロナウイルスな。知ってるよ」俺は言った。
「そうか。いい事を聞いた。じゃあ他の人にも教えて欲しいんじゃ」老婆が言う。
「だから! 全員知ってるって! 全員知ってるの! 教えてもらう必要ないの! 知らないのは未開の地に住んでいる人たちだよ!」俺は言う。
「じゃあその人たちとに直接行って教えてあげないと!」老婆が言う。
「直接行くんじゃねぇよ! ウイルス拡散されるだろうが! 医療体制も整ってないから全滅になるわ! なにもするな! お前は!」俺は怒る。
「でも、純や……あなたに学校に好きな人がいますね。片思いの相手が」老婆はそう言った。
「えっ? あ……」俺は思い浮かべた。神楽坂唯。学校内一位のの美少女。俺は高校に入ったときから神楽坂のことが好きだった。
「神楽坂さんですね。あなたその子と付き合って結婚する運命です」老婆はそう言う。
「えっ? 本当?」俺は聞く。
「はい、ただそのために多くの女性と恋に落ちる必要があります。今あなたが胸を揉んでいる新垣さんもその一人です」老婆はそう言う。
「え?」俺はそう言って新垣の胸の感触がまだ残る右手を見た。
「あなたは人生においてこれ以上にないレベルのモテ期になるんです。色んな女の子があなたのことを好きになります」老婆はそう告げた。
「え? でも俺神楽坂さんと結ばれる運命なんですよね。他の女の子にちょっかいかけたら神楽坂さんに嫌われるんじゃ」俺は心配になってそう言う。
「大丈夫です。女ってのは一途な男がいいと言いながら周りの女性からモテモテな男が好きな生き物なんです」老婆が突然の女性差別発言をした。
「うおっ……突然の女性差別発言……」俺は言った。
「いわばこれは恋愛ゲームなんです。多くの女の子を攻略して、それで最後に裏ルート。神楽坂唯ルートが開かれるということです」老婆はそう言った言った。
「マジですか……じゃあハーレムがいわば合法なんですね」俺が言った。
「はい。ぜひハーレムエンドを目指してください」老婆は言う。
◇
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