新垣沙耶

「えっと……あの……君の……」

俺はこの子の名前を知らなかった。クラスにそう言えばいたかなってレベルの女の子。喋ったことが一度もない女の子だった。女子グループにも入れず特定の友達としか話さないような感じの女の子だった。だから俺が名前を知らなくて当然だった。


「新垣沙耶……アラガキサヤです」俺の言いたいことを察したのか女の子が答える。朝の駅のホーム。俺たちは二人でベンチに座りながら話をしていた。


「あの……感想は……すごくエロかったです。新垣さんのか……」

言いかけて、俺は思わず新垣沙耶の体を見る。それがスマホで見たセクシーな写真とリンクをする。それが……なんだかイメージが膨らんで俺の中の脳内では目の前の新垣はもうセミヌード姿だった。それが朝のホームにいる。脳内がその奇妙なエロ過ぎる感覚で満たされて大変だった。俺は股間がやばいことになってたので思わずくの字に前かがみになっていた。


「一応聞いときたいんだけどこの写真誰かに強制されて撮ったとかじゃ……」

俺は一応聞いておく。俺は童貞だからかも知れないが女の子がこんなエロい自撮りを撮るなんてありえないと思っていた。


「あのっ! 私が自分で撮りました。一部妹に頼んだりもしましたけど、ほとんど自分です」

……マジか……俺の中の女の子のイメージが崩れ去る。しっかし今の女子高生ヤバすぎだろ。自分で自分の際どいコスプレ写真を撮るなんてな。


「これ個人情報がバレないように修正してネットに上げてるんです。いっぱいイイねが来てうぉおおおおってなりますよ!」

と言って新垣は俺に笑顔で親指を立てる。


「新垣さんはエロいの好きなの?」

俺は聞いた。一体なにを聞いてるんだ。俺。


「私っ! BLとか好きで結構アニオタなんです。アニメの女の子も好きで自分もその子みたいなりたいと思って。それに人からエロい目で見られるのって私あんまり嫌じゃなくて」新垣は恥ずかしそうにカバンで顔を一部隠しながらそう言う。


大丈夫なのか? この子。普通は男からエロい視線があったら「もう男子ー! 男子って最低!」って怒ってくると思うんだが。


「ところで一ノ瀬くん。なんで前かがみになってるんですか?」カバンで口を隠したまま新垣が俺にそう言う。


「え? あっ……それは……」チンチンがギンギンだなんて言えないだろ。こいつそんなことも分かんないのか。そりゃ立つだろ! この異常なシチュエーションじゃ!

「電車が来たらすぐにダッシュできるように若干クラウチングスタート気味にしてるんです」俺は言った。


「電車がきたら……」新垣は俺の渾身の回答がよく分かってないみたいだ。

「でも、一ノ瀬くん……あっ! そうか」と言いながら新垣は察したように顔を真っ赤にする。新垣は恥ずかしいのか顔を指で隠したり、身悶えするように顔を左右に振ったりしている。


「やーーもう!」

と言いながら右手で俺の肩をはたいた。そしてカバンで目から下を隠して言う。

「一ノ瀬くんってヘンタイですね」と。


「違うって! 誤解するなって!」

俺は体を前かがみから座高の高さが測れるくらい真っ直ぐか姿勢に戻した。気合だ! なんとか血液の集中をやめろ! 俺は股間から全身に血液が流れるイメージをする。


カシャ! と突然音がした。え? 新垣がスマホのカメラで俺を撮っていたのだ。

「ちょっと!」俺は怒って新垣のスマホを取り上げようとする。一瞬新垣と俺がイチャイチャしながらスマホを取り合うような状況になる。

「キャーーー!! 助けて!」と言って新垣は笑いながら俺の手を振りほどく。周囲のサラリーマンたちが何事かと俺たちを見ている。俺は自分の手を止めた。


「ハァハァ……くふっ」と息を切らせ笑う新垣。

「駅のホームで大きくしてる人」と言いながらスマホの画面を俺に見せてくる。そこには俺が顔を真っ赤にしながら股間を妙に膨らませている写真だった。やられた。俺は思った。


「一ノ瀬くんって私の体で興奮するってヘンですよ。ヘンタイですよね」と新垣がからかうように言う。一体これからどうなるんだ……


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