第三部 イプ=スキ戦争編

第20話 物語の舞台など-2-

【時代区分など】

 古王朝時代からファレス王朝の時代に移り、更にファレス王朝が衰退してから久しい。

 現代は大陸に住む多くの者から「ファレス王朝(秋時代)」と呼ばれている。王朝の勃興期が「春時代」、最盛期が「夏時代」で、現代が「秋時代」という事である。

 衰退期である事を意味するだけでなく、その後に滅亡を思わせる「冬時代」が来る事を意識させる名称なので、王朝自体はこの呼び方を嫌っており、認めていないが、いつしか完全に大陸に生きる者達に定着した名称となっている。

 歴史用語としても定着しており、歴史上の事件を「晩夏の変」と呼んだり、「初秋期の王」などの表現が歴史書でも使われている。


【ファレス王朝と古王国の魔道具】

 ファレス王朝は、魔道技術文化が最盛期を迎えていた「古王国」の継承政権であると伝わっている。

 時代を経て、次第に魔道技術や知識が失われ衰退しつつある状況でも、ファレス王朝には古王国時代の魔道技術が比較的高い水準で伝承されている状況であった。周囲と比べれば突出した魔道技術、そして古王国から伝わる様々な魔道具の力で、周辺諸侯を制して大陸で王権を確立し、「晩夏の変」による失墜までは、大陸全土を支配下に持つ統治政権としての立場を長きに亘って保持していたのである。


 長い時を経て、ファレス王朝内でも魔道技術のレベルは次第に、そして確実に低下しており、様々な政争・内訌なども経て王朝の支配領域は狭くなっていった。

 魔道具や魔道兵器にエネルギーを供給する「魔光石」の鉱脈に関する知識が失われ、枯渇気味になっている事も一因であると言われている。

 しかし、それでも王都には、近づく敵対勢力を焼き尽くす魔道兵器が遺されているなど、魔道技術に一定の優位性が保持されていることから、王都の陥落や王朝滅亡までには至らず、名ばかりの権威とは言え、王朝は現代も存続しているのである。


 古王朝から伝わる様々な「魔道具」と言われるマジックアイテムは、現代の魔道技術ではほぼ作る事ができないものである。

 これら魔道具は王朝や各諸侯に伝わっており、代々継承する形で、王家の者や貴族の子孫が所持している事が多い。また、彼らから散逸したり、古王朝時代の遺跡から発掘された物は市井にも流れており、このルートで冒険者や一般人が手にできる可能性もある。



【冒険者たち】

 主に人間の街を中心に冒険者ギルドが存在しており、登録された冒険者はランク付けされて様々な依頼や冒険を行っている。

 隊商の護衛からゴブリン退治、ダンジョン探検など冒険者が挑む依頼は様々である。


 実力を持ち、ランクの上がった冒険者は「二つ名」付きで呼ばれる事が多い。概ねAランク以上の冒険者が該当する。


 最上級の冒険者はSランクであるが、この水準に到達する者は数える程しかいない。この時代のファレス大陸では、S級ランクの冒険者は7名おり、「七英雄」と呼ばれている。

 冒険者のランクは、基本的には実力によって決定するのであるが、「七英雄」はいつしか数が固定され、その時代時代の「最強の冒険者7名」がその座に就く様になっている。その座を巡っては、継承や力での強奪など、様々なドラマが繰り広げられている。



【大陸南部の状況】

 本作品の舞台、大陸最南部の「火の国」は、長い混乱の末に、人間諸侯の力が及ばない「無主の地」となっており、ゴブリン諸部族が勢力争いを行っている。

 「火の国」の中には「灰の街」「カイモンの街」など人間の街も存在する。彼らは諸侯の支配を受けておらず、自治を行っている。

 現代においては、基本的に彼ら自治都市とゴブリンたちとの対立は無く、交易を行う関係となっている。


 「火の国」の北側には、東側に「日登りの国」と西側に「後ろの国」が隣接している。

 「日登りの国」もゴブリンが割拠する「無主の地」であり、カチホ族、オシマ族、タゴゥ族、マユラ族等多数の部族が割拠している。

 「後ろの国」は王都のある「中の国」に隣接している事からこの名称で呼ばれている。このあたりは人間諸侯の勢力圏であり、様々な諸侯が割拠しているが、近年はタヴェルト侯が勢力を伸ばし、地方の大半を制圧している。


【文字について】

 長い歴史を経過した結果、大陸で話されている話し言葉については(方言レベルの違いはあるものの)共通語としては、概ね変わらない状態となっている。

 しかし、書き文字については地方によって異なる。

 人間社会の中心では「都文字」が用いられており、大陸の共通語的な扱いとなっている。

 本物語の中心である「火の国」地方の人間たちの間では、「はやぶさ文字」が一般的に使われている。

 また、ゴブリンたちの中では「ゴブリン文字」が使われている。

 ゴブリンたちの識字率は低めで、大人のゴブリンが「ゴブリン文字」を読める程度である。上級のゴブリンは人間たちの文字も読むことができる。


 本物語の主役、リリは幼少期から書物に親しんでいたことから、「ゴブリン文字」に加え、「都文字」「はやぶさ文字」および他他方の文字数種を読み書きする事ができる。

(ヘルシラント族の中では、リリと同様の語学知識を持つのは、アクダムとコアクトの2名のみである)

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