青の電話
昼休み。
屋上で俺は
霊媒師の父親の都合で日本中あちこち渡り歩いている最中の中学一年の頃、白昼夢を見た。
顔は髪で隠されて真っ青なワンピースを着た女性が出てきたかと思えば、いつの間にか青の電話を背負わされていた。
女性は呪いだと言った。
青の電話が見えるのは君と共にこの呪いを解ける相方だけ。
全国各地、星の数ほどの、とある風景が君の視界に入った時、音は一分間鳴るだろうが、相方がいなければ、また、十円玉を入れなければ電話を取ることはできない。
電話を取って、要求を叶えた時、呪いは解けるだろう。
(こいつ、やるな)
乱雑に切られた短髪、俺に負けず劣らずの目つきの悪さ、ゆとりのある身のこなし、高校一年生にあるまじき、貫禄。
僅かに気合を入れなければ、真っ直ぐ瞳を見つめられない。
「こいつ寝る時だけ具現化して仰向けん時、背中も首も頭もいてーんだよ」
俺は青の電話を親指で指しながら言った。
最初はうつ伏せか、横向き、座の姿勢で眠っているのだが、いつのまにか仰向けになっていて、安眠とは程遠い生活を送っている。
「だから、早く解きたいんだよ」
「星の数ほどある、とある風景って何?」
「紫の花と何かの店」
「ちょうどいいわ。私んち、修理屋と花屋だから。放課後に行きましょうか」
「放課後なんてたらくせえ今すぐ行くぜ」
「放課後に行きましょうか」
(何なんだこいつは)
こんなに真っ直ぐ瞳を。いや。全部を見返してくるのは、父親くらいだってのに。
「いいかしら?」
こいつに協力してもらわねーと安眠できないから仕方なくだ。
己に言い聞かせて、わかったとぶっきらぼうに返した。
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