青色の電話

藤泉都理

0円






 転校生の足永陽成あしながにちなりさんだ。

 どうも足永陽成ですよろしく。

 担任から紹介された男子の、見事な丸坊主よりも、目つきの悪さよりも、への口よりもくぎ付けになったのは、彼が背負う公衆電話機だった。

 ボックス公衆電話機の、緑色ではなく青色の電話を背負った足永が私と視線が合うなり、親指で青色電話を指しながら外せと怒鳴り歩き、距離を一気に縮めてきた。

 なんだなんだと、ざわめく級友。

 知り合いなら、あれこれ世話してやれよと放置の先生。

 では私も放置を。

 というわけにはいかないようで。


 歯噛みせん勢いで血走った目を向けてくる足永に、とりあえず席に着けばと、隣の席に掌を向けた。

 隣人はすでに担任の下に向かい、足永が持って来ていただろう机と椅子を私の後ろに運んでは座っていたのだ。

 まったく。仕事が早い級友である。







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