第47話 週刊少年なんたら

 「……え?」


杉原、今なんて…?



「だからぁ…私と付き合ってって言ったの。」


……夢?



…じゃ、ないよな。


じゃあ…なんで…



「ダメだよぉ!結衣ちゃん!!」


この静寂を破ったのは星乃だった。


「びっくりしたぁ。雫ちゃん?何か勘違いしてない?」


「…え?」


いや、星乃の反応が正しい。


俺も、マジ分かんねぇ。


「今のは杉原の言い方が悪かったよ。隼斗と星乃が勘違いするのもしょうがない。」


「あ…当たり前だろ!こんな面と向かって…、私と付き合ってって言われたらよぉ…」


克樹は何か知ってるみたいだな。


…ってことは、


それと同時に、ぬか喜びだったってことが確定しちまったじゃねぇか。


「ごめんごめん。私の言い方が悪かったね…。そういう意味で言ったんじゃないんだ。」


なんだよ。

当たり前だけど…がっかりする。


「付き合ってって、どこかにってこと?」


「そうそう!雫ちゃん正解!」


なんだよ正解って。


クイズじゃねぇんだからよ。


「それならそうと早く言ってくれよなぁ。」


一瞬でも、期待しちまうじゃねぇかよ。


「なんだ隼斗。ちょっと期待でもしたのか?」


「う…うるせぇぞ!克樹!お前は知ってたから分かんねぇかもしんねぇけどな…」


「そうだよ!ひどいよ、千葉くん!」


…あれ?


なんで星乃がここまで怒ってるんだ?


「ごめんごめん。明日ね、文化祭で使う小道具の買い出しを頼まれちゃってさ。一緒に来て欲しいなと思って。」


なんだ…そういうことか。


やっぱ文化祭関係かよ…。


「わかった。付き合うよ。」


「ほんと?ありがとうー!助かる!」


「千葉くんは明日行けないの?」


「俺は予定入っちゃってるんだ。」


「そっかー。」


星乃…


もしかして、ついて来たいのかな。


「お前も来るか?星乃。」


「…え?」


「二人より三人の方が荷物運ぶとき楽だろ?」


「いいの!?」


なんだ、そのキラキラした目は…。


わかりやすいやつだな。


「杉原…星乃も連れて行っていい?」


「うん!もちろん!」


「やったー!買い出し楽しみ!」


こいつはホントに幸せそうなやつだ。




 「それじゃあ明日、お昼に学校集合で!」


「おっけー!寝坊すんなよ星乃。」


「しないよー!ちゃんと目覚ましかけるもん」


「お昼だから大丈夫でしょ。」


「「あははは」」


やっぱ…こいつらといると楽しい。



 翌日


スマホの画面は、何度見ても十三時って表示されている。


俺のスマホが壊れたのか?


いや、そんなわけはない。


だって…


杉原はとっくの間に俺の横にいるんだから。



「雫ちゃん…遅いね。」


「あいつ…ホントに寝坊しやがった。」


何やってんだよ星乃。


昨日あれだけ忠告しといたのに。


てか、もう昼過ぎだぞ。


いつまで寝てんだ。


「ちょっと電話してみるわ。」


もしかして、何かあったのかな。


だとしたら、ちょっと心配だな。


「…どう?繋がらない?」



「……んー、出ねぇ。」




「……来ないんじゃない?」



「………そうかなぁ。」



「………どう?」




「………ダメだ。出ねぇ。」


電源入ってねぇのかな。


しょうがねぇ。

これ以上杉原を待たせんのも悪いしな。


「じゃあ行くか!」


「……うん!そうだね!」


もしかしたら、あいつなりに気をつかってくれたのかもな。


俺と杉原が二人きりになるように…



なわけないか。


あいつ…楽しみにしてたのにな。



「…佐野?」


たぶん、文化祭の買い出しとか、

行ってみたかったんだろうな。


「佐野!」


「うわっ…!びっくりしたぁ。」


「さっきから呼んでるよ?」


「あ…悪りぃ悪りぃ。ぼーっとしてた。」


「…気になる?雫ちゃんのこと。」


「え?…あー、いや…なんていうか。」


気になってたんだよな。


…気にしてた。


「あいつ…楽しみにしてたからさ。」


「…佐野。」


「変なやつだよな!誰よりも楽しみにしてたくせにドタキャンしたり、肝心な時に居なかったりしてさ…。」


ほんと…なんなんだよ。


「…むかつく。」


「…むかつく…か。」


「あ、いや…杉原に言ったんじゃねぇぞ?」


「あはは…分かってるよ。」


「星乃のことだ。あいつは、週刊誌の漫画みたいなやつだ。」


「どういうこと?」


「期待させておいて、続きは次の週に持ち越しさせるんだ。読み手側を焦らすような、こう…気持ちをモヤモヤさせるんだ。」


なんて言えばいいのかな。


杉原に伝わるかな。


「杉原は週刊誌とか読まないか。」


「要するに…続きが気になって、早く次が読みたい!って、待ちきれない気持ちになるって事だよね?」


「そうそうそう!それそれ!良かったー、伝わんねぇかと思ったわ。」


今の例えは無しだと思ったから、

なんかスッキリした。


「雫ちゃんのこと、気になってるんだよね?」


「そうそう!星乃の事が気になっ……」


……


「…えっ?」


杉原……



俺…



「佐野はさぁ…多分だけどね。週刊誌のなかで沢山連載されてる漫画の、「星乃雫」っていう漫画が好きで…いつも続きが気になって待ちきれないんじゃないかな?」



「……。」


「一番良いところで終わっちゃうから、モヤモヤするし、離れられなくなるんだよ。きっと。」



なんだよ…その例え。



言葉が…


何も浮かばなかった。

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