第45話 出し物
教卓の上に飾られた、二つのトロフィー。
これは、体育祭で俺たちが勝ち取った優勝の証だ。
「みんな、先日はご苦労だったな。おかげで、こうして一組は男女共に、クラス対抗リレーで一位を取る事が出来た。」
結局、女子の方は圧勝。
ダントツ一位で優勝した。
杉原を応援するまでもなかったな。
「そして先生はこのリレーで、ある賭けをしていた。」
「先生ー。賭け事は教育に良くないっすよー」
「「あははは」」
「まぁそう揚げ足を取るな。佐野。」
だって、そうだろ。
大人は皆んな、やっちゃいけないことを平気でやってる。
そのくせ子供には、偉そうに説教するんだ。
「賭け事と言っても、悪いものじゃない。先生が賭けていたのは、文化祭だ。」
文化祭。
ドラマとかで良く見るやつだ。
他校の生徒たちも来て、お祭りみたいに楽しいイベントだ。
「うちの文化祭は、他校の生徒の出入りは禁止している。」
「え?そうなの?」
なんだー。
それじゃあただの身内祭じゃねぇかよ。
「昔、他校の生徒とトラブルになった事があってな。それ以来、来客者は禁止にしている。」
「ちぇー。つまんねぇ。」
「佐野くんみたいに、殴っちゃったりする人がいるんじゃない?」
星乃。
それ、お前が言うか…普通。
「俺はお前の為に殴ったんだぞ。」
「ふふ。そうだったね。ごめんね。」
ったく。
感謝の気持ちもねぇのかよ。こいつは。
「とにかくだ。今回の体育祭で一組は、文化祭の出し物の場所決めの最優先権を勝ち取ったんだ。」
そもそも…
出し物を何にするかも決めてないのに、場所を決めても意味ねぇだろ。
「今から文化祭でやる出し物を決めてもらう。ここからは佐野、お前が仕切れ。」
「…え?…俺が?」
なんでよりによって俺なんだよ。
全然関係ないじゃん。
「ほら、前出ろ。」
なんでだよ…。
「佐野くん!頑張って!」
他人事みたいに言うなよ星乃。
頼むから代わってくれ。
「えぇっとぉ…じゃあ…文化祭…」
「佐野。もっとハキハキ喋れ。」
くっそー。
なんで俺なんだよ。
吉田先生が自分でやればいいだろ。
絶対めんどくさいだけじゃん。
「あの!」
…ん?
星乃?
「はい!星乃!俺と代わってくれるのか?」
「あ…はは。…じゃなくて。」
なんだよ。
紛らわしい事するなよ。
「お化け屋敷やりたいです!」
立案かよ。
まぁ、そのほうが助かるけど。
「うい。じゃあお化け屋敷ね。」
(カッ…カッ…)
チョークで黒板に書く音。
「…おー…ばー…け…やーしー…き…っと。」
もう、お化け屋敷でいいんじゃね。
まぁ…でも一応聞いておくか。
「他に案がある人ー?」
みんな、文化祭でやりたい事なんてあるのか?
「はい!」
あ…吉村。
「グラウンドで、皆んなでサッカーの試合がやりたい!」
何言ってんだ…こいつ。
「あのなぁ…文化祭って、そういうんじゃないだろ。絶対。」
「え?そうなの?」
こいつはちょっとズレてるな。
「もっと…こう…ドラマとかで見る様なさぁ…分かるだろ。」
どこの学校で、文化祭にサッカーする奴がいるんだよ。
「んー…田村!お前なんかないの?」
「え?俺かよ。…そうだなぁ。」
田村なら、なんか良い案出してくれそうだな。
「超難問!クイズ大会とかどう?」
こいつはどこまで勉強好きなんだよ。
「それ…超難問にする意味あるのか?」
「誰でも簡単に解けたら面白くないだろ?」
たしかに…そうだな。
「んじゃあ…これも候補に入れておくか。」
どうせなら、もう一つくらい欲しいな。
あ、そうだ。
「なぁ、杉原はやりたい事ないの?」
「あ…私は雫ちゃんの案に賛成かな。…怖いの苦手だけど…。」
そうなのか。
克樹に聞いても、バスケのフリースロー対決!とか言いそうだしな。
「ん?なんだよ隼斗。」
「なんも言ってねぇよ!」
かと言って、誰も手なんて挙げる気配ないし。
あ、そうだ。
これは文化祭だ。
体育会系よりも、文化系に聞いたほうが良いに決まってる。
「水谷!なんか良いアイディアないか?」
「え……わ…私?」
文化系の水谷なら、こいつらが考え付かない様なアイディアを出してくれるに違いない。
「じゃあ…」
「うんうん。」
「体育館を全部貸し切って、超恐怖体験のお化け屋敷を作りたい…。」
………あ。
そうだった。
水谷…ホラー好きだったんだ。
「じゃあ、お化け屋敷にしようよ!」
「しようよって…星乃だけの意見じゃ決めれないだろ。」
「隼斗、多数決取ったら?」
あ、そうだな。
「おっけー。じゃあ皆んな、目瞑って…。」
多数決なんて…
する必要が無いって分かっていた。
文化祭の醍醐味…お化け屋敷と、
超難問クイズ大会。
そんなの…
「お化け屋敷がいいと思う人…。」
お化け屋敷がいいに決まってる。
クラス35人。
うち、34人がお化け屋敷に手を挙げた。
ただ一人…
田村を除いては…。
「田村…そんなにクイズ大会がやりたかったんだな。」
「だって…」
「ん?」
「怖いの嫌いだから…。」
あ……そうだったのね。
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