第42話 体育祭

 高校の体育祭って…

てっきりグラウンドでやるもんだと思ってた。


陸上競技場でやるんだな…。


…ガチじゃん。


「克樹、ウチの高校だけだよな?こんな盛大な体育祭やんの。」


「だろうな…。坂口先生、気合い入ってるんだろう。」


熱血教師の坂口。

やるからには、とことん全力を尽くす。

そんな先生だ。


「おはよー!佐野くん!千葉くん!」


星乃だ。


相変わらず、朝から元気だなぁ…あいつは。


あ…

杉原!


「おはよ。」


「お…おはよ。…来たんだな。」


良かった。

本当に良かった。

これで今日のリレー、頑張れそうだ。


「杉原、もう大丈夫なの?」


克樹…お前は余計なこと聞くんじゃねぇ!


「うん…。いつまでも家にいたって、何も変わるわけじゃないからさ。」


そうだよな。

杉原は立派だ。


「それにしても大っきいねぇ。私、陸上競技場来るのなんて初めてだよ。」


それに比べて、星乃はまだまだ子供だな。


「あんまりはしゃぐなよなぁ。体育祭やる前にバテんぞ。」


「後半にバテるのは星乃より隼斗じゃない?」


「あー!そうだよ佐野くん!」


「「あははは」」


…ムカつく。



 

 それにしても、朝からリレーの練習とは…

本番前の最終確認か。

まぁ、グラウンドとこっちじゃ足の感触も違うからな。

って…

なんかアスリートみたいになってねぇか?


「佐野!やるぞー!」


黒田だ。

吉村もいる。


「千葉の考えた順番で、一通りやってみよう」


おいおい…吉村。

本番前に走るのかよ。

嫌だなぁ。

バトンの受け渡しだけでよくないか…?


「お前ら、朝から熱心だな!」


吉田先生だ。


「熱心も何も、先生が発端ほったんだからな。」


「なんだ佐野。一位取るんじゃないのか?」


「取るよ。男に二言はねぇって、おっちゃんが言ってたからな。」


そうだ。

俺なら出来る。

杉原も見てるからな。


「そろそろやろっか。隼斗のやる気があるうちにさ。」


「なんだよ克樹。それじゃあまるで、俺がやる気ねぇみたいじゃねぇかよ。」


「あれ?違った?」


くそー。克樹め。

こいつが敵のチームだったら、とっくに本気出してるのになぁ…。



「佐野くんたち、楽しそうだね!」


「そうだね。…佐野を見てると、自然と元気をもらえる。」


「…結衣ちゃん。」


「捻くれ者だけど…自分が決めた事には一途なところとか、子供みたいだけど…本気で楽しんでるところとか…。」


「そうだね。佐野くん、根は素直だからね。」


「そういう姿見てると…私も頑張んなきゃって思う。」


「うん。」


「そういう佐野の姿は…かっこいいって思う」


「……結衣ちゃん。」



……ん?


応援席にいるの、星乃と杉原か。

二人ともこっち見てる気がする。


あ、…気づいた。


「…はは、子供かよ。あいつ。」


どんだけ手振るんだよ。

もういいって。


「隼斗、なに笑ってんの?」


「いや…なんか嬉しくてな。」


「嬉しい?体育祭のこと?」


いや…


「ちげーよ。」


この瞬間が…


楽しくて、嬉しいんだ。



 

 体育祭の個人種目。

短距離走、長距離走、高跳び、走り幅跳び、

砲丸投げの五種目か。


結局、長距離走は人気で選べなかった。


「高跳びかぁ。」


「佐野くんは高跳び得意なの?」


「得意も何も、こんな時にしかやらないだろ…普通。」


「そっか…言われてみればそうだね!」


何言ってんだよ…こいつ。

お前は日常生活の中で、高跳びをするシチュエーションが一度でもあったのかよ。


「でも、佐野はバスケ得意だからジャンプ力とかありそうだよね!」


まぁ…確かに。

脚力はバスケにも必要だからな。


「そういやぁ、杉原と星乃は何すんの?」


自分のことに集中してて、気にしてなかった。


「私は短距離走。クラスの中では速い方だったから、選ばれちゃった。」


そっか。

杉原は運動神経いいもんな。


「星乃は?」


「私は砲丸投げ!一回やってみたかったんだよねぇ。」


はは…。なんか、似合ってるかもな。


「千葉は走り幅跳びだっけ?」


「そうだよ。」


ってことは皆んなバラバラか。


最後にクラス対抗リレーか。


「女子のリレーって杉原が出るのか?」


「うん。タイム順だって、吉田先生に言われたからね。」


女子にも容赦ないんだな。

もしかして、男女の二冠を狙ってるのか?


「星乃はリレー出ないんだっけ?」


「あ…千葉。その質問は…」


「ん?なんだ?克樹、変なこと言ったっけ?」


別に、普通の質問だったと思うけど…。


「皆んなはいいよね。足が速くて。私も出られるなら出たかったけど…皆んなみたいに足速くないから出られないんだよ…。一人で応援してるから、頑張ってね。」


あ……そうだった…。

星乃はリレーに出たがってたんだった。


「「なんか……ごめんなさい。」」

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