第31話 決意表明
テスト週間一日目の放課後。
結局俺たち四人は、星乃の家でテスト勉強をすることになった。
「……で、なんでここなんだ?」
何故か俺たちはベアーバンズにいる。
「あはは…ごめんごめん。実は家にお客さんが来るらしくって、駄目だった。」
星乃が企画するといつもこうだ。
何かしらのトラブルが発生する。
「てか、いいのかよ。こんな所で勉強して。」
いくら常連だからって…ファミレスじゃないんだぜ?ここは。
「いいってことよ!我が後輩たちが熱心に勉強するってんだ。ポテトでもかじりながら好きに使え!」
「ありがとうございます。おじさん。」
「おじさん!私チーズバーガーも食べたいです!」
お前らはもう少し遠慮しやがれ!
てか…
ベアバン率高くね?
「杉原…ここの計算式教えてほしいんだけど」
克樹!
お前は真面目に勉強すんのかよ!
ったく…こんな所で勉強出来るわけねぇだろ。
ここはどっちかっつーと、
俺のプライベート空間なんだからよ。
完全にオフの状態だわ…。
「佐野くん、ごめんね。今度はちゃんと家でしようね。」
「いいよ別に。元々やる気なかったし。」
そうだ。
おっちゃんの似顔絵でも描こうかな。
髭もじゃだし、描きやすそう。
「佐野くんはさぁ…百点取ったことある?」
なんだよ急に。
「あるわけねぇだろ。五十点だって危ういってのに。」
「ふふふ…。」
「あー!杉原、今笑っただろ!」
「ごめんごめん。昔のこと思い出しちゃって」
昔…?
いつのことだろ。
「あー、隼斗が数学で0点取ったときね!」
「え?…そんなことあったっけ。」
「何それ!聞きたい聞きたい!」
そんなことあったような…なかったような。
「中学三年の時だよね?…確かあれも、同じ頃の期末テストだったっけ。」
中学三年の期末テスト…。
…そうだ。
思い出した。
「答えは全部埋めてあんのに、一個も当たってねぇのこいつ。あははは!」
「あはは!逆に凄いよねそれ!あの時は本当に笑った。」
なんだよ。二人して馬鹿にしやがって。
「そんなことがあったんだね。二人とも、昔の佐野くんのことよく知ってるもんね!」
大体、あれだって全部勘で書いたんだよ。
俺だって勉強すりゃあ0点なんて…
「じゃあさ…0点の佐野くんが、もし百点取ったら凄いことだよね!」
百点なんて、誰でも凄いことだろ。
「確かに。うちらが取る百点とは重みが違うかもね。」
なんだよそれ。一緒だっつーの。
「まぁ隼斗は百点なんて取れるわけないよ。」
克樹の言葉が、何度も俺の頭をよぎった。
カッチーン。
「お前ら…」
もう怒った。
「馬鹿にするのも
「…佐野?」
「隼斗?」
「佐野くん?」
誰が出来ねぇって?
「取ってやるよ…」
「「…え?」」
死ぬまでに…
「俺が百点取ってやるよ!」
そしてお前ら全員、見下してやる。
「佐野くん…。」
「よし!わかった!」
「え?」
おっちゃん。
何がわかったんだよ。
「もし隼斗が、一つの教科で百点取ったら…」
「「取ったら…?」」
なんだよ…チーズバーガーでもくれんのかよ。
「夏休みのバイト、厨房で雇ってやるよ!」
「え?…まじ?」
決めた。
「男に二言はない。だから隼斗、お前も絶対に百点を取れ。」
俺は死ぬまでに…テストで百点を取る。
「じゃあ…勉強たくさんしなきゃだね!」
「星乃!明日からお前ん家行っていい?」
「…え、えぇ?」
一人じゃ絶対出来ねぇ。
これは星乃の協力が必要だ。
「猛勉強する!」
その分厚い壁、ぶち壊してやるよ。
それに…
「克樹。お前には負けねぇ。」
こいつには負けたくねぇからな。
「強がりやがって。いっつも俺より点数悪いだろ。」
「今回は俺が抜かしてやるよ!」
「あはは…なんか二人とも、バチバチだね…。雫ちゃん、二人は一緒に勉強させない方がいいかも。」
「そ、そだね…。」
自分でも、なんでこんなにムキになってんだろうって思う。
「じゃあまた明日ね!」
「結衣ちゃんバイバイ!」
二時間くらいいたな。
俺にしては結構頑張って勉強した方だ。
「佐野くんと千葉くんもバイバイ!」
「うん!じゃあね、星乃。」
「気ぃつけてなぁ。」
さっきはあんなこと言ったけど、正直どの教科で百点を目指そうか迷うところだ。
そもそも希望が無いんじゃ無謀な挑戦だ。
克樹はどうすんのかな。
「なぁ。」
「なんだよ。」
いや…
聞いたら負けな気がする。
「やっぱなんもねぇ。」
「なんなんだよ。」
確か克樹の得意な教科は歴史。
嫌いな教科は数学だったよな。
嫌いな教科は一緒か…。
かといって、得意な教科なんて無いぞ、俺。
そもそも勉強自体好きじゃねぇし。
どうする?
なになら俺は百点取れるんだ?
「お前、なにで百点取るつもりなんだよ。」
克樹のやつ…聞いてきやがった。
「今考え中だよ。」
「なんだそれ。ほんとに取れんのかよ。」
「うるせーなぁ。見とけって。」
どうせ死ぬなら…
一度くらい、テストで百点取って死んでやる。
そうすりゃあ克樹や杉原の記憶の中には、
0点の俺じゃなくて…
百点の俺が残るから。
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