第21話 恋
わかる…。
心臓が…
俺と星乃の心臓の音が…
共鳴してる…。
「佐野くん…私……私ね……。」
「星……乃……?」
やばい…。
妄想なんかじゃねぇ。
星乃……。
「どうしてもケーキが食べたいの。」
「………へ?」
星乃……いま…なんて…?
「佐野くんが買ってきてくれたケーキ…」
俺が買ってきた…ケーキ…?
「食べて…いい?」
「……うん。」
うん?
………じゃねぇだろぉ!!!
今の流れは完全にケーキの流れじゃなかっただろ!
なんだったんだよ、さっきのドキドキは…。
「どうしたの?佐野くん…。」
「なんでもねぇよ!!さっさと食べろよ!」
返せよ。
俺のドキドキを…。
「じゃあ…取ってくるね!」
てか…
なんで星乃に対して、こんなドキドキしてんだって話だ。
二人っきりだから…?
俺達って…二人っきりだったら、友達じゃなくなるのか…?
そんなの…おかしいだろ。
変に意識し過ぎだ。
星乃は俺のことなんて、恋愛対象なんかに入ってねぇよ。
「ケーキ、持ってきたよ。」
そうだよ。
星乃はただの友達…。
今日だって…
友達だから誘ってくれたんだ。
「おう…。」
「佐野くん、私がチーズケーキ好きなの…もしかして知ってた?」
チーズケーキだったんだ。
店員さんに、おすすめ選んでもらったから、何入ってるか知らなかった。
「星乃…チーズケーキ好きなの?」
「うん!大好き!」
俺と一緒だ。
「なぁ…一口もらっていい?」
「いいよ!一緒に食べよう!」
嬉しそうだな。星乃。
やっぱ買ってきて良かったわ。
「はい!」
「ん?」
えっと…これは…。
「あーんしてあげる!」
は……はぁ?
何言ってんの、こいつ。
「するわけねぇだろ!自分で食べる。」
「あはは!冗談だよぉ!」
おちょくってんのか…こいつ。
…むかつく。
「…あ。美味い…。」
「ほんと?ねぇ、私も食べたい!」
あ…そうだ。
俺、星乃に買ってきたのに、自分が先食べてどうするんだよ。
「わりぃわりぃ。」
「佐野くんもチーズケーキ好きなんだね!」
「うん…。好きだよ。」
「……そっか。」
え?
何…?
この、間…。
なんか、別の意味で言ったみたいじゃん。
今のは、チーズケーキが好きって言う意味で、別に星乃の事が好きとか、そういうんじゃ…
「好きなもの一緒って…なんか良いね!」
そういうんじゃ…
ないんだけどな…。
「佐野くん、ケーキ食べ終わったら、ゲームしようよ!」
「あー、いいね。ゲーム。」
星乃ってゲームとかするんだな。
一時間後
(バキっ……ドンっ……ボカーンっ!)
テレビから流れる効果音。
「おらっ…この!……くそっ…」
「えいっ!……佐野くん、ゲーム上手だね!」
「当たり前だろ!誰だと思ってんだよ!」
「あはは!私も負けないよぉ!」
気づいたら、いつも通りに戻ってる。
学校の時と、変わらない。
そういや、
いつのまにかベッドの上に座ってたな。
隣に星乃もいるし…。
「あー、また負けたー。佐野くん強いなぁ。」
「俺に勝つのは百年早いって!」
あれ…星乃…寝るのか?
「ちょっと休憩〜。疲れちゃった。」
「そうだな。ちょっと休むか。」
俺も寝転がっていいかな…。
「佐野くんも一緒に寝よ?」
どきっ!!
まただ…。
やっと落ち着いたと思ったのに。
『佐野くん…きて…。』
ほ……星乃…。
「佐野くん?」
はっ……
「あ……いいの?」
「うん。いいよ。」
変な気分だ。
最初はたぶん…
どちらかといえば嫌いなやつだった。
俺の邪魔ばっかしてきて、おせっかいで、
むかつくやつだった。
けど…
だんだんと星乃のこと、知りたくなってきて、
毎日会うのが楽しみになって、嬉しくって。
少しずつ…星乃に対する気持ちが、変わっていってる気がする。
どちらかというと…
今は…好きよりなのかな…。
それは…友達として…。
星乃は…どう思って…
「………」
あれ…俺……寝ちゃってたのか。
部屋も薄暗い。
もう夕方かな。
星乃も寝てる。
相変わらず、綺麗な寝顔してるな。
「ただいまぁ。」
……え?
この声……
星乃の母ちゃん!?
「しずくー?お友達来てるの?」
まずい…。
この状況……かなりまずい…。
「おい起きろ!星乃……おーきーろー!」
頼むから起きてくれ!
マジでやばいって……!
「しずくー?いないのー?」
あーーーー!
近づいて来る。
開けられたら終わりだ…。
もう二度と星乃の家には来れねぇ…。
「しずく…開けるわね?」
あーーーーー!
星乃ーーー!
俺はもう知らねぇぞぉ!!!
(ガバっ)
……え?
(ガチャ)
扉が開く音。
「しずくー?いるのー?」
………
「なんだ…寝てるの。」
(ガチャン)
扉が閉まる音。
………あれ…?
せ……セーフ…?
ってか…
星乃が布団被せて隠してくれなかったら…
つーか起きてたのかよ、こいつ。
「……びっくりしたね。」
どきっ!!
おいおい。
布団の中で、この距離…。
密着し過ぎじゃね?
やばい…。
ベッドを通して…
星乃の心臓の音が伝わってくる。
(ドッドッドッドッ……)
これは………
(ドッドッドッドッ……)
これは………
(ドッドッドッドッ……)
これはぁ……
(ガチャっ)
扉が開く音。
「雫!あんた誰と寝てるの!起きなさい!!」
「ひぃっ!!」
「ちょ……星乃…お前…」
駄目だ!星乃!
起きたらまずい…。
……あ。
「……佐野……君…?」
「……あ……こんにちはぁ…。ははは…。」
「それじゃあ、気をつけて帰るのよ。」
「お邪魔しました!」
結局、星乃が理由を説明して、何とかなったから良かったけど…。
「あ、そうだ!お母さん、佐野くんがね。お母さんの為にケーキ買ってきてくれたんだぁ。」
「あらぁ。嬉しいわ。ありがとね。佐野君。」
「あ、いえ…。大したもんじゃないっすよ。」
なかなかスリルな体験だったな。
「じゃあ、俺はこれで…。」
「佐野くん!」
「ん?」
「また明日ね!」
明日…また星乃に会える。
「また明日な。」
なんだろう。この感じ。
帰り道の…この感じ。
どこか懐かしいような…
…そうだ。
杉原に恋してた時と…同じ感じだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます