第4話 杉原 結衣
今日は克樹と遊ぶ約束をしている。
日曜日だから学校は休みだ。
それにしても…
遅い。
もう二十分は待ってる。
あいつはいつも時間を守らない。
この前だって、映画の上映時間ギリギリに来やがって。
俺は映画の予告もちゃんと見たい派なんだよ。
それに、ギリギリだってのにポップコーン買いたいって言い出す始末だ。
時間はお前を待ってはくれないぞ。
「わりぃわりぃ、お待たせ〜。」
「おせーよ!」
「そんな怒んなよー。」
こいつは
悪気がないところが
「何やってたんだよ。」
「道教えてたら遅くなった。」
「道?なんだよ、人助けか。」
なんだ。
理由が真っ当じゃねぇか。
それなら話は別だ。
「人助けっていうか…あ、来た来た!」
「来た?…なにが?」
こいつ、誰に向かって手振ってるんだ?
げっ!
「ごめんー!お待たせ〜。全然知らない道だから迷っちゃった。」
「なんでお前が居るんだよ!!!」
でた。星乃雫。
ってか何でこいつがここに…?
そういえば克樹のやつ、来た来たって言ってなかったっけ。
「俺が誘ったんだよ。日曜日に隼斗と遊ぶって言ったら、星乃も来たいって言うから。」
何勝手に誘ってるんだよ。
だからペラペラ喋るなって言ってんだよ。って言ってないけど、心の中では言ったんだよ。
「この辺りのこと全然知らないからさ。本当は一人で探検しようと思ってたんだけど…」
「だったら一人で探検したらどうですか?」
「おい、隼斗。いくらなんでも可哀想だろ。」
可哀想?
元々こいつは一人で行動しようとしてたんだ。
お前が勝手に誘ったんだろうが。
「佐野くんってもしかして、あまのじゃく?」
「…え?」
あま…なんだって?
「ひねくれてるからさ。もっと素直になればいいのに。」
カッチーン。
「俺は素直に思ったことを言ってるだけだ!何で休日までお前と会わなきゃいけないんだ!」
「隼斗!お前言い過ぎ。」
大体お前がこいつを呼ばなきゃ良かったんだ。
こいつが来なけりゃ時間に遅れることも無かったんだ。
俺もこんなにイライラなんてしてねぇ。
「なんか…ごめんね。私のせいで…。」
そうだよ。
やっと気が付いたか。
「せっかくの二人の時間、邪魔してごめんね。千葉くん、誘ってくれてありがとう。」
「あ、星乃…」
じゃあな。星乃雫。
俺は悪いとは思わないぜ。
「隼斗。お前なぁ…」
「俺は、お前と二人で遊ぶって約束したんだ。そこにあいつは含まれてねぇ。」
俺は間違ってねぇ。
だってそうだろ。
お前だって、お店でポテトとチーズバーガー頼んで、出て来たのが生姜焼き定食だったら怒るだろ。
いや…今の例えはなしだ。
「あいつと遊びたいんだったら俺は帰るぜ。」
せっかくの休みだってのに、むかむかする。
「隼斗。星乃はお前が来るって聞いたから、楽しみにして来たんだぞ。少しは星乃の気持ちも考えてやれよ。」
そういうお前は俺の気持ち考えてんのかよ。
って…これじゃあキリがねぇ。
お互い頑固なのは変わらないな。
「わかったよ。今回だけだからな。」
なんで俺が折れなきゃいけないんだよ。
むかつく。
けど…ちょっと言い過ぎたか。
「よかった。俺、星乃呼んでくるよ!」
あいつ、嬉しそうだな。
まぁいいや。
イライラしてても楽しくねぇや。
俺はこの一年間、楽しまなきゃならない。
こんな小さいことで、いちいちムカついてるのも勿体ねぇ。
…ん?
なんか、あいつも似たようなこと、言ってなかったっけ。
「隼斗ー!行くぞー!」
まぁいいや。忘れた。
「佐野くん。さっきはごめんね。」
なんで謝るんだよ。
言い過ぎたのは俺の方だし。
いや、でも元々はこいつのせいで…
いや、そもそも克樹が勝手に誘ったからこんな事になったのか?
あー、もうめんどくさい。
「いいよ別に。そこまで気にしてねぇ。」
気にしたところで、むかつくだけだ。
「よかった。ありがとう。」
「さて、なんか食べに行きますか!」
「あー…ならハンバーガー食いてえ。ハンバーガーのこと考えてたら、食いたくなった。」
「お前いつハンバーガーの事考えてたんだよ」
「さっきだよさっき!いいから行くぞ。」
そういえば昔もこうやって三人でハンバーガー食いに行ったっけ。
俺と、克樹と杉原の三人で…。
克樹、俺が杉原の事好きだったって知ってたのかな。
それとも、克樹も杉原のこと…。
そういえば、その時も克樹が勝手に杉原のこと連れてきてたっけ。
でも、あの時は嬉しかったな。
それと、凄く緊張してた。
今とは大違いだ。
「佐野くんのおすすめはなに?」
「おすすめ?んーと…チーズバーガーかな。」
「こいつチーズバーガーしか食わないから。」
「いいだろ別に。それが一番美味いんだよ。」
「そうなんだぁ。じゃあ私も同じのにしようかな!」
「あそこのチーズバーガーは最高に美味いんだよ!チーズの絶妙なとろけ具合と、肉厚でジューシーなパティがベストマッチしてて…」
「あはは。なんか宣伝してるみたい。」
めっちゃ笑ってる。
そんなに面白かったのかな。
「隼斗はあそこの常連客だもんな!中学の頃、よく行ってたなぁ。」
たしかに、ほぼ毎日のように通ってた。
けど、どんなに美味しい食べ物だって、
毎日食べてたら飽きるものだ。
それでも俺が、そこに通い続けてたのは、
そこに通う、杉原に会いに行く為だったんだ。
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