第10話

昨日はよほど疲れていたんだろう。

部屋に戻ってからの記憶が無い。

いつもの時間には起きれたようだけど、戦うのって精神的にも疲れるんだなぁ。


顔を洗って、水汲みに出かける。

小川まで往復しながら、昨日の事を考える。


(スライムはもう大丈夫かな。いっぱい倒したし)

(角兎。跳んだのを躱して攻撃したっけ)

(あれ、使えるから練習しよっと)


考え事をしながら、仕事を終わらせてリアと会う。

お互い、昨日の事をいっぱい考えたんだろうなぁ。

なんだろう。

リアも雰囲気が違うような気がするよ。

大人っぽくなったというか。

本当に大人のお姉さんみたいな笑顔だ。

あれ?

ちょっと見惚れちゃった。

僕、どうしたんだろう。


気を取り直して、模擬戦を始める。

え。

リアは角兎のように、左右に移動しながら攻撃してきた。

あの動きを取り入れたんだね!

なら、僕も!


攻撃を躱して横に回って…

早い。

バックステップで逃げられた。

それなら僕だって。

左右にフェイントをかけつつ、盾を前に出す。

リアの攻撃を盾でいなして、体制を崩す。

今!

胴に一本入れた。


『ラナ! 強くなってる!』


負けたのに嬉しそうなリア。

僕は照れてしまったが、なんとか。


「ありかと」


と、伝えられた。

その後、動きを忘れないように練習した。

藁の塊を投げて貰い、それを避けて攻撃する。

二人で何度も練習した。


「ラナ。今日は二匹多くお魚取ってもらえる?」


母のアケだ。

どうかしたのかな?


「今日から10日間、冒険者さんを泊めるから出来れば毎日よろしくね」


投石の練習で魚を獲って家に帰る。

綺麗な冒険者のお姉さんが二人居た。


「冒険者のルミさんとミヨさんだ。毒消し草を摘んで貰うクエストを受けて頂いたんだよ」


「魔術士のルミです。よろしくね。ラナ君」


「同じく、魔術士のミヨ。仲良くしてね」


魔術士!?

え。

こんな所で出会えるなんて。


「らなです。みみきこえないけど。ゆっくりならわかります」


二人はびっくりしたようだが、直ぐに優しい微笑みで握手してくれた。


夜はお部屋に呼んでくれて、色々な話をしてくれた。

魔法は契約しないと使えないらしい。

血で魔法陣を描いて祈るそうだ。

魔法陣も見せてくれた。

良く見て覚える。

比較的簡単な形だし、文字も普通だ。


血を代償に魔力を望む。


と、周りに書いてある。


「でもね、描ききるのにいっぱい血が必要だから16歳にならないと危ないんだって。ラナ君はまだだよ」


笑顔で言いながら仕舞っちゃった。

でも、覚えたし、良いか。


それから毎日、ルミさんとミヨさんから魔法を見せて貰ったりした。

魔法の事、冒険者の事、いっぱい教えてもらった。

明るくて優しくて素敵なお姉さん達だった。

リアは二人にツンケンしてたけど。


「大人になったら、パーティー組もうね」


って別れ際に言ってくれた。

僕は嬉しくて


「はい!」


って大きく答えた。

この10日間、毎日賑やかだったから寂しくなるな。

でも、いつかまた会いたいって思った。


次の日。

リアと話し合う。

魔法の事を。


覚えたてだと、威力は低いみたいだ。

でも身体の強化にも使えるみたいだし、使えば使うほど強くなるらしい。


問題は契約だ。

神聖な場所かぁ。


『成人の儀で使う場所なら良いんじゃない?』


さすがリア。

あとは血だね。

これを描く量だと、大怪我だよね…

無駄にせずに最小限で描くためには…

血が途中で固まっちゃうとも言ってたしなぁ。


『ジョンさん、覚えてる? 血が悪くなる病気だったじゃない』

『フキの茎を手の血管に刺して血を捨ててたよね。刺すだけだから傷も小さいし』


確か茹でて綺麗にしたフキの茎を使うんだよね。

中が空洞になってるから、そこを通り道にして血を出すんだっけ。

変な人で、武勇伝のように話してたから良く覚えてる。


なるほど。

それなら、大怪我しなくて済む。

それで描けば…

小さな壺に入れて、ちょっとずつ垂らせば少ない量で描けそう。

あ、でも血が固まるんだっけ。


最近何か聞いたような…

そう。

まだら蛇の毒だ。

血が固まらなくなる毒なんだから、それを混ぜれば!


作戦は決まったので、二人で道具を集める。

フキの茎×2

小さな壺×2

壺はごみ捨て場から拾ってきた。

ヒビが入ってるけど、水を入れても溢れないから大丈夫だと思う。

まだら蛇は、怖かった。

でも、リアは蛇捕まえるのが上手で首を上から抑えて簡単に二匹準備出来た。


すごいね、リア。

ごめんね、僕触れない。


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