第11話

僕達は儀式の場に向かってる。

普段は立入禁止だから、見つからないようにコソッとだ。

強くなる為とはいえ、ダメって言われてる事をするのは気が引ける。

でも、強くなりたいんだ。

大事な人達を護れるくらいの力。

だから、ごめんなさい。


儀式の場は森の中にある。

本来なら、1人で儀式の場にある祠に行く。

浅い場所だから、危険な魔物は出ないけど何があるか分からない。

危険を乗り越えて祠に着いたら、先に大人が置いた何かを持って帰ってくるんだ。

そうしたら、一人前と認められるっていう儀式だ。


今日は2人だし、スライムや角兎程度なら練習相手だ。

問題なく着いた。

もちろん誰も居ない。


リアと顔を見合わせる。

自分で刺すのって、凄く抵抗がある…

ううう。

そうだ。


「りあ、ぼくにさして」


『無理よ…怖いもん!』

『ラナを傷付けるなんて嫌』



そうだよね…

自分でやるしかないか。

リアも怖がってるし、僕からやらなきゃ。


壺の縁に蛇を噛ませ、牙から毒を壺に垂らしていく。

覚悟を決める。

あの時、ゴブリンに殺された悔しさに比べたら。

このくらいなんて事ないはずだよ。

表面の血管に狙いをつけて。

プスッ。

そんなに痛くない!

ポタポタ。

少しずつ、血が出るくる。

壺に貯めていく。

リアが壺を持って、混ぜてくれる。

うん、1回分は取れた。

けど、僕は2回分取るつもりだ。

この方法なら血はそんなに多く必要ない。

なら、今日2回儀式をしちゃえば、それだけ魔力が上がるはず。


リアが頷く。

良し。

量は充分だね。

壺を傾けて、地面に垂らす。

先ずは自分を囲むように丸を描く。

五芒星を中に描いて、周りに。


血を代償に魔力を望む


と書込む。


僕は五芒星の中に座って一心不乱に祈る。


(僕に魔力をください! リアを護れるように。大切な人達を護れる力を僕にください!)


半分くらいの人は儀式をしても魔力を授からないという…


強く強く、願い続けた。

魔力が貰えないのでは、という不安から長い時間に感じたが、多分そんなに時間は経っていない。

下腹の辺りが暖かくなった。


「これが、まりょく!」


「りあ、まりょくもらえたよ」


リアは心配そうな顔でずっと僕を見守っていてくれてた。

リアが居てくれるだけで僕は頑張れる。


魔力が宿った。

でも、物凄く体が怠い。

血を失っただけではない怠さだと思う。

もしかしたら。

体力も代償にしているのかも…

でも、体力なら鍛えれば戻るはず。

今は魔力だ。


僕は残った血でもう一度魔法陣を描き、儀式を行った。

ポカポカした感覚があった。

成功…だ。

うわ。

ふらふらする。

僕は尻餅をついて、そのまま寝転がった。


『ラナ! 大丈夫!?』


「りあ、たいりょくがね、なくなるみたい」

「いっかいにしたほうがいいかも」


リアは少し考えていたが。


『私も2回やる。ラナと一緒に強くなるんだもん』


ラナの描いた魔法陣と同じように描いていく。

リアは座って祈る。


(ラナが傷付かなくても良いように。ラナと私の敵を倒す力をください!)


リアのお腹が暖かくなる。

儀式は成功だ。


でも、ラナと同じ!


(もう一回やるんだ。)


リアは体の怠さを感じながらももう一度、儀式を行う。


成功した。

でも、やはり倒れ込んでしまう。

体が重い。


ラナは心配そうにリアを見た。


「りあ。だいじゃぶ?」


ラナを心配させない為だろう。

リアは微笑んで頷く。

でも、額には汗が光ってる。


2人とも、直ぐには動けなかったのでここで少し休んでから帰る事にした。


『ついに魔力が貰えたね』


「ね。ながかったね。つよくなれるかな?」


『うん。いっぱい練習して強くなろう』


体は酷く重かったが、歩いて帰れるくらいには回復してきた。

座りながら2人は魔力を感じる。


ルミさんとミヨさんに教えてもらったように魔力を操る。

自分の体の中にあるのは分かるけど、思うように動かせない。

そんなに直ぐは無理みたい。

でも、属性は分かった。

誰にでも属性が付くわけではないらしいから、運が良かったんだろうね。


僕は、掌から乾いた土を出していた。


リアは?

リアから、微風を感じる。

疲れた体には気持ちいい。


僕は土属性

リアは風属性


2人とも属性付きの魔法使いになったんだ。

自然にリアと手を繋いでいた。

時間を戻ってきて、半年以上かかったけど、やっと魔力を手に入れた。

今まで練習してきた、棒の戦い方と合わせて明日からはメニューを増やさなきゃ。


ラナとリアはフラフラしながら、なんとか家に帰った。











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