第8話
ラナは考える。
リアとのチャンバラでは、五回に一回勝てるかどうかだ。
(僕だって男なのに。このままじゃダメだ)
リアは短剣二刀流にして、益々強くなった。
彼女も自分に合ったスタイルを常に模索している。
ラナは自分を考える。
(運動神経はあまり良くない、と言うか悪いよね…)
(物覚えも良くないし、要領も悪い)
(あれ? えーと、僕の強味は…)
(うーん。得意分野ってあんまり無い。強いて言えば文字には強いけど、それじゃあ強くなれないし)
(なら、逆に考えよう。器用には戦えないなら、応用の広い物をひたすらに練習するしかないよね)
(なら、今まで鍛えてきた剣術を繰り返すべきだ。それと)
(僕は護りたいんだよね。それなら、盾を持った方が良いんじゃないかな?)
(うん! 片手剣と小さな盾を持てば、リアの短剣二刀流にも対処し易いし)
(何より魔物と戦う場合、リアを護り易い!)
早速、盾を作る。
(盾かぁ、どうやって作ろう?)
やっぱり木かな?
手頃な太めの枝を集めて、組み合わせていく。
藁で縛り上げて、持ち手を作る。
(うーん、これじゃあ、ゴブリンに殴られたら一撃で壊れちゃうよね)
今度は太い木の枝を三重にして、藁で周りを巻き付けるように覆っていく。
捩りながら、盾を覆う。
(これなら、殴られても三回は保つ、かな?)
木と藁の盾が完成した。
今のラナの装備は
藁の片手剣
木と藁の小盾
布の貫頭衣
草鞋
布の袋
スリング
予備武器:石のナイフ、石斧、木の棒
となっている。
リアと待合せして、盾を見せる。
リアはじっくりと見てから少し叩いた。
『うん。ラナに向いてると思うよ』
リアが笑顔を向けてくる。
その笑顔に僕も嬉しくなって少し照れた。
リアの笑顔を見ると胸が暖かくなる気がする。
盾を使った初めての模擬戦だ。
始めは盾の上手い使い方が分からず、邪魔なだけだった。
『私の左手の短剣って防御にも使うから、盾の運用に近いんじゃないかな?』
なるほどと思い、リアの動きを観察する。
左手の短剣は繊細な動きで攻撃にも防御にも対応していた。
盾は短剣より面積が広いし、防御だけなので大雑把な動きでも対応出来る。
右手と左手で違う運動になるから、意識が二分されるが何とか頑張ろう。
(これは、慣れが必要だなぁ)
片手で藁の片手剣を振るのも感じが違ったし、これは失敗か、とも思ったが。
ラナにはリアを護る力が欲しいのだ。
ならば、これはきっと必要な試練だと思って頑張るしかない。
何度かリアと模擬戦をしてから、木陰で座って身体を休める。
『ねぇ、ラナ』
『これからは、二人で力を合わせた戦い方も練習しよ?』
「そうらね。ほくもそうおほってた」
まずは仮想スライム戦だ。
「ほくがまえにへる」
『そうね。ラナが前で私が後』
『ラナが注意を惹きつけて、その間に私はスリングを準備して攻撃』
『石が外れたらだけどね。スライムがジャンプする時の鳴き声が聞こえたら、左肩を叩くから。そしたら、ラナは右、私は左に跳ぶ』
『その後、スライムの横に回り込んで、核を叩こう!』
「うん! ひゃあ、そのうこきをれんひゅうしよう」
背の高い雑草を仮想スライムとして、二人は連携の練習を始めた。
片手剣と盾を使った模擬戦。
片手剣の素振り。
対スライムの連携。
いつもの訓練に加えてこの三つを重点的に繰り返した。
月の満ち欠けが一巡した頃には、盾を加えた戦い方にも慣れ、リアとの連携も身体が覚えてきた。
「すらいま、たおしにひこお」
あれ以来、森には殆ど入っていなかったが、いつまでも恐れてはいられない。
練習は沢山した。
そろそろ実戦に移す時だ。
リアは少し怯えていたが、決意した表情で頷いた。
次の日、二人は傷薬になら葉を摘みに行くと行って森に入る事にした。
しっかりと準備をする。
ラナの装備は。
木の棒
木と藁の小盾
布の貫頭衣
布のマント
革の靴
スリング
石礫:10
布の袋
竹籠
予備武器:石のナイフ
リアの装備。
木の棒
木の棒
布の貫頭衣
布のマント
革の靴
スリング
石礫:10
布の袋
予備武器:石のナイフ×2
スライムは打撃に弱いので、二人とも木の棒を装備した。
ステータスは見れないが、特訓の成果で12歳の時よりも上がっている筈だ。
今日は、スライムを探しながら言い訳に使った薬草も積んでいく予定だ。
森の浅い所を回るのでゴブリンに襲われる心配は無い筈だ。
少し歩いて、森に着いた。
やはり緊張する。
自分はこれから魔物と戦うんだ、と思うと足が竦む。
しかし、14歳だったロキは簡単にスライムを倒していたし、大人達は片手間に潰していくような相手だ。
魔物の中では最弱なのだ。
二人なら大丈夫!
そう言い聞かせて隣を見る。
リアも緊張しているようだ。
必死に目に力を込めているが足が止まっている。
ラナはそっとリアの手を取り、繋ぐ。
少し震えていた。
「たいひょうふ、ぼくがまもるから」
リアはびっくりした顔でラナを見つめている。
少し顔を赤らめてから微笑む。
『頼りにしてます』
二人は再び森に入った。
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