ムダなく生きる
シヨゥ
第1話
一分一秒を大切に生きよう。ぼくと兄は父さんの早すぎる死を体験してそう誓い合った。しかしながらそのとらえ方が違ったようで、ぼくと兄の関係は急速に冷えていった。
兄の場合、一分一秒を大切に生きるというのは時間をムダにしないことだった。
予定を詰め込みまくり常に動き続ける。仕事の鬼のような人になった。
休みの日には読書に、調べものにととにかくインプットをし続ける姿が印象的だった。
ぼくはぼくで兄と同じく時間をムダにしないように生きている。
ただやりたいことをとにかくやるという点で兄と異なる。
ぼくはどうせ時間を奪われるなら仕事ではなく趣味に奪われたいと考えたのだ。
自分のために生きよう。仕事人間だった父さんの葬式でそう自分に誓ったのだ。
だから休む時はしっかり休む。それは趣味に生きたいのに趣味を嫌うようになっては意味がないからだ。休むこともまた時間をムダにしないための生き方なのだ。
趣味に生きるぼくを見て兄はよく怒っていた。「時間をムダにしてるじゃないか」と顔を合わすたびに言われていた。そんな兄はもういない。
過労死。それが兄に用意された最期だ。
兄のほうが本当の意味で時間をムダにしない生き方を送ったとは思う。だけれどもムダを省いて、寿命も省いていては意味がないじゃないか。
兄の遺影を前にしてぼくは改めて誓う。時間をムダにしないと。
ムダなく生きる シヨゥ @Shiyoxu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます