希死念慮
私は薄い水たまりに、仰向けで寝そべっている。顔は半分くらいしか浸かっていないので、幸いにも呼吸はできる。しかしその水は毒水である。一口でもその水を飲んでしまえば、私はたちまち死んでしまう。でも私は、そうしてもいいと思っている。今すぐにでも顔を横に向けて、水を飲んでしまうことに何の躊躇いもない。ただ私は、空に浮かぶ十六夜の月が綺麗だから、上を向いているにすぎない。
月の見え方は天気による。快晴ならば無論良く見えるが、厚い雲が多く流れる日なんかは半分も見えない。まだその日は訪れていないけれど、雲が完全に月を覆って見えなくなる日だって、いつ来るか分からない。明日かもしれないし、一生ないかもしれない。ただ分かっていることは、その日が訪れたら私はもう上を向く必要はないということ。月が隠れたら私は横を向いて、毒水を飲んでしまおう。そう思って今日も、月を見上げている。
ここ数年来ずっと、そんなイメージが頭に浮かんでいる。私はこのイメージを、希死念慮と呼んでいる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます