第50話 城と魔石と魔王様と


 金属の様な素材で出来た重厚な扉が左右二人の兵士の手によって開かれ僕たちは謁見の間へと入っていった。


 謁見の間は体育館ほどの空間に等間隔に並んだ大きな柱が天井まで伸び三階分ぐらいある高さの天井からは魔道具なのかキラキラと光るシャンデリアと刺繍がびっしり入った高そうな布が吊り下がり、壁には色付きのクリスタルが嵌め込まれた色鮮やかなステンドグラスが並んでいた。


「シュウ様あまりキョロキョロしないでください」

「あ、すいません」


 あまりにボケっと周りを見回して居たのでララに注意をされ僕は急いでうつむき加減でディアーヌの後を追った。


 ドア付近から赤絨毯の上を進むとその左右にはマントをたなびかした全身鎧を着た騎士達が等間隔に並んでいるので圧迫感がすごい。僕たちはそのままうつむき加減で玉座の手前まで進み跪いた。


「表をあげよ」


 少し顔を上げて前を盗み見ると何段かの階段がありさらにその上に目をやると、宝石や金で細工が入った豪華な椅子の上に短く揃えられた茶色の頭に豪華な王冠を乗せ口髭を蓄えた背の高い男が座っていた。



 ディアーヌが立ち上がり丁寧にお辞儀をして口を開いた。


「父ドラクルス・グレイスドールが病床に付している為、全権の委任を受けその娘ディアーヌ・グレイスドールが魔石の献上に参りました」


 え?ドラクルスさん病気になってるの?まさかの話にびっくりしているといつの間にか話が進んでいてララに魔石を兵士に渡すように言われた。


「魔石をこちらへ」


 その声に反応して僕は緊張しながらロボットのように動き木箱に入った魔石を預かりに来た兵士に渡してすぐディアーヌの後ろに戻り跪いた。


「ほう、これは素晴らしい、他に類を見ないサイズだな大義であった」


 兵士から魔石を見せられた魔王が感嘆の声を上げた。


「グレイスドール家には褒美を取らせよう何か望む物はあるかディアーヌよ」


「陛下のありがたきお言葉痛み入ります。それでは図々しくもお言葉に甘えまして一つ陛下のお耳にお入れしたい事がございます」


「かまわん、申してみよ」


「そこな宰相であらせられるガンドス様でございますが最近の行動には些か問題が有るようでございます。その為一部で操られているのではでは無いかとの声が上がっておりますので確かめさせてはいただけないでしょうか?」


「ほう、ガンドスよディアーヌがこのように申しておるが何か申し開きはあるか?」


 魔王さまは何かおもしろい事が始まったという顔でガンドスに声をかけるとガンドスはディアーヌを睨め付けながら口を開いた。


「何を言っているのか皆目見当も付きませぬ。そのような小娘の戯言に付き合う気はございませぬ」


「畏れながら、発言を宜しいでしょうか」


「よい申してみよ」


「はっ、私の部下に魔力に長けた者がおりまして、その者がガンドス様へ一度お手を触れさせては頂けませんでしょうか?それだけで操られているなら元へ戻す事が出来ます」


 え?もしかしてそれは僕の事かな?呪印さんできるかな・・・。


「馬鹿な、この小娘が立場を弁えろ!この私が操られているなどと、それがもし間違いだった場合貴様どうやって責任を取るつもりだ!」


「私は現在グレイスドールの全権を預かる正式な侯爵家の使いでございます。私の言葉は当主の言葉、もしガンドス様が正常だったならば親子共々腹を切り領地を全て魔王陛下へお返し致す所存でございます」


 激昂するガンドスに対して凛とした表情で言い返すディアーヌさんが普段のイメージと違いすぎてびっくりした。流石貴族だと言う事なんだろうか、それにしても責任が重大な感じになってきた。


「なっ!?」


 あまりのディアーヌの勢いにガンドスも固まっていた。


「これほど言っておるのだ、腹を切るまでも無いが何も無いならそれくらい受けたらどうだガンドス」


 魔王様は自由な人なのか展開を面白そうに煽っている気がする。


「はっわかりました陛下が仰るのであれば、私も痛くもない腹を探られ気持ちの良い物ではないのですが受けましょう。小娘ほらさっさとやれ!」


 そう言ってガンドスがこちらを鬼のような形相でにらみながら歩いてきた。


「シュウ様お願いします」


 ディアーヌさんにそう言われ僕は仕方なく口呪印さんに力を込めながらガンドスのおでこに手を当てた。


 口呪印さんお願いします。そう願っているとその瞬間世界に色が失われいった。

 そして口呪印さんが何か吸い取っている気がする。


 吸い取り終わったのか世界に色が戻りその瞬間謁見の間にざわめきが起こった。


 僕が手をどけるとそこにはさっきまで居た禿げ上がったデブじゃなく見た事の無いおっさんが立っていた。


「もう良いか!終わったなら下がれ!」


 自分の姿が戻ったことに気がついていないのか偽ガンドスが叫ぶと魔王が口を開いた。


「下がるのは貴様だ!ガンドスをどこへやった!兵士よそいつを捕らえよ!」


 それを聞いた偽ガンドスは自分の顔に手を当て姿が変わった事に気がついたのか急に横に居た兵士に飛びかかるとさっき献上した魔石を兵士から取り上げた。


「よこせ!こうなったら全員殺してやる!」


 そう言うと偽ガンドスが突然魔石を口に入れて飲み込んだ。


「早く捕まえろ!!」


 兵士たちがガンドスを囲むように剣を抜くのに対し囲まれたガンドスは棒立ちだったが僕の目にはその体を渦巻くように青い光が回っているのが見えた。


 周りの兵士にはその光が見えていないようで、1人の兵士が飛びかかる瞬間ガンドスの体の青い光が集まり細い光がそこから飛び出して兵士の体を貫いた。


「見えない攻撃だ!離れて防御態勢を取れ!!」


 ガンドスの体から離れた青い光はみんなには見えていないようで包囲している輪が広がり兵士は盾を構えた。


「まさかこんな形で露見するとは思わなかったぞ!俺の計画を邪魔しやがって!おい!貴様何者だ?!」


 偽ガンドスはそう言いながら僕の方を睨みつけて青い光を細い帯のように飛ばしてきた。


「ただのメイドだよっ!どこにでもいるねっ」


 返事をしながら立て続けに飛ばしてくる青い光の帯を大きく動きながら避けていると、その隙きに周りの兵士が切りかかった。


 その動きに合わせるようにガンドスは青い光の帯を回し始めた。


「危ない!!みんな伏せて!」


 僕の叫び声も虚しく数人の切りかかった兵士は光の帯によって輪切りにされてしまった。


「更に散開しろ!遠距離から攻撃だ!」


 少し豪華な鎧の兵士が指示を出すと流石にここにいる兵士は練度が高く、すぐさま距離を取って盾を前に出しその隙間から別の兵士が魔法を撃ちだした。


 人間と違って魔族は魔力が豊富なので殆どの兵士が魔法を撃てるようで、かなりの数の攻撃がひっきりなしに偽ガンドスへと命中していた。


「効かん!効かん!効かんわあぁぁぁ!」


 偽ガンドスが叫びながら見えない光の帯を振り回していたが兵士たちは大きな盾を前で構え連携が取れた動きで防ぎながら魔法を撃ち被害を抑えながら戦っていた。


 僕たちは攻撃が見える僕が爪と口の呪印で光の帯を防ぎディアーヌとララとメイドが魔法を撃ち続けていた。


「この蝿どもがぁぁぁぁぁあ!」


 なかなか見えない攻撃が決まらない為か、偽ガンドスは叫び声を上げると一際大きな光の帯をまるで巨大な鞭を振るうように兵士たちの上に落とすとその衝撃でそこに居た兵士達がふっ飛ばされた。


 次々と繰り出される大きな光の帯の攻撃を食らって兵士たちの魔法が止んだせいで攻撃を続けている僕たちの方へ光の帯が飛んで来たので、僕は後ろにいるディアーヌ達を庇うようにさらに前へ進み右手の口呪印さんで光の帯を受け止めると、口呪印さんは光の帯をまるで飴細工のように噛み砕いてバリボリと美味しそうに食べた。


「何だ貴様はぁぁぁ!どうなっているんだ!何でこれが見えているんだぁぁ!」


「残念、その攻撃はスタッフ(口呪印さん)が美味しくいただきました」


 僕の方を睨みつけながら偽ガンドスは青筋を立て絶叫をあげ、更に光の帯を集中し大きな鞭を作ろうとしたその隙きにディアーヌが炎で出来た一際大きな魔法の槍を飛ばした。


 魔法の槍は偽ガンドスの顔に突き刺ささり次の瞬間魔法の槍は大爆発して激しい炎と煙が上がり、その煙が晴れるとそこには首が無くなった偽ガンドスの姿があった。

 

「倒したか?!」

「やった!」


 そう兵士達が口々に叫ぶ声の中、僕は首が無くなった偽ガンドスのからだ全体に青い光が広がっていくのを見て口を開いた。


「まだ死んでない!もっと魔法で攻撃を!!」


 僕はそう叫びながら爪呪印を伸ばし偽ガンドスの元へ走ったが僕の声を聞いて咄嗟に魔法を放ったのはディアーヌだけだった。


 ディアーヌの魔法が当たったところの偽ガンドスの身体は削れて行ったが削れるより早く膨らみ始めた。

 僕は風船のように広がった偽ガンドスに爪呪印さんを叩きつけた瞬間世界に色が失われていった。


 ゆっくりと流れる時間の中で風船のように膨らんだ偽ガンドスは弾けて、その中には大量の青い光の帯が詰まっていた。


 その花の蕾のようになった偽ガンドスに爪が刺さった瞬間、まるで花が開くようにすべての方向へと弾け飛んだ。


 僕は爪が弾かれ、さらに胸に目掛けて飛んできている光の帯を口呪印さんで防いだが数が多すぎていくつかを体にくらい弾き飛ばされその瞬間世界に色が戻っていった。


 あまりの衝撃に手足がなくなってるかと思ったが身体に蔓呪印さんが浮かび上がり守ってくれていたみたいで、なんとか欠損することはなかった。そのかわり一瞬気を失っていたようで気がつくとディアーヌ達の所まで吹き飛んでしまっていた。


「大丈夫ですか!シュウ様!」


 僕はララに支えてもらいながら痛む体を起こし偽ガンドスの方を見ると、そこには手足と触手が沢山ある獣人の国のコロシアムで見たキメラに似たモンスターが居た。


 これは、似てるって言うか触手が増えただけであのキメラと一緒だもしかしてエンバーミングが裏にいるのか?背景が全くわからないが人間の国とこの魔族の国って取引があるんだろうか?


 そんな事を考えているとキメラが動き始めた。


「攻撃だ!撃ちまくれ!」


 兵士たちがキメラに向かって魔法を撃っているが少し焦げる程度で先程と違いほとんど効いていなかった。


 魔法の攻撃を喰らいながらキメラがブルブルと震えたと思うと次の瞬間、数本の触手を伸ばし近くの兵士を捕まえるとその体を自分の上へ持ち上げ、何もなかったところに大きな口が開き兵士を飲み込んでしまった。


 その異様な光景を見ながらも訓練された兵士達は魔法を打つ手を止めず、時には剣や槍などで攻撃をしていたがしばらくするとキメラの体の一部が動き出しそこに先程食べられた兵士の顔が浮かび上がってきた。


「痛い、痛いよ!やめてくれよ!助けてくれ!」


 さっき食べられた兵士の顔で泣き叫びこちらの戦意をそごうとして来ていたが兵士たちはそれに耐えながら戦いは続いていた。このキメラ作ったやつはほんとにやばいな。


「ねぇララさんここはディアーヌさんを連れて一度退却するのはどうでしょう?」


 そう僕が口にするとディアーヌが口を開いた。


「いえ、私はグレイスドールの当主の代わりとしてここへ来ておりますので逃げるわけにはいきません。シュウ様こそお逃げください。この戦いに付き合っていただく理由はございません」


 そう言うとディアーヌはガンドスキメラへ向けて炎の槍を複数放った。


「こちらこそディアーヌさん達にはたくさん助けてもらったから最後まで戦いますよ」


「シュウ様ありがとうございます」


 そんな話をしていると偽ガンドスがまた沢山の触手を僕たちの方へと飛ばして来た。


「みんな気をつけて!捕まらない様にね!」


 僕はそう言いながら爪を伸ばし触手を切り裂き、間に合わないところはディアーヌ達が魔法で攻撃してくれていた。


 僕たちに攻撃が集中している隙きに兵士たちはかなり魔法や物理攻撃をしていたが回復速度が早くなかなか決定打を打てずに戦いが拮抗していた。


僕はなんとか出来ないかと触手を防ぎながらジリジリ前へ進んでいると足元が音を立てて崩れた。


「シュウ様!」


 床が崩れたと思ったらそこから沢山の触手が現れ僕は触手に捕まり釣り上げられてしまった。


「やばい!死ぬのはいいけど融合とかどうなっちゃうの?一生あれと一緒?嫌すぎる!!」


 なんとか抵抗しようと触手を切ったり口呪印さんで噛みちぎったりしたが量が多くついにキメラの上まで来てしまった。下には気持ち悪い大きな口が開いていた。


「シュウはまた食われてるのかよ」


 もうだめかと思ったその時頼もしい声が聞こえ、兵士の間からよく知る人物が飛び出してきた。


「団長!」


 マルス飛び出してくると僕が捕まっている触手をあっという間に全部根本から切って捨てると落ちる僕の襟首を持って口の中に落ちるのを止めついでに偽ガンドス本体にも斬撃を放った。


 切られたことで偽ガンドスのいたるところから赤い血が飛び出し崩れて来ていたがマルスが僕を担いで離れながら口を開いた。


「だめだな、この剣じゃ届かないな」


 マルスの剣を見るとその辺の兵士が持っているのと同じ剣だったが刃こぼれがすごく先端の方も折れてしまっていた。


「俺の剣があれば何とかなるんだけどな、まぁ城内じゃ持ち歩けねーし取りに行く暇もなさそうだ。それにしてもありゃ何だ?中にやたら硬い部分があってこの剣じゃ通らねぇぞ」


 マルスと一度ディアーヌ達の所に戻りながらガンドスのことを簡単に説明した。


「それでどうする?多分その辺の剣じゃ止めまではさせねーし、シュウなんかあるか?無けりゃぁとにかく切り刻んで見るけどよ」


「そうだね、多分だけど僕が知ってる奴と同じなら核があるはずなんだけど、それを壊せば倒せると思うよ」


「はぁ、あの大きさだと核を見つけるまでかなり時間がかかりそうだなぁ」


「それは大丈夫、多分だけど場所はわかるよ。さっき団長が切り付けた時に、見えない光の帯が一箇所から体全体に伸びていって修復していたから多分そこにあるとおもうだんけど」


「そうか、じゃあ俺が全部切るから後はシュウに任せていいか?」


「了解!」


 そう言うとマルスはその辺に倒れている兵士から剣を借りて両手持ちでまるでその辺の雑草を刈るかのように気軽に切り進んでいった。


 僕も急いでその後を追うと触手が回り込んで僕の方にも来たがディアーヌ達が撃ち落としてくれた。


 偽ガンドスはマルスを警戒しているのかかなりの量の触手を伸ばし攻撃していたがマルスは全てを流れるような動きで切り裂きながら進み、やがて偽ガンドス本体にも切りつけ始めた。


 僕もそれに合わせてマルスの後ろを飛び出し、目呪印さんに力を込めるとその瞬間世界に色が失われていった。


 色が失われた世界の中、何本もの触手が僕に向かって来ていたがその殆どをマルスが切り捨て、僕は残りの触手を何本かはくぐり抜け身体に向かってくる物を口呪印で吸い込み、残りを爪呪印で切り捨てると核があると思われる場所まで到着した。


 僕は爪呪印を上段から核のある場所に振り下ろそうとすると偽ガンドスも気がついたのか眼の前の身体部分に大きな口が開き僕に噛みついてきた。それを僕は右の爪呪印を振り下ろすのをやめず口には左手を突っ込み口の中で爪呪印を伸ばしそれ以上飲み込めないように固定するとゴリッと言う嫌な感触と左腕が食いちぎられる痛みが襲ってきた。


 相変わらずなれない身体の痛みに耐えながら僕は右の爪呪印を振り切ると一瞬なにか硬いものに当たったような気がしたがそのまま通り抜け、その瞬間世界に色が戻っていった。


「ぐあぁぁぁぁ!」


 僕は千切れた左腕を抑え痛みで転げ回っていると偽ガンドスの声が聞こえてきた。


「グアァァァ!ギザマァ何をしたぁぁぁ!力が、力が抜けていくぅぅぅぅぅ!」


 痛みに耐えながらチラリと偽ガンドスの方を見ると、身体中がボコボコと波打ちながら収縮していき、最後は斜めに線が入った四角い灰色のキューブになった。


 



「このキューブはレプリカじゃ無いわ」


 今僕たちは場内の一室にて、疑いが晴れて解放された師匠に残った灰色のキューブを見てもらっていた。


「え?!じゃあ、もしかしてこれが本物のキューブだったの?!」


「違うわ、これはキューブですら無いわ。何者かがキューブを真似て作ったレプリカコピーって所ね」


「レプリカコピー!?そんな事が出来るの?」


 師匠が手の中でレプリカコピーをクルクル回しているとディアーヌさんが口を開いた。


「私そのキューブを見た事がありますわ」


「どこで見たの?」


 師匠がキューブを手渡しながらディアーヌさんに尋ねた。


「うちの領地に魔石を研究しているハイングラードと言う者が居るのですが、一度研究室にお邪魔した時に多分これと同じ物があったと思います」


 そう言ってディアーヌは師匠にキューブコピーを返した。


「それは一度訪ねてみる必要がありそうね」


「じゃあ次はグレイスドール領へ行くの?」


「それでしたら当家の船で一緒に行きませんか?」


 ディアーヌさんが帰る時に一緒についてこないかと提案してくれた。


「海経由だと早く帰れるの?グレイスドールってそういえば海に面してたね」


 漂着した海を思い出していると、僕の疑問にはララさんが答えてくれた。


「シュウ様、当家の船は海ではございません空です。飛空艇でございます」


「飛空挺!それはすごいね!」


 まさかのオーバーテクノロジーがこんな所で体験できるとは。


「魔王領でも飛空挺を持っているのは魔王様を除けばグレイスドール家だけだわ。そうね、もし乗せてもらえるならありがたいわね」


 師匠も飛空挺に興味があるみたいで次は空の旅になりそうだ。


「と言うわけで乗せてもらっても良いかな?」


「勿論ですわ!シュウ様とティーレシア様が乗って頂ければ光栄ですわ」


 ディアーヌが手を打って嬉しそうにしているとララさんが横から口を開いてきた。


「飛空挺の出発は明後日でございますが予定通りでで大丈夫でしょうか?」


「大丈夫よ、乗せてもらうんだからそちらに合わせるわ」


 師匠が承諾するとディアーヌさんが頭を下げて言った。


「それでは明後日の朝にお迎えに上がりますので、本日はお力をお貸し頂きありがとうございました、このお礼はグレイスドール領にて必ずお返しいたします」


「いやいや、こちらこそディアーヌさんが居なければ師匠に会う事も出来なかったし、お城にも入れなかったんだ。お礼を言いたいのはこっちだよ、ありがとうございました」


 その後、僕達はマルスにお礼を言ってホテルへ帰り、当日まで師匠は殆どをギルドで過ごしあっという間にその日がやって来た。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る