第12.5話 猿と不死身と面倒事
最初はまたかと思った。
あの日俺がトレーニングを終えシャワールームから出てくると、この施設の責任者であり獅子の獣人のガーメットが人間を連れて歩いていた。
面倒ごとの予感がしたので部屋へ逃げようとしたらやっぱり捕まってしまった。
「おいエイドルお前がコイツに教えてやれ仲間だろ」
「チッ、クソッ」
俺たち猿の獣人に対して人間に似ているって言うのは昔から根付いている差別だ。
そしてガーメットはいつも人間の奴隷を俺に押し付けてきやがる。
仕方なくガーメットに従い押し付けられた人間を見ると肌の色が白い黒髪黒目の線の細い鍛えられてない身体だった。正直人間の顔の区別はつかないが雌か雄か分からないような弱そうなやつだ。
「俺はエイドルだ一度だけ説明するからついて来い」
押し付けられて仕方ないので一通りは施設の事を説明した。
その人間と話してみた印象としては覇気は無いが理解は早く色々諦めている様な印象だった。
こう言うすべてを受け入れる諦めてる人間はすぐ死ぬ、こいつもいつものように次の試合で死ぬだろう、人間の奴隷はたいてい使い捨てだしな。
そう思っていた。
それがどうなってるんだこいつは?
「すみません、昨日服をボロボロにしてしまって。新しいのもらえないでしょうか?」
いやまて、昨日食堂でガウルともめてボロボロだったはずだ。とても一日で治るような傷じゃなかったぞ、腕も折れてたし血も流れすぎていた。
「やっぱりもらえない感じですか?」
「お前生きてたのか?昨日あんなにボコボコだったのに、俺は死んだと思ってたよ」
「大丈夫でした。僕意外と丈夫なんですよね」
丈夫とかそんな次元じゃないぞ、正直同じ生き物かどうかもあやしい。
そしてそれが確信に変わったのは次の日だった。
その日人間の試合があり、内容はデッドオアアライブ、死ぬか殺すかだ。まぁ大抵は十三番が殺されて終わる。賭けの対象も死ぬまでの時間だ。
それが狼三匹だ。普通は二匹だったが弱そうな人間だったので特に早く死ぬのを期待して三匹だったが勝ちやがった。
まぁしかし勝ったのはいい、人間にも強いやつもいる。だがこいつはそんな話じゃなかった。
医務室に連れて行かれて応急処置をしたが手足はちぎれかけていたし、首の骨も折れていた。
なのに次の日何でもない様に飯食ってやがった。
朝からガーメットに鍛えて使えるようにしろと言われて死んだのに何を言ってるんだと思い、エリザベスにはもう治ってると言われ半信半疑だったがホントにこいつの体はどうなってるんだ。
正直人間は嫌いだ。でもどれだけ鍛えても壊れ無い戦士には興味が有る。
今まで色々な戦士を鍛えてきたがこんな面白奴が人間でいるとはな、これは忙しくなりそうだ。
「そういえばあいつにも声をかけておかないとな」
こういった話は耳に入れておかないとうるさいからな。
ああ、それにしても毎日ぶっ壊れるまで鍛え続けたらいったい何処までやれるようになるんだろうな。
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