第4話 冒険者ギルドにようこそ!
俺たちは湖の畔での休憩を終え、目的の街を目指し森を歩いていた。
「それにしても、さっきのあれはデカかったな~」
ジードのいうとおり、カイザートラウトの大きさには驚かされた。
前世で見たクジラと同じくらいだったんじゃないか?
「そうね。たしかに驚きの大きさだったわ…
そう言ったリアの方を見てみると、その視線は俺の立派な胸元へと向かっていた。
よく見れば、ニーアにも見られてる…。
「お、おい!リア、何言ってんだ!!」
「だってケビン、ほんと凄かったのよ??」
「そうですわね、あれは…」
リアとニーアとは対照的に、男性陣は必死に俺の胸元から視線を外している。
「まったく…、バカなことを言ってないで先に進むぞ!もうまもなく街に着くんだ」
「は~い」
…といいつつ、まだ視線を感じるんだが。
前世で、こんなに女性から見られることなんてなかったからな……ムズムズしてしまう。
それから10分ほど進むと、森の出口にたどりついた。
視界が開け、石造りの壁に囲まれた街が見えてくる。
街の門の前には、入場者の列ができていた。
ここが異世界で初の街だ!そう考えるとワクワクしてくる。
「そういえばこの街は入場時に銀貨1枚かかるが、フーラァ大丈夫か?」
これについては心配ご無用だ。
転生してすぐにアイテムボックス内を確認したところ、剥ぎ取り用ナイフの他にこの世界の通貨も
収納されていた。
ヨカテル様が気をまわしてくれたらしい。…ありがとうございます、ヨカテル様!
収納されていた通貨は、金貨が10枚、銀貨が10枚、銅貨が50枚だった。
ちなみにこの世界の貨幣を、前世で換算すると次のようになる
金貨1枚→1万円、銀貨1枚→1000円、銅貨1枚→100円
銅貨10枚で銀貨1枚分、銀貨10枚で金貨1枚分と、とても分かりやすくなっていらしい。
金貨の上にも一応、白金貨というのがあるらしいが…
金貨100枚で白金貨1枚…つまり日本円で100万円に相当するらしい。
まあ普通に生活をしていたら、そうそう白金貨にお目にかかることはないだろう。
「はい、手持ちはありますので心配ありません。」
「そうか、わかった。お、丁度俺たちの順番が回ってきたみたいだ。さあ、いこうか!」
門番に銀貨1枚を渡し、門をくぐる。
ケビン達5人は、銀貨1枚を渡す代わりに薄い板のようなものを門番に見せていた。
「ケビンさん、それは??」
「ああ、これは冒険者ギルドのギルドカードだ。冒険者はこのギルドカードを提示することで、ほとんどの街の入場税が免除されるんだ。」
なるほど、それはいいことを聞いた。
「フーラァは冒険者登録をまだしていないんだったな、このあと冒険者ギルドに向かうからその時に登録するといい」
「そうですね。今後の活動に役立ちそうですし、そうします!」
「エルフの里をでたフーラァにとって、ここが初めての故郷以外の街なわけだな。」
ケビンが快活に笑い、言葉を続ける。
「ようこそ!木こりと冒険者の街、ヒタボへ!!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ケビンによればこのヒタボという街は、林業が盛んなようだ。
街を囲む森林から木を伐採し、他の街に販売したり、家具として加工したりするらしい。
また森に生息している魔物の数が多いこともあり、ケビン達のように冒険者でこの街を拠点にする者も多いという。
街には、レンガ造りの家と木造の家が混在してる。
前世で言うところの、中世ヨーロッパに近いのかもしれない。
そんな街並みを眺めながらケビン達に連れられ、街の中心付近まで足を進める。
するとひと際目を引く大きな建物が見えてくる。
…そうか!ここが!
「フーラァ、ここが冒険者ギルドだ」
「これが…冒険者ギルド!!」
ああ、まさにゲームや漫画にでてくる冒険者ギルドそのままだ!
ギルドの扉を入って正面の奥には受付のカウンターがあり、6人の職員が働いている。
扉を入って右手の壁には、一面にたくさんの紙が貼ってあるな。
どうやらあれら1枚1枚が冒険者への依頼のようだ。
依頼書の張られた壁の真逆、ギルド入り口の左側にはホールが広がっており、たくさんの椅子とテーブルが並んでいる。
そこでは、冒険者たちが食事を囲みながら談笑していた。
こちら側は酒場になっているのか。
依頼を完了し、その報酬を使ってここで酒を飲む。なのとも上手くできているものだ。
「フーラァ、正面のカウンターの一番左が新規登録受付だ。そこで先に冒険者登録してくるといい。
俺たちは先にきてるトマスさんと合流して、依頼書に完了のサインを貰ってくるから。」
なるほど、先に街へ向かった商人のトマスも冒険者ギルドまで来ているのか。
「わかりました。それじゃあ私は、まず冒険者登録をしてきますね」
「ああ、お互いの要件が終わったらゴブリンエリート討伐の報酬と魔石の換金をしよう。それと今回のゴブリンエリートに襲撃されたことについて、ギルド職員に報告をしたい。その時はフーラァにも参加してもらいたいんだが?」
ケビン曰く、普段あの森にゴブリンエリートはほとんど姿を見せないという。
それが今回は20体もの群れで、ケビン達に襲い掛かってきたわけだ。
ケビンは、森に何か異変が起こっているのではないかと考えているらしい。
「わかりました。その報告には私も参加して証言しますね」
「ありがとう、助かるよ!それじゃあ、また後でここで」
「はい、また後で」
ケビンと一度別れ、受付カウンターに向かおうとしたのだが…
なんだろう…凄く視線を感じる。
こちらを値踏みするような、探るような視線が多い。
まあ、それもしようがない話か。聞けばこの辺りでエルフを見かけることは稀だというし。
それに今のこの容姿は少し…いや物凄く目立つ!
前世でこんな銀髪美少女が町を歩いていたら、色恋に興味の薄かった俺だって一瞬目で追ってしまうだろう。
こちらに視線をよこすだけで特に実害はないし、気にしなくて大丈夫かな?
ええと、一番左のカウンターだったか?とりあえず登録を済ませてしまおう。
ケビンに聞いたとおりに、左端のカウンターへとやってきた。
受付嬢と目が合うと、
「…うわぁ、綺麗…。」
受付嬢がうわごとをポツリと呟いた。
「…えっ?」
「し、失礼いたしました!冒険者ギルド ヒタボ支部へようこそ!」
受付嬢は、慌てて誤魔化すように挨拶から始める。
「こ、今回担当をさせていただきます、ギルド職員のリディアと申します。」
「私はエルフのフーラァ。よろしくお願いします」
ほんと転生してから、容姿をよく褒められるな…。
まだ褒められることに耐性がなくて、こちらもどんな反応をしていいのかわからん。
前世じゃ女性と目を合わせれば、目をそらされるか警戒されるかだったしな~。
褒められるのは、まあ悪い気しないんだけど…。
「フーラァさんですね。ご用件は、冒険者ギルドへの登録でよろしいでしょうか。」
「はい、登録をお願いします。」
リディアが一枚の記入用紙を差し出してくる。
「承知致しました。それではまず、こちらにお名前とジョブをご記入ください。」
記入用紙に視線を移す。
そういえば俺、この世界の文字わからないぞ?
言葉が普通に通じているから、すっかり忘れていた。
そんな心配をしていたのだが、書かれた文字に意識を向けると意味が頭に流れ込んでくる。
おおお、なんとも不思議な感覚。自動翻訳機能が頭に搭載されているかのようだ。
これで読みに関しては問題なくなったな。
書くほうはどうしたらいいんだ?とりあえず日本語で書いてみるか。
悩んでもしかたないので日本語で記入しようとしたのだが、これまた不思議なことに書こうとした自分の名前が、自動的にこちらの文字に変換されていく。
この体…便利すぎる!!
これで読み書きの心配はなくなってしまったな。
よし、名前の次はジョブかでな。
ジョブ、ジョブねぇ…。
ヨカテル様に貰った知識にたしかあったな。
基本的なジョブをあげるなら、『鉄の拳』の戦士、重戦士、スカウト、魔法使い、神官あたりが一般的だろう。
その他にも聖騎士や錬金術師、モンスターテイマー、魔法剣士etc.さまざまなものがある。
その中から俺の戦闘スタイルを当てはめるなら…
「ご記入ありがとうございます。なるほど、フーラァさんのジョブは゛魔法拳闘士゛ですね」
魔法拳闘士は名前のとおり、自分の肉体と魔法を組み合わせて戦うジョブだ。
俺の戦闘スタイルにピッタリだろう。
「エルフの方で魔法拳闘士とは珍しいですね」
「そうなんですか?」
「はい。この街ではエルフの方じたい珍しいですが、だいたい皆さん魔法使いや弓使いをされてますね」
この世界のエルフは、前世の空想上のエルフとだいたい同じような感じみたいだな。
「それでは次に、冒険者登録には銀貨3枚が必要ですので、ご準備をお願い致します。」
登録に銀貨3枚、日本円で3000円か。まあ妥当な値段かな。
アイテムボックスから銀貨3枚を取り出す。
「フーラァさんはアイテムボックスのスキルをお持ちなんですか?」
「はい、手荷物はそこにしまっているんです」
「冒険者でアイテムボックス持ちの方はあまりいないので、パーティ募集の際などにはきっとアピールポイントになりますよ!」
たしかに、森などでいつ戦闘になるかわからない冒険者にとって、このアイテムボックスはかなり便利なスキルといえるだろうな。
用紙の記入を終え、次の手続きに進む。
「では続きまして、こちらの水晶に手を置いていただけますか?」
次にリディアが差し出したのは、占い師が持っていそうな丸い水晶だった。
言われるままに水晶に手を置くと、水晶の中心が青色に光った。
「はい、ありがとうございました。問題ありません」
「この水晶は?」
「これは触れた人の犯罪歴を鑑定できる水晶になります。今までに何もない人であれば青色に、
前科がある人だと赤色に光るようになっています。」
へー!この世界にはそんなものまであるのか!
たしかにこれがあれば、犯罪者が身分を偽って冒険者になることを防止できるな。
ひと通りの手続きは今の水晶で最後だったみたいだ。
その後はリディアから冒険者ギルドについての説明を受けた。
その内容はこんな感じだ。
まず冒険者ランク。これは下がFから上はSまである。
登録したばかりの俺はFランクからスタートする。
様々な依頼をこなしていくことで、ランクアップができるらしい。
次に受けられる依頼は、自分のランクか1つ上のランクまで。
ギルド内の依頼掲示板から選んで、依頼を受けていく。
もし依頼に失敗した場合は違約金が発生するようだ。
また殺人・略奪などをした場合は、ギルドから除名されたり、指名手配されることもあるのだとか。
あとは、パーティの斡旋なんかもギルドでしてくれるみたいだな。
「…と、以上が冒険者ギルドについての説明になりますが、何かご質問はありますか?」
「いえ、今のところは大丈夫です」
「承知しました。では、ギルドカードをお作りしますので少々お待ち下さい」
リディアは専用の機材を使い、ギルドカードを作り始める。
ものの5分程度で、俺のギルドカードが完成した。
「それではこちらが、フーラァさんのギルドカードです」
「ありがとうございます。今日から依頼を受けることは可能ですか?」
「はい、可能です。ですがフーラァさんにはまず、゛信頼できる゛パーティを組むことをオススメします」
「…??冒険者でソロ活動する方はいないんですか?」
「い、いえ!そういうわけではないのですが…その~、フーラァさんのような女性がソロで活動していますと…」
…と、リディアの話を聞いている途中で背後から誰かが近づいてくる…。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
後ろから近づいてきたその何者かが、俺の肩に手をまわしてくる。
見た目は前世でいうところの、如何にもやんちゃしてますって感じの男。
正直、あまり生理的に好ましくないタイプの奴だ。
そいつはこちらの反応を気にするふうでもなく、リディアの話を遮って話し出した。
「君みたいなさぁ~?可愛い女の子が一人で活動してっと、悪ぅ~い奴に騙されたりさぁ?そういうのがあるからリディアちゃんは心配してんのよぉ~」
男は聞いてもいないことを、ペラペラと話し続ける。
その視線は俺の胸元へと注がれている。まったく、隠す気もないんだな…
「俺もさぁ?君みたいな可憐な女の子がそんな目にあうのは許せないんだよねぇ~。だからさ?君、うちのパーティに入りなよ!ねぇ?」
「ちょっとザッコスさん!新人冒険者への強引な勧誘はご遠慮ください!!」
「いやいや~強引になんてしてないって~。俺はただ彼女が心配なだけよ?先輩冒険者として、駆け出し冒険者を支えたいっていう善意100%じゃな~い」
そしてそのザッコスと呼ばれている男は、俺にだけ聞こえるように言葉を続ける。
「エルフの女の子がさぁ?故郷をでてきて冒険者になるってことはさぁ?出稼ぎにきてるとかでしょう?故郷の家族のために。でもさぁ~女の子がソロで冒険とか危険がいっぱいよぉ?」
俺の肩に回されたザッコスの腕に、より力が入るのを感じる。
ていうかコイツ、ちゃっかり胸にも軽く手を当ててきてるじゃねえか。
「そこで!この俺っちのパーティに入ってもらうってわけよ~。うちの野郎共は、みんな女の子には優しいんだぜ?」
そう言いながらザッコスは酒場の一角へと視線を向ける。
視線の先にはザッコスのパーティメンバーと思われる、チャラついた雰囲気の男が3人。
酒を片手に、こちらをニヤニヤしながら見ていた。
「冒険の時もさ、重い荷物なんかは俺たちで持つし。戦闘のときも前にでなくていいからさ。まあその代わり、冒険から帰った夜にはちょこ~っっと俺たちのお願いを聞いてもらうけど」
ザッコスは俺に向ける厭らしい視線の色を濃くする。
「でもさあ冒険で大ケガするかもしれないリスクに比べたら、それくらいは許容範囲内だと思わない??」
なるほど、こうやってコイツらは初心者ソロの女性冒険者を食い物にしているわけか。
金策に困って冒険者になった女性が相手なら、このやり方で通じることもあるのだろう。
「で、どうよ?俺たちのパーティに入らない??」
こんなもの、答えは初めから決まりきっている。
「せっかくですが遠慮させていただきます」
こんな奴らとパーティを組む気はない。
あと、この男どもは生理的に受けつけない。
「え~なんでよ??楽してお金稼げるんだよ??断るとかないわ~。ねぇ、考え直さない??ほら、一度お試しみたいな形でもいいからさあ~」
「はあ…。なるほど、女性がソロで冒険者をするとこういう面倒くさい輩に絡まれる。だから信頼できる相手と早めにパーティを組めってことだったんですね、リディアさん」
「え…あ、その……」
「え~面倒くさいとか酷くない??こっちは善意でいってるんじゃん」
「そうですか、ですが結構です。あなた達とパーティ組む必要性を感じません」
「え~なんでよ~。これでも俺らDランクの冒険者なんだぜ??頼りになるよ??」
くどくど、くどくど…。いい加減、イライラしてきたな。
「はあ…、ハッキリ言わなきゃわかりませんか?」
肩にかかっていたザッコスの腕をはらい、ザッコスの正面に立つ。
一呼吸入れ、ザッコスの仲間たちにも聞こえるように…
「あなた達みたいな、初心者を食い物にするしか能のない雑魚とパーティを組むなんてありえないって言ってるんです」
「あ、あれ~おかしいな~?今、俺たちのことを雑魚って言ってなかった~?」
「耳まで弱いんですか?雑魚は引っ込んでろ!、そう言ったんです。」
ザッコスは額に青筋を浮かべ、顔を真っ赤にして激怒した。
「このクソ女が…!こっちが下手にでてりゃあ調子に乗りやがって!!」
「へえ、あれで下手に出ていたんですね。もう少し言葉の使い方、勉強した方がいいですよ」
「クソが!!いっぺん死んでこいや!!!!!!」
怒りが頂点に達したザッコスが殴りかかってくる。
うわぁ…遅い拳だな~。
迫ってきたザッコスの右ストレートを、こちらは左手で軽く受け止めた。
「んな??!!!!女の細腕で俺の攻撃を受け止めるだと!!??」
「リディアさん、たしか冒険者同士の私闘はご法度。でも相手から襲われた場合には、反撃してもいいんでしたよね?」
「え、ええ。そうですね」
俺がザッコスの拳を容易く受け止めたことに唖然としながら、リディアが答える。
ふむ、これで正当防衛は成立したわけだな。
まあ最後の方はこちらも挑発を交えて、この展開へと誘導したんだが…。
大義名分は得たしそろそろこちらも反撃するか。
地球にいたころ、師事していた中国拳法の師匠にはよく言われたもんだ。
敵対者は徹底的に、完膚なきまでに叩きのめせ!と。
二度とこちらに敵意を向けないように、心まで砕け!とも。
まずは受け止め掴んだままだったザッコスの拳を、力任せに握りつぶす。
メキッッッ!
「んがっぁぁぁ!?」
ザッコスの口からは、苦悶の声が漏れる。
大の男が情けない声をあげるなよ、まったく。
ザッコスの拳を握りつぶした左手はそのままに、右手ではキツネの形を作る。
「よいしょっと」
握りつぶした拳をそのまま手前に引くことで、ザッコスの姿勢を傾かせた。
体勢が崩れ、前のめりになるザッコス。
そのザッコスの右肩関節めがけて、作ったキツネの口部分を突き立てる。
「いぎぃっ!!」
ザッコスの悶絶など気にせず、突き立てた指先に力を込めていく。
ここまでくれば俺が何をしようとしているか、ザッコスでも気づけたようだ。
「ま、まって!やめ、やめて!やめてくれぇぇぇぇぇ!!!」
絶叫するザッコスに優しく微笑みかけ、
「いやです」
突き立てたキツネの口を、躊躇なく開いた。
ゴキンッ!という音と共に、ザッコスの右肩が見事に外れる。
その後は素早くザッコスの右腕を背中にまわし、足払い。
腕をかためて、地面に押し付け拘束する。
ザッコスから潰れたカエルのような声が出る。
「悪かった!俺が悪かったからもう許してくれ!!!」
涙目になりながら、ザッコスがこちらに顔を向ける。
そのザッコスを威圧するように、睨みつけて
「許してあげるのは今回だけです。今後同じようなことを誰かにしたり、私を害そうとしたら…」
言葉を切り、より威圧感を強める。
ついでに威圧には魔力も載せておくか。
すると、なんとザッコスは白目をむいて気絶してしまった。
ちょっとやり過ぎたかな…?いやいやいや、敵に対しては徹底的にやらなければ。
「はぁ…。そこのパーティメンバーの人。この男、連れっててください」
今までの一部始終を見ていたためだろう、ザッコスのパーティメンバーたちも怯えてしまっている。
男たちは気絶したザッコスを抱え上げ、ペコペコとこちらにお辞儀しながら冒険者ギルドから出ていった。
あれだけ痛い目をみれば、今後はもう少し考えて生きていくだろう。
肩の脱臼や折れた指は回復魔法で治せるかもしれないが、刻まれた恐怖はそう簡単に消せないはずだ。
「リディアさん、お騒がせしてしまってすみません」
「い、いえ!正直なところ最近のザッコスさんたちの行動には、許容できないものもありましたので。
あんな感じでも冒険者としてはDランクで、それなりに実力があったので私からは注意くらいしかできなくて…」
それはそうだろうな。冒険者ギルド職員とはいえ、彼女はいたって普通の女性みたいだし。
荒事の解決にはむいていない。
「フーラァさんには、なるべく早く信頼できるパーティを組むようにとオススメするつもりでしたが、
先程の動きを見る限りソロでも心配はなさそうでしたね」
「ええ、私自身もソロでのんびり活動をしていくつもりです」
「承知しました。登録手続きは以上となります。」
これで俺もやっと冒険者になれるわけだ。
「フーラァさん。冒険者活動、頑張ってくださいね!」
「はい!ありがとうございます!」
ひと騒ぎ起きたせいで、どっと疲れてしまった。
まあでも。さっきの騒動のおかげで、ギルド入り口から向けられていた値踏みするような視線はほとんどなくなったし。
結果オーライってことにしておくか。
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