第6話

(あれは・・・)


狩りを終えた俺はダンジョンから出る。



「おわった~」


偶然、腕を伸ばしている、主人公エリーの姿を見かける。


どうやら、彼女もダンジョンに来ていたようだ。


このダンジョンは中級者には程よい難易度であり、今の彼女には合っているのだろう。



(まぁ、俺が行っていた隠しダンジョンは辛いだろうけど・・・。


 それはおいとくとして・・・)



以前に比べて、彼女は成長したってことになる。


そうじゃないと、このダンジョンはクリアできない。



(おまけにだ・・・)


俺は彼女の近くに好青年がいるのを見かける。



「いや~、君の魔法は素晴らしかったよ」


そう言っている彼のことを俺は知っている。


攻略対象のエドワード王子だ。




王家の者だが身分を隠し、今は修行しているという設定だ。


そんな彼は自分と同じようなクエストを受注している主人公とエリーと何度かあっているうちに、


一緒にクエストをこなすようになる。


そして親密度が高まっていき、やがて二人は結ばれハッピーエンドとなるのだ。




(ゲーム通り、主人公エリーは王子様と仲良くなっているようだ。


 無事、ハッピーエンドに向かってるな)


レベルアップもでき、さらに彼女達がうまくいってる様子も見ることができた。


俺は大満足して、その場を後にする。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


数日後


「やっほー!!」


主人公エリーは村に帰って来ていたようだ。


なんと、俺の目の前にいる。



「何でここにいるんだ・・・?」


「ちょっと、『お帰りなさい』とかいいなさいよ!!


 久しぶりに会って言うことがそれ!?」


怒っている彼女には申し訳ないが、俺は驚くしかなかった。



王子と仲良くなっていくエリーは、彼と交流を増やす。


こんな時期に村に帰ってくるということはゲームでは無かったのだが・・・。



「今日は村に何か用事でもあったのか?」


「里帰りにするのに、特別な理由いらないでしょ。


 まさか、アンタのために帰ってきたとでも思ってるの・・・?///」


なぜか彼女は顔を赤くして聞いてくる。



「そんなこと微塵も思ってないけど」



ゲシッ


なぜか俺は彼女に軽く小突かれた。



「なにするんだよ」


「今日はあなたにお礼することが帰って来た理由の1つなのよ。


 この前、私にリングをくれたでしょう?


 その日以降、魔法をうまく使えるようになったの!!」



「そりゃ、あのリングは魔法強化するやつ」


「いや~、まさか気の持ちようだけであれほど変わるとは思わなかったわ」


俺の話を遮って、エリーは話す。



「心をこんなに動かすことができるんだね、レプリカでも・・・///」


彼女はリングを見ながら、話す。


「いや、それは」


「はい!!」


再び、彼女は俺の話を遮って、手を俺に向けて伸ばす。


手のひらにはリングがあった。



「これは・・・」


「はい、これは本物のリングだよ」


「おま、なんでこんな高価なものを・・・


 というか、これを何で今出した?」


「まぁ、受け取りなさいよ」


「いや、俺じゃなくてお前がつけろよ」


「いいから!!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「じゃあ・・・」


拒否したが、彼女に何度も押し付けられたので受け取った。



「これ魔法の効果アップするやつだろ。


 お前が持っている方が絶対にいいような・・・」


「いいの、私は今ので十分に効果があるから・・・///」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


村人に呼ばれた彼女は、俺にリングを渡すと向こうへ行った。


「これでおそろいだからね!!///」と言い残す。



やれやれ、まったく意味がわからないぜ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る