第5話

「あっ!!」


周りに見られて恥ずかしかった俺はエリーを離す。


それに対して彼女は頬を膨らませる。


「こっちこいや」


彼女の手を引っ張って、急いで人気のないところに連れて行った。


ーーーーーーーーーーーーーー


「ちょっと女の子が泣いて抱き着いたのに、すぐ離すなんてひどくない?」


「いや、あんなところでやられると恥ずかしいし・・・」


「はぁ・・・」


エリーは涙目に怒っていたが、少し落ち着いてきた。



「まったく、あなたったら全然変わらないよね。


 私はクエストがうまくいかなくて落ち込んでいるのに」


「そうなのか・・・」


「そうよ。村のみんなに期待されてるのに、結果をだせなくて悔しいわ」



彼女がうまく能力を引き出せないのは、たぶん俺が覚醒イベントを阻止したことに関係あるだろう。


もし違ったとしても、彼女が結果的にハッピーエンドを迎えればいいことだ。



(そこでだ・・・)



俺はバックからリングを出し、彼女に渡した。



「これは・・・?」


「魔法を強化するアイテムだ。

 

 装着すれば、エリーの魔法をうまく引き出してくれるはず」



彼女がモンスターを倒せれば、レベルアップしていって、基礎能力が上がる。


そうすれば、クエストをクリアでき、元の物語の流れに近づけるはずだ。



「ありがとう!!


 ・・・でも、これどうやって手に入れたの?」



(うっ・・・)



魔法強化アイテムは高価なものであり、普通の村人は持っていない。


そんなものを俺から渡されたら、彼女が疑問をもつことは当然だ。



(そんなめんどくさい設定のこと、忘れてたぜ)



「これ、レプリカでしょ?


 私のことを少しでも応援してくれようとする気持ちは受け取っておくわね・・・///」



彼女はうっとりした表情で、そのリングを指輪にはめた。



「いや、それはレプリカじゃなくてだな・・・」


「もう、そう強情を張っちゃって。


 わかってるから、大丈夫よ」



なんだかんだ、泣いていた彼女はニコニコしはじめる。



(まぁ、俺としてはつけてもらえれば、なんでもいいか)


その後、他愛のない話をして彼女と別れた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そして時はまた流れ・・・


俺はとあるダンジョンに来ていた。


やはり主人公エリーをハッピーエンドにするためには、俺のステータスを万全にしておきたい。


そのためには強いモンスターを倒して、レベルアップしておく必要がある。


今日はそのためにここに来たのだ。



(ここだな・・・)


俺はダンジョンの入口から少し離れた場所で、とある魔法を詠唱をする。


すると




ゴゴゴッ・・・



何もない壁から扉が出現する。



「さぁ、隠しダンジョンを攻略していきますか」


俺は扉を開いて、足を踏み入れた。

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