24*確かめたかったこと - 1
翌日、空は朝から大学に来ていた。
幸いにも今日の講義は午後からなので、それまでに琴音を知っていそうな人たちに聞き込みを行おうと計画していた。
昨夜、永瀬たちと別れてからどうにも気持ちが落ち着かず、自分なりにインターネットで調べてみたが、それらしき情報は見られなかった。
多少の寝不足気味ではあるが、こうしている間も、刑事である永瀬と茜は 休まず捜査を続けているはずだ。 空の性格上、そんな中じっとしてはいられない。
空が最初に訪れたのは、理工学部の学部長の研究室だった。
駄目もとで連絡を入れたところ、朝の講義前であれば時間があるという事だったので、会う約束をする事ができた。
研究室のドアを開けると、奥のレザーチェアに座る
「お待たせしてすみません、東郷先生」
「何も待ってなんかないよ。 それにしても、立花君とは随分と久しいんじゃないかな?」
「はい。 私が入学する前にご挨拶させていただいた時以来なので……2年以上経ちますね」
「2年か……。 老いぼれには意外と短かったな」
東郷は人懐っこい笑みを浮かべながら、白髪交じりの顎髭を擦り、「適当に掛けなさい」と促した。 空はそれに従い、東郷の席の斜め向かいにある1人用のソファに腰を下ろした。
「皆川君の件だったね」
話題の切り出し方に迷っていた空よりも先に、東郷の方から話を持ち出してくれた。
「はい。 先生が知っていることを教えていただけないでしょうか?」
「教えるも何も────君の方が良く知っているんじゃないのかな?」
東郷はチラリと視線だけを送った。
「……と言いますと?」
「皆川君のことは かなり調べてきているんだろう? 今さら私が話したところで、立花君にとっては飽きてしまう話ばかりだよ」
「それでも構いません。 飽くまで先生のお考えも交えて、当時のことを教えていただけませんか?」
東郷はゆっくりと腕を組んだ後、ぽつりぽつりと話し始めた。
「知っての通り、皆川君は8年前にこの学部に入学した。 先日亡くなった吉岡君とは同期になるし、親交が深かったと記憶している」
予想していた事ではあるが、改めて第三者に聞かされる事実に、空は若干の興奮を覚えた。
「大学での彼女の様子について、覚えていることはありますか?」
「『優秀な子だ』と
「性質?」
「周りの人を惹きつけるよな……人の運に恵まれているような……そんな子だったよ」
空は、頭の中に 写真の中の琴音の顔を思い浮かべた。
「そんな人が事件に巻き込まれるなんて……」
「私も信じられなかったよ。 当時私は学部長になったばかりでね。 まさか最初の仕事が、教え子たちの事件の対応になるとは思いもしなかったよ」
そう言った東郷の瞳は、悲しそうに伏せられていた。 その様子に、空は気まずさを感じながらも、恐る恐る尋ねた。
「教え子たち……とは?」
すると東郷は驚いたように目を丸くした。 何か変な事を聞いてしまったのだろうか────?
「す、すみません。 ちょっと違和感を感じただけで────」
「まさか気づいていなかったのか?」
「……え?」
東郷の言わんとする意味が分からず聞き返したが、空の中で何かが ざわざわと音を立てながら騒ぎ出した。
「皆川君の事件────あれは、最近亡くなった 若葉大関係者たちの犯行だったって 当時
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