23*the SECRET DATA
事件が起きたのは、今から7年前の1月31日。
記録によると、皆川琴音は同日21時頃、若葉大学から程近い場所で倒れていたところを、偶然通りかかった警察官に保護された。 その警察官こそが、当時警視庁の刑事課に在籍していた三嶋夏希だった。
その後、琴音自身の発言から、彼女が大学構内で暴行の被害に遭った事が発覚し、警視庁の刑事である三嶋と 当時の相棒である黒木が事件を担当するという異例の捜査が始まった。
琴音の積極的な捜査協力と証言を元に、被疑者はすぐに断定された。 だが被疑者は「同意の上だった」と 犯行を認めず、捜査は難航するかのように思われた。
だが、事件からちょうど1週間後の2月7日。 琴音が自宅で意識不明の状態で発見され、その後死亡が確認された。
被害者の死亡────最悪の結末を迎え、三嶋たちの捜査は、暴行事件から 琴音の死亡事件に転換される事となった。
ところが、当時2人の上司であった八重崎は、何故か捜査の終了を指示した。 それと同じタイミングで、琴音の死因が窒息死である事が判明し、自殺と断定された。
また、被疑者に関しては、証拠不十分として逮捕・送検される事もなく、事件は後味の悪い幕引きを迎えた。
永瀬は、ここまでの資料を読み終えた後、ある一つの推論に至った。
「これは……復讐だ」
そう呟きながら茜の様子を窺うと、茜は何とも言えない苦い顔をしていた。
「この暴行事件の関係者である三嶋さんと、八重崎部長のお子さんたち。 当時琴音さんと同じ学部に通っていたであろう吉岡麻美さん。 同じく 先生である菅原駿太さん。 ────全員が突然死してる」
「『突然死事件』は、琴音さんを中心に動いている……」
すると茜は、何かを思い出したかのように、突然ハッと顔を上げた。
「……次の被害者が出る」
「は……、え?」
「『すぐに次の被害者が出る』……黒木さんがそう言ってた!」
「黒木さんが?」
「えぇ。 だから、もしこの事件が復讐なら、犯人の恨みはまだ晴れてない。 まだ終わらない……」
萎むような弱々しい声が消え、部屋はしんっと静まり返った。 空調の音がやけに大きく聞こえる。
『突然死事件』は、琴音の事件の復讐────だがそれが分かったところで、捜査が進展する訳ではない。
犯人が男なのか女なのか、何も分からない。 殺害方法も一切分からない。 小さな手掛かりが点在するだけで、それらの繋がりが分からない。
何も分からない。 それでも────
「……手繰り寄せて、放すな」
「え?」
「『特捜室は、どんな些細なことでも逃さない。 手繰り寄せて、放すな』────よく黒木さんが言ってる言葉です。 正に今の俺たちに言われてるみたいだなー……って」
「ヨル……」
茜は、強く頷いた。 それを見た永瀬も、忘れかけていた意志を取り戻した。
「証拠は何も出てないけど、小さな手掛かりはある。 それを糸口にするのは、俺たちの得意分野ですよね?」
「当たり前でしょ。 存分やってやるわよ」
────だからその言い方はやめてほしい
・・・******・・・
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