第5話 襲撃

 俺たちは結構な距離移動した。

 そして一旦休憩していた。


「大丈夫か? 優愛」

「私は大丈夫。霊……だしね」

「そうだったな」

「湊こそ大丈夫?」

「俺も大丈夫。魔力で押してもらってるようなもんだから」

「そっか」


「っていうか、湊変わったね」

「え?」

「なんか性格とか、一人称とか」

「そうか?」

「一人称、俺になった。それに性格も、なんか暗くなった」

「まあ……そうかもな」


 優愛が死んだから、とは言えなかった。


「ねえ……私……迷惑だよね」

「え?」

「勝手に禁忌級の術式使って、その代償で死んで、湊の性格まで変えた上に、こんなことに……」

「そんなことない。迷惑なんかじゃ……ない。むしろ、戻ってきてくれてよかった。俺はそう思う」

「湊……」


 今しかない、と思い、俺は優愛を自分の方に引き寄せ、優愛の頬にキスをした。


「湊……?」

「俺、ずっと、優愛のこと好きだったんだと思う。失って気づいた。だから助けたんだと思う」

「湊……」


 今度は優愛がキスをして来た。しかも俺の唇に。


「優愛……」


 なんか体が熱い。これが青春ってやつか……と実感した。



「湊、そろそろ移動しよう。追われてもあれだから」

「そうだな」


 俺たちはさらに遠くへ移動を開始した。


 ◇◇◇


「いたぞ!!」


 魔術師が5人くらいいた。どの人も結構な実力がありそうだった。


「優愛、」

「うん」


 二人で術式を発動させた。この感覚は久しぶりだった。

 怪我くらいで済むように強さを調節して発動させた。痛がってる間に俺たちは逃げる。その場しのぎ的な感じだった。



 でもその場しのぎはその場しのぎ。ついに限界が来てしまった。


「湊……」

「優愛……ごめん」

「私こそ、ごめん」


「もう終わりだな。玖珂湊」


 そう言ったのはこの前尋問してきた上層部の魔術師だった。


「ちょっと待った!」


 という声が響き、何者かが空からってきた。


「え……」

「よう」


 降ってきたのは朝吹悠莉だった。


「え……なんで……」

「俺にできること、こんくらいだから」

「えぇ……」


「なぜ悠莉がここに?」


 上層部の奴も朝吹悠莉のことはよく知ってるみたいだった。


「まあ、人助けってとこだよ」

「人助け……? 違反者を助けるつもりか」

「まあ……あなたはそう思うかもしれませんが、この怪物は何も危害を加えてません。危害を加えてない怪物を排除するのは気が早いかと」

「それで死者が出たらどうする」

「だからって一概にやるのはどうかと思いますよ。それに、そういうのが防げてたらこんなに魔術師側の死者は出てません」


 悠莉の言葉で上層部の奴は何も言えなくなった。十分どうこうできてるじゃん……


 そして上層部の奴を含めてその魔術師一軍は俺たちに向けて術式を放ってきた。それを悠莉が全て受け止た。悠莉は反撃はしなかった。



「悠莉さん」

「なんだ」

「もういいです」

「は?」

「解決する方法はこれしかないですから。今後、僕みたいな思いをする人を、少しでも減らしてください。お願いします」


 そして、僕は、術式を自分に放った。すごい痛みを感じた。


「あ゛っ……」

「湊!」

「優愛……」

「なんで……こんなこと……」

「これでいいんだ……これで……」

「え……」


 僕は優愛を抱きしめた。そして段々意識が遠のいていった。

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