第3話 最恐の魔術師

 数日後 恐れていたことが起きた。

 上層部に呼び出しをくらってしまった。


「何の御用ですか」

「いや、君が怪物を宿しているというタレコミがありましてな」

「海亜ですか」

「まあ……そうだ」

「そうですか」


 別に宿してるわけじゃない。仲間にしただけだ。


「どうなんだい? 本当は。今言えば殺しまではしない」

「いえ。全くの噓です。勘違いでしょう」

「そうか。それならいいんだが」

「では。失礼します」


 海亜はこういうところがめんどくさい。だからあんま好きじゃない。


 俺は家に帰った。このことをいち早く優愛に言わなきゃと思った。



「おかえり。どうだった?」

「海亜に告げ口されてた」

「そっか……どうするの?」

「うーん……宛てはないわけじゃない。一応あの場は逃れられてたと思う。だから……」

「逃げなくてもいいってこと?」

「うん」

「そっか、やったー!」


 優愛はなぜか喜んでいる。多分その理由はこの部屋が20代一人暮らしが住むような部屋じゃないからだと思う。

 広さは少し広いくらいだけど、立地がいい。

 魔術師は命をかけて仕事をするから収入がすごくいい。まあ、人にもよると思うけど。



「それでさ、その宛てって、なに?」

「ああ……えっと……」


 俺はソファに腰掛けて話を始めた。


「……なんかここ数年で、やばい奴、すごい魔術師がいるみたいでさ、型破りなことばっかするっていうか……とにかくすごいらしい。みんなに最恐さいきょうの魔術師って呼ばれてるみたいで……」

「その人に、頼むってわけ?」

「まあ、そういうこと」

「でもどうだろうね。さすがにそんな人でも怪物は許さないんじゃないかな……?」

「その時はその時だよ」

「なんか……危険なこと企んでる? もしかして」

「うーん……」

「私がこんなこと言うのもあれだけど、危険なことしようとしてるなら止めてほしいな……」

「大丈夫。俺がやりたいからやってるだけだから」

「そっか……でも、気を付けてね」

「ああ……うん」


 そこで俺たちの会話は終わった。


 ◇◇◇


 なんで優愛をあの時倒さなかったかと今更考えることがある。

 多分だけど、俺には優愛が必要だった。あの時優愛がいなくなって、俺は心にぽっかり穴が開いたみたいだった。性格もだいぶ変わった。だからあの時倒さなかった。完全な私情だ。


 ◇◇◇


「それで俺のとこに?」

「そういうことです」


 俺は数週間経ったころ、俺はその最恐の魔術師に会いに行った。

 その最恐の魔術師の名は『朝吹あさぶき悠莉ゆうり』。怪物・魔術師の始祖、朝吹家の子孫だ。


「それは俺がどうこうできる話じゃない。俺がやってるのは怪物を取り込んだ人間に関することだけ。人間と怪物、いや、魔術師と怪物の関係に関しては何もできないと思う」

「そう……ですよね……」

「でも、理由はよく分かった。俺もできることはするし、上層部が完全な証拠を得るまでは黙っておく。でも、証拠は案外早くつかんでくるかもしれないから、気を付けろよ」

「はい。ありがとうございます」

「最終的にどうにかするのは君だから」

「はい」

「彼女の事守れよ。恋するって、特別なことだから」

「え……いや……そういうのじゃないですって!」


 まあ、これで、少しは協力が得られそうだった。


 この朝吹悠莉という少年は今、魔術学園東京校中等部1年な訳なんだが、四天王家のうち3つの家の当主と決闘で勝ち、もう一つの家の次期当主にも決闘では勝っているらしい。

 それに魔術師の中で最高のSランクを最年少の小学2年生で獲得したとも言われている。とにかくすごい魔術師だ。よく今回会ってくれたもんだと思った。

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