第2話 若葉海亜

 数日後、更新しなきゃいけない書類があったから魔術師の事務所的なところに行った。


「お願いします」

「お預かりします」


 今回出した書類は4年に1回の個人情報更新の書類だ。変わったとこが無くてもなんか出さないといけないらしい。



 申請が終わるまで待合スペースで待っていた。


 すると「久しぶりだな」と誰かが話しかけてきた。


 話しかけてきたのは同い年で姉妹校に通っていた若葉わかば海亜かいあだった。確か今はその学校の校長とかやってたはず……


「久しぶり……だな」

「元気にしてたか?」

「ああ。海亜は?」

「まあまあってとこかな。校長も大変だよ」

「そうだな……」


 極度の人手不足のため、最近は若い人が校長をやることが多くなっていた。



「なんかさ、」


 海亜が急に話し始めた。


「ん?」

「怪物いない?」

「え? そうか?」

「なんか、怪物の魔力が……」

「気のせいだよ」


 やばい……バレたかも……優愛の魔力が海亜にバレたのか……?


 魔力は少しの間、その人にくっついている。それは少し経てば消えるが、何を隠そう俺は怪物と同居中なのだ。くっつく魔力が消えることはない。


「お前、仕事から直で来た?」

「いや」

「お前さ、もしかして……」


 海亜に勘づかれてしまった。俺は反射的に「違うよ」と言ってしまった。まだ何とも言ってないのに。これじゃ、何か隠してることがバレバレじゃないか。


「いや、そうだろ」

「違うって」


 海亜と言い合いになってしまった。


『玖珂さん、受付にお越しください』


 その時ちょうどよく申請が終わったみたいで呼び出された。逃げる口実が出来て良かった。


 俺はその場を立ち去った。


「あ、玖珂です」

「あ、はい。申請された書類、受領しましたので」

「あ、ありがとうございます」



 そして家に帰った。



「お帰り、湊」


 優愛は俺の家に居座ってる訳だが、なぜか家事とかもやってくれてる。霊型の怪物は実体を持ち、なんか色々家事とかもできるということがわかった。優愛が特別なだけかも知れないが。


「ああ……ただいま」

「……どうかしたの?」

「いや……」

「絶対なんかあったでしょ」

「いや……その……」

「私のこと?」

「う……うん……」


 優愛はあの時と変わってない。俺の考えはお見通しみたいだ。


「あのー、海亜に……バレたかも……」

「ええ……」

「可能性……だけどね」

「そうなんだ……そういえば海亜って今なにしてんの?」

「大阪校の校長」

「ええ……あいつが?」

「うん」


 俺も最初はそう思った。


「そっか……で、これからどうすんの?」

「これからって?」

「いや……バレちゃったら、終わりなわけじゃん?」

「うん……」

「逃げた方がいいのかなって」


 優愛がそれ言うか?


「今は大丈夫。魔術師はあの時よりも人手が足りてない。まだ確実な証拠も無いのに殺したりはしないよ」

「そっか……」

「でも、一応考えとく」

「わかった」

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